感染症のパラドックス

今の日本の新型コロナに関する、最大の問題は、本来なら入院が必要な患者が病院が満室のために自宅待機をしている間に容態が急変して亡くなるケースが分かっているだけでも、50件近く起きていることであろう。
これがなぜ問題なのかといえば、ようするに、医療については医者に任せてください。大丈夫です、と戦後の日本は言い続けてきたわけであろう。そして、その医療関係者は、医学部の受験に始まり

  • 国家資格

として、国家が「認可制」によってコントロールしてきた。つまり、他の業界の人は「参入できない」という形で、排除してきた。しかし、ここにきて

  • 自分たちではできないです

と言うなら、もはや、国も医療関係者も、この「囲い込み」の正当性を主張できない、という所にまで追いつめられた、ということを意味する。
医者は、国民を救えない。だったら、誰なら救えるのか、ということになる。つまり、「市場参入」が今後、活発化していく、ということが予想される。
国は「普通の人は医療行為をしてはいけません」として、一般国民が医療に関わることを禁止してきた。しかし、一方で禁止しておいて、医者が病人を放置することによって、多くの死者が出るなら、もはや、その禁止に従っていたら

  • 国民が殺される

という事態になってしまった。つまり、今、この事態において、誰も政府の言うことも聞かないし、医療関係者の言うことも聞かない。国民は、自分たちで自分たちのことは守らなければならない、という事態に至っている、ということに気付き始めている。
なぜ、こんなことになってしまったのだろう?
もしも、この世に感染症の流行なるものがなかったなら、当たり前だけれど、日本の医療システムはそのための対策をやる必要はないだろう。ところが、感染症の流行が「存在する」ことは分かっている。それは、過去の実際に何度も実例があるからだ。
だとすると、だ。
当たり前だけれど、日本の医療システムが、その流行を「想定」していない、というのは

  • おかしい

と誰でも思うのではないか?
感染症は急激に患者が増えて、急激に患者が減って、ほとんどの場合、そういった対策は必要のない「平時」に戻る。では、こういった一瞬で必要になり、一瞬でいらなくなるような設備や人材への「備え」はどのようにしたら可能なのか? まあ、普通に考えたら

  • プレハブ病院
  • 医療関係者の相互の時限付きの配置転換

が必要だろう。こうすることで、その感染症の流行に「合わせた」、一瞬で重症用ベットの数を拡大させ、医療関係者をその体制に合わせて配置し直す、という

  • 急な「変化」に対応できる

体制が可能となるだろう。
こう考えてみよう。もしも、今、日本にいる全てのお医者さんと、保育士が、

  • 公務員

だったら、どうなったか、と。当然、この新型コロナという

  • 緊急事態

に、全ての医療関係者の

  • 配置転換

が行われるであろう。あなたは、新型コロナの患者を見てください。あなたは、国が緊急に作成した、千床をもった、プレハブ型の病院の医者として、「出張」してください。別の医者は、そこで働かなくてもいいので(専門でもないでしょうから)、代わりに後方支援をしてください。
もちろん、それぞれの医者の「身分」は保証される。新型コロナの流行が終われば、次の仕事場所が斡旋されるし、極端に収入が減ることもないだろう。
ところが、である。
こと、今の日本において、そういった「公的機関」に務めている医療関係者は全体の二割しかいない。あとは、みんな

  • 民間企業

だ、ということになる。しかも、ほぼ全てが、中小企業どころか、フリーランスで独立していて、まったくの、「指示」する、されるの関係にない、ということにあるわけだ。
それぞれの病院関係者は、まさに、自らの目の前の

  • 経営

のことで頭がいっぱいで、なんとか、赤字を出さないで、今年の決算を乗り切ることしか考えていない。そこに現れた新型コロナは、もしも患者を一人でも受け入れたら、感染防止からなにから、ものすごい「リスク」を背負うことになるわけで、経営が採算がとれるかの計算ができない。よって、誰も新型コロナの患者の診療をやろうとしない、ということが起きている。
そもそも民間なんだから、なにをやるのにも、

  • 民間の「自由」

だ、という建前がある。国家も、民間に指図ができない。なにをやるのかを、国家が民間に命令できない、ということになっている。
こうして、今の

が続発する、という「悲劇」が、連日、ワイドショーでとりあげられて、お茶の間を恐怖のどん底に落としている。
もしも、新型コロナにかかって、重症になっても、どこの病院も受け入れないことを決めているから、まず、入院できないと腹に決めるしかない。そして、容態は

  • 突然

に急変して、ついさっきまで元気だった人が、何十分もたたない間に、お亡くなりになる。そしてこれが、あと「何人」連続したら、政府は、重い腰を上げて、この難題に取り組み始めるのだろうか?
こんなことが起きているのは、医療関係者が「民間人」だから、ということにもしも、国民が気付いたら、だったら、全員を強制的に

  • 公務員

にできないだろうかと、国民は考え始めるのではないか?
ところが、である。実際に、そうなっている国は、世界には多いわけである。その代表が、ヨーロッパのほとんどの国々だ(こういった国々では、全体の八割が公務員となっている)。
おそらく、そういった国々は過去の

