奇妙な戦争

国連の人権委員会でロシアの退会が多数決で決定されたが、賛成票は90ちょっとで、前回の非難決議のときの140票と比べると、ずいぶんと熱が冷めてきている。
では、この90カ国がどういう国かと見てみると、欧米で、白人の国で、カトリックの国。ようするに、ユーラシア大陸で、ヨーロッパで、白人の居住地域で、こういった「軍事侵攻」が起きたのが

  • めずらしい

から、彼らの「同族意識」が、ここまでの激しい対応を生んでいる、と解釈できる。
じゃあ、その他の国、アジアやアフリカの「ほとんど」の国(人口で言うと、世界の九割になるそうだ)がなぜ賛成せずに棄権や反対だったかというと、もちろん、インドのように、エネルギーと武器のほとんどをロシアに依存しているゆえに、そもそもありえない、という国もいるが、おそらく、多くはそうじゃなく、

  • そういった「紛争国」は世界中にいくらでもある

のに、なぜそっちについては、冷淡で、ウクライナだけ、こんなに特別扱いをするんだ、という反応なんだと思う。アジアや中東やアフリカにも同じように、自国が戦場になってしまって、大量の難民となっている国はあるが、そっちはほっといて、ウクライナの人は全員受け入れるって、なんなんだ、と思っているわけだろう。
そう考えてくると、今回のウクライナ戦争は「奇妙な戦争」と言うしかない性格をもっていると思っている。
その一つが天然ガスで、この戦争の間も、ヨーロッパにはロシアの天然ガスがパイプラインを通って運ばれている。
しかも、変なことに、そのパイプラインは、ウクライナを通って、ヨーロッパに運ばれている。
さらに、そのウクライナは、確かに直接はウクライナは、ロシアからガスを買っていない。しかし、使っているガスはロシア産だw つまり、自分たちの国土を通ってロシアからヨーロッパに運ばれたガスを、その運ばれた先の国から買って、また、ウクライナの国土にパイプラインで運んでいる。

  • 今ですら

結果としてであれ、ロシアの「安い」天然ガスに自国のエネルギーを依存しておいて、

  • 親欧米政権

として、ロシアと距離をとろうとしているって、何を言っているんだろう、と思わないか?
なんか、変なわけである。
ウクライナという国は、本当に政権中枢が機能しているんだろうか? 政権中枢は本当に、主権国家として、合理的な思考ができるような状態にあるのだろうか? 私には、とてもそう思えない。殆ど、毎日、戦前の日本政府が、常に、帝国日本軍や民間の極右勢力による、「武力による恫喝」にさらされて、実質的に何も自分たちで政治的決断ができなかった状態と似ていて、ウクライナも、政権が、ウクライナ内部の、極右勢力によって、政権のかなり中枢まで侵食されていて、もはや、彼らの「要望」を全て受け入れることなく、なんの決断もできなくなっているんじゃないか、と思っている。
もしも、ロシアと距離をとって、ウクライナという国を発展させていきたいと考えるなら、まず、基本的な自国の基盤を、ロシアの

  • サービス

に頼るのをやめてから言ってくれ、と思うわけでしょう。他方で、ロシアに「安価なエネルギー資源を依存して」いながら、他方で、「ロシアから独立して」親欧米政権になるって言っても、お前は結局のところ

  • ロシアに甘えている

んじゃないか、と言われても、しょうがないんじゃないか、と言いたくなる。
あのさ。
なんで、ロシアがここまで介入するのかといえば、ウクライナが「隣国」だからだよね。そこから、ロシアには、さまざまにウクライナに介入する理由がある。つまり、どちらにしろ、隣国とは常に緊張関係を強いられるわけで、膨大な福祉を提供しようという動機は十分に考えられる。
もともと、ソ連時代は言うまでもなく、ウクライナソ連の一部だった。そこでは、当然、ウクライナの人は、ソ連からのさまざなな「サービス」を享受していた。よく、ウクライナ人が大量に死んだ、ソ連時代のことが、「虐殺゙」として話題になるが、それだって、ソ連時代の「計画経済の失敗」の結果なわけで、大量に死んだから、ロシア人は「残虐」みたいな主張は、著しくウクライナ側の、都合のいい解釈なんじゃないか、と思うわけである。
もしも、ウクライナが親欧米派になりたいなら、本気でロシアからのさまざまな「サービス」を受けいれるのを拒否しないと始まらない。つまり、そういうものがなくても生き延びていけるような、国家基盤を構築しなければならない。
しかし、である。
どうも、彼らの国家観は甘いわけである。ソ連時代まで、ウクライナは当たり前のように、ソ連からの、さまざまな福祉や物資の支援を受けてきた。つまり、そういうものがあったから、当時のウクライナの人は、深く考えなくても、安穏と生き延びられた側面があったわけだ。
しかし、本気でロシアと喧嘩をするなら、基本的に、ロシアは今後、なにも助けてくれない、と考えなければならない。当然、天然ガスのパイプライナが、ウクライナ国内を通ることも拒否しなけれならない。この戦争が始まるまで、ウクライナはロシアから、国内をパイプラインが通ることによる、「通行料」をもらっていた。つまり、

  • お金をもらっていた

わけだが、当たり前だが、こんなお金も入ってこなくなる。
じゃあ、なんで、ロシアはウクライナに、おこお金をあげていたのかといえば、ロシアにとっては、ウクライナをロシア側にしておく、または、緩衝国としておくことには、もっとずっと大きな国益があったから、なわけでしょ。
だから、すっごく良くしてくれた。いっくらでもお金をくれたし、天然ガスもほとんど、ただ同然でくれてた。
しかし、こうやって、ロシアと「対立」して生きると選択したんだから、もう、ウクライナはそういった「サービス」を受けることできない、ということを決断しなければならないわけだが、どうも、なにも考えていないように見える。
じゃあ、なぜアメリカはウクライナを支援しているのかというと、単純に「ウクライナがロシアの隣の国だから」くらいしかない。今は、アフガンに代わる、アメリカにとっての軍需産業への、おこずかいをあげるための紛争地として使おうとしているけど、基本的にアメリカからは、ウクライナってずっと遠い国だから、本質的に興味がないんだよね。
これは、ロシアのプーチンがよく言う「緩衝国」の問題で考えると分かりやすいかも。ウクライナも日本も同じように、ロシアの隣の国なんだけど、アメリカにとって、ウクライナは「緩衝国」ではないんだよね。対して、日本はアメリカにとっての緩衝国になっている。この辺りが、アメリカにとっての、地政学的な価値観の差異となっているのかもしれない。
だから、どんなにウクライナアメリカに好意をよせて、なびいても、長期的には、アメリカからの

  • ロシア並みの援助

は期待できない。アメリカにとって、ウクライナは、世界中に多くある国の中の一つにすぎないから。
しかし、それでも、どんなに「苦しく」なってでも、この道を選ぶ、となれば、いずれは、国の治安も安定して、世界中の企業がウクライナに進出してくるかもしれない。しかし、他方で「ロシアからの安価なサービスが受けられるのは当たり前」みたいな、今まで通りの甘えた考えがあるなら、常に国内の政治は、親ロシア政権と親欧米政権が代わりばんこに登場する国となってしまい、必然的に

  • まったく国情が安定しない(国の治安が安定しない)

今のような政情にならざるをえないわけで、どっちにしろ茨の道なわけだ...。