サッカー理論と違うもの

W杯での、日本のドイツ戦の勝利は、なんというか、たんに一つの試合に勝ったという事実というよりも、それまでの

  • いきさつ

があって、この試合があるわけで、そういった形で「驚かされた」という印象が強いわけである。
それはもちろん、私個人がどうこうというよりも、多くのサッカーの専門家、ジャーナリストなどが、言っていたことで、それには当然、多くの批判があった。
そういった文脈の中で、最も多くの意見は「森保は監督失格なのではないか」というものだった。そして、その典型的な批判例は、

  • (特に攻撃の)戦術を選手たちで決めている

と噂されているところにあった。その含意は過去の文脈があって、前回大会で急遽、監督交代した西野が「自分は海外の経験もないし、選手たちの方が戦術に詳しい」ということで、選手に戦術を任せた、という「いきさつ」がある。
この経緯については、確かに、一ヶ月前に監督にされて、しょうがなかったのか、といった印象はあるわけだが、コーチとして帯同して、そのまま次の監督になった森保さんは、なんと、その西野さんを継承して、選手に戦術を任せて、自分はマネージメントのような立場として監督をする、といった形でやっていると解釈されてきたわけだ。
そして、実際に予選を含めて、今までの彼の監督としてのパフォーマンスはそれを裏付けるようなものとして理解できるもので、ようするに「戦術がない」に尽きていたわけである。
じゃあ、今回の「これ」はなんなのか、ということになるだろう。
まず、後半のこの交代を「戦術がない」と言う人はいないだろう。そして、これを監督の指示じゃないと思う人もいるはずがない。
ということは、どういうことなのか?
早い話が、

  • 馬鹿の皮をかぶっていた

ということに尽きるわけであるw 日本はそれくらいの実力があった。予選から、ずっと馬鹿の真似をしていても、ここまで来れる。それなら、それを貫き通して、相手に警戒されないようにしよう、とw
なんなのこれw
あのさ。
インターネット、特に、ユーチューブを見ると、いろいろな人が、サッカーの戦術を分析するライブ配信をやっているけど、みんながびっくりしている。その中の一人として、以下の、GOATさんの番組は、けっこう、いい品質の番組をいつも作っている。

m.youtube.com

この日本戦でのライブ配信でも言っているけど、これさ。もう、

  • (現代サッカー理論から導き出される)戦術

を超えた何かをやっているんだよねw
私はこれを見ていて、今年話題になったアニメで「パリピ孔明」を思い出したわけ。つまりさ。森保さんがやったことは、

だよ。孫子の兵法レベルの、なんか「人間の本質」レベルで組み立てられる(兵法)戦術。相手をあざむき、あざむき続け、最後の最後で奥の手を出す、みたいな。
前半、さ。なんで、後半の最初でやったみたいに、前半の途中で3バックにしないのか? それなりに日本も守備的な選手を入れているから、最小失点で抑えられる可能性が高いと考えたからだよね。そして、相手にフルボコッコで打たせることで「たしたことない」と警戒を緩めさせることに成功している。
後半は、もはや異次元のマジックだよ。最初、富安に久保を代えて、どう考えても、前半が悪かったんで、守備的に後半は戦うというメッセージに相手は受け取るよね。よって、そう来るなら、こっちはどんどん攻めよう、となる。まあ、なめてるからね。
ところが、こっから、投入した4人は全員、いわば、FWだよ(つまり、攻撃を評価されて代表に選ばれた選手)。守備の選手をベンチに下げて、FW入れているわけ。こういうの、背水の陣って言うよね。そして、一点目は、その超パワープレーで点をとりきった。
(なんでこんなことができたのかの理由は、今大会で5人代えられるようにルールが変わった、というのがある。このルール変更をうまく使ったわけだ。)
(まあ、日本にとってみれば、引き分けでいいんだから、このまま終わればいいんだけど、その後の浅野の2点目はラッキーポイント。)
でも、いずれにしろ、後どうやって守るのかになるけど、5−4ブロックで終わらせた。
(この5−4がいかに頑丈な守りであるかも、上記の引用の配信で詳しくレクチャーしてくれている。)
つまり、前半に守備のうまい選手が苦労しながらなんとか一点に抑えたという意味は、そういった4−2−3−1の戦術では、ドイツから点をとられないためには、守備陣が専門職で、技術のある人をそろえる必要があった。しかし、5−4ブロックは、そもそも、一番得点が入りにくい戦術だから、そこにFWがいっぱいいても、入りにくいことは入りにくい。
(ちなみに、上記の配信者のGOATさんも、以前に両WBまでをFW的な選手にしてしまうような、こういった超攻