前回、アニメ「女子高生の無駄づかい」について言及して、いたく感心したので、とりあえず、原作を読んでみた。
まあ、少し印象は違ったが、概ね、ストーリーは一緒と言っていいだろう。
まあ、そういうことなんだろうし、実際そうなんだろうとして、この作品は結局、何が言いたいのだろう、なんて、いつもの癖で考えてしまうわけである。
オタク:...あのさー。さっきから黙って聞いてりゃ、急に告白されんのばっかで全部受け身じゃん。ちょっとは努力とかする気ねーの?
バカ:は? あるわけないだろっ!!
オタク:(なんか怒られた)
バカ:...だって、だって、...うちは。一切努力せずに、ありのままのうちを好きになってもらいたいから。
オタク:(横顔を見ながらニッコリ)
(ピーノ『女子高生の無駄づかい3』)
女子高生の無駄づかい(3) (角川コミックス・エース)
こういった作品を「ギャグ漫画」と言うことの裏には、「常識漫画」というか、世の中には常識というものがあって、そこから外れているものは、問答無用で非難していい、っていうコンセンサスがあると考えられているのだと思う。だから、こういった作品が登場したとき、それを
- ギャク漫画(=馬鹿ばっかりやっている漫画)
といったように解釈するのであって、つまりそこにはすでに最初から、解釈であり、偏見でありが内包されている、と考えられるわけである。
まず考えるべきは、「なぜこれでは問題だと考えるのか」を素朴に問うことなのではないか。むしろ、そこには、本来はあるべき、本当の真実があるのではないか。
例えば、第5巻では、田中が留年するかもしれない、という場面が描かれる。
バカ:さ...さすがに無理だわ...。全教科40点以上とか...。20点とれりゃ、調子いいくらいのうちが...。まじで、うちだけ留年するかも。
オタクとロボ:(じっとバカを見つめる)
バカ:...学年変わっても、たまに昼ごはん一緒に食べてください...パイセン
オタク:...はぁ? (がしっと、バカの髪の毛をひっぱって、顔を上げさせる)いつまで、寝ぼけてるつもりだ、お前は?? いいか? 試験までの、木・金・土・日の5日間は一睡もすんな。(目をひんむいて、バカの顔をのぞきこむ)
バカ:ヒィイイイ
オタク:それくらいの気合で、やるんだよ勉強...っ(ゴゴゴゴ)
バカ:............はい。
(ピーノ『女子高生の無駄づかい5』)
女子高生の無駄づかい (5) (角川コミックス・エース)
そもそも東大に入った人は偉いのだろうか? 東大に入ることとは、最初から「個人的なこと」であり、他人がどうこう言うことではない。つまり、そんな個人的なことに何かの善し悪しがあるわけがないのだ。勝手に入りたきゃ入ればいいし、それ以上でもそれ以下でもない。
そういった勉強ができる人なんかよりも、ずっとずっと「素晴しい」ことがある。それは、自分がいた高校のクラスの全員が、一人も留年することなく、進学できること。または、それを実現するために、劣等生を教えることができる人だ。
つまり、東大なんかに入るより、ずっとそっちの方が人生において重要であり、意味のあることなのだ。そもそも、優等生には劣等生を
- 教える
力がない。なぜなら、優等生は自分が勉強ができるようになることにしか興味がないからだ。もっと言えば、他人が劣等生のままでいてくれれば、自分が東大に受かるのだから、できるだけ他人に勉強を教えたくない、というモチベーションが働く。
つまりは、こんな連中に、劣等生の留年を防げる能力はないのだw
まあ、その程度の連中なんだよねw
ではなぜ、オタクはバカを、あそこまで励ませられるのか。それは、彼らが今までずっと、つるんできたからだ。一緒にいることが当たり前だったし、そういった
- 日常
を決して壊したくなかったからだ。
こういったように、私たちの日常には、それを単純な言葉であらわすことの難しいような、とても特殊だけど、大事ななにか、ってあるんだと思っている。
ところで、掲題の曲であるが、まあ、アニメ「八月のライオン」のオープニング曲だったわけで、最新のアルバムにも収録されているが、少し似たような印象を受けたわけである。
心臓が動いている事の 吸って吐いてが続く事の
心がずっと熱い事の 確かな理由を
雲の向こうの銀河のように どっかで失くした切符のように
生まれる前の歴史のように 君が持っているから
それだけ わかっている
僕だけ わかっている
(BUMP OF CHICKEN「アンサー」)
この曲はラブソングだ。しかし、彼ら独特の、上記のような「愛」の表現には、どこか、オタクとバカとロボの、いっつも、つるんでいる関係のようなものを感じる。それは、うまく他の人には伝わらないようなことだけれど、彼らには分かっていて、なにか、はっきりとそこにあって、決して、おろそかにはできないような関係のことを言っているのであって、世の中の多くの恋人たちが、その長く続くその関係の中に見出している何かでもあったりするのだろう...。
- アーティスト: BUMP OF CHICKEN
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