  • 戦争

の体験が残っているのだろう。今は戦争なんだから、国民はこの新型コロナと戦うために「徴兵」が行われる。その先頭になって、戦うことが求められるのが、医療関係者だ。よって、国内の医者は、基本的には、公立の病院で、しかも、大型の病院で、多くの医者がいる中で働くようになる、というのは、当然の姿だったのだろう。
もしも日本において、この問題が直らないとなると、これからもどんどんと、次々と

  • 自宅待機中の「急死」

が連続することになる。この「悲劇」を、なんとしてでも止めなければならない、と、なぜ国民は考えないのだろうか? 考えて、そのための行動を始めないのだろうか?
国民の怒りが頂点に達したとき、まず国民が行うのが、こういった医療関係者の「徴兵制」だろう。有無を言わさず、強制的に、これらの医療関係者を、新型コロナの仕事に従事させる。その場合の、仕事は国が斡旋する。そこで、国が、全体の状況分析をした上で、適切な割合で、人の配置を行うわけである。
言うまでもないが、もちろん、そんなことは今の日本で起きていない。しかし、それはもはや時間の問題なのかもしれない。なぜなら、あまりにも

  • 自宅待機中の「急死」

が増えたとき、本来なら入院してもらわなければならない症状の人が、病院が空いていないという理由で、自宅で待機させられたまま、急な症状の変異で死ぬ人が連発したなら、いずれ、国民の、堪忍袋の尾が切れる。
今行っている政府の対策は、今の日本の医療制度を「そのまま」にして、お金だけを出すことで、どこまで可能か、にチャレンジする、というものだ。

支援の対象となるのは、ICU内を仕切るベニヤ板やビニールなどでできた簡易な壁、空気の流れを制御して感染を防ぐ陰圧装置などだ。都道府県を通じて医療機関に支給する「緊急包括支援交付金」を活用する。
このほか、新型コロナの患者向けのプレハブ病棟を病院敷地内に設置した場合の建設費や、病室の備品を整備するための費用も交付金で全額補助する。
コロナ増床へICU内を区画分け、国が全額負担…プレハブ病棟新設も支援 : 医療・健康 : 読売新聞オンライン

ようするに、「付け焼刃」なもので、その場限りを、どうやったら乗り越えられるか、という発想で見つけてきたアイデアだ、と言えるだろう。
なぜ政府がそういう態度を今だに続けているのかといえば、それは欧米の感染者と日本の感染者とでは「桁が違う」から、ということになるだろう。この程度の流行に、そこまでの対策は、今後考えられるウイルスの流行を考えたら、抑制的でなければ、大変なことになる、と。しかし、指数関数的と言われているように、今見られている「桁の違い」は、そういった爆発が起きた後では、

  • 一瞬

で追い付く、ということは数学的には自明なわけだ。
しかし、多くの国民が疑問に思っているのは、そういうことでないわけです。
なぜ、日本の新型コロナに対する対策は、ここまで、これほどグダグダで、場あたり的なのか? それは、

  • どうせ、たいしたことのない感染拡大で終わる

と、専門家も含めて、有識者たちがなめているからだ。だから、予想される、最悪に近い対策をしない。しかも、そういった「なにもしない」と言う専門家や役人は

  • 国民の人気がある

わけである。なにもやらなければ、国民は損をすることがないわけだから、国民の「希望」を、まるで叶えてくれる人のように、国民的な「人気」を獲得するわけである。
今回の新型コロナにしても、変異種というのがさかんに言われているように、いずれ、今より感染力も毒性も強い変異が現れるかもしれない。もっと言えば、新型コロナより怖い、別の、ウイルスの流行が始まるかもしれない。
もしも、そうなったら何が起きるか、と考えてみたらいい。この程度の流行で、「医療崩壊」が起きているのだから、そうなったら、死人の山である。日本人の何割が亡くなる、なんていうレベルの事態が起きかねない。
このことを本気で考えてみてほしい。
このことを十分に考えてみれば、何が必要なのかは、おのずから明らかなわけであろう。そうである。あるウイルスによる感染の

  • 急激な拡大

が起きたとき、日本の医療設備は、その拡大に

  • 対応

して、医療体制を「急拡大」をしなければなならない。すぐに作って、半年もしないうちに、

  • すぐに壊す

ことを前提とした、病院。つまり、「プレハブ病院」を、その想定される規模に対応して、

  • 一瞬

で作れるように「準備」を国はしていなければならない。
そして、そのプレハブ病院に、その道の一級の専門家を、国家が号令一つで「招集」できなければならない。そして、そのプレハブ病院の解体と共に、それらの医者を、

  • 一瞬

で、元いた職場に戻さなければならない。
つまり、「この体制=システム」が、この日本に確立されるまで、日本人の誰も、日本を信じないだろう...。
(そういえば、世論調査では、自民党の支持率が急激に下がっているのに対して、立憲民主党の支持率が、結党以来の急激な上昇をしている。それは言うまでもなく、立憲民主党が「ゼロコロナ戦略」を掲げているからで、オリパラの行方と共に、今年に行われる国政選挙における、

が、どこまで国民の「怒り」を自民党が愚弄し続けるのかに関わってくるのであろう...。)