なにを、そんな古典的な問題に答えようとしているんだ、と思われるかもしれないが、フランスのバカロレアっていう哲学の試験問題があって、まあ、こんな問題がそこで出されても不思議はないな、と考えていたら、少し、これについて答えてみたくなった。
Q:アキレスと亀の矛盾を説明せよ。
A:
まず、
命題「N番目のフェーズ」:
(N回目において)亀の位置にアキレスがたどりついた時、亀は最初にいた位置より前に進んでいる。
と定義しよう。そして、その後に続く、
命題「N番目の判断」:
(N回目において)亀はアキレスの少し先に行っている。
と定義する。アキレスと亀の矛盾は、
命題「アキレスと亀のパラドックス」:
N番目において、「フェーズ&判断」が成り立つ。よって、いつまでたっても、アキレスは亀に追い付けない。
とあらわせられる。
しかし、この「無限」のフェーズが有限時間内で終わらないと考えることは、自明でないだけでなく、間違っている。
つまり、どういうことか?
上記における、命題「N番目の判断」を、
- 人間の行為
と考えれば、人間は一つの判断行為を、一定以上の有限時間を費さずに行えないのだから、「終わらない」ということになるわけだが、上記はそういったものとと考えなければならないものではない。
ようするに、命題「N番目の判断」は、
- メタの主張
なのだ!
つまり、例えば、上記のアキレスと亀のパラドックスは、以下のように記述することもできる:
- N番目において、命題「フェーズ」が成り立つ。
- しかし、命題「フェーズ」は、可算無限個の命題で記述されるわけだが、
- それぞれの命題「フェーズ」の「全て」がかかった時間の「和」が「有限時間」であることは普通に起きる(これは、アキレスと亀の走る速度に依存はしているが)。
- ところで、任意のNに対して、命題「判断」が成り立つ。また、この命題「修正版・全称化された判断」の判断は、言うまでもなく、(これ一個だけ判断すればいいので)有限時間で終わる。
ようするに、アキレスと亀の問題は、議論が
- 命題「N番目のフェーズ」の可算和の有限時間性
の問題から、
- 命題「N番目の判断」の可算和の無限時間性
に論旨が途中ですり変えられていることに気付けるのか、の問題だと言えるだろう...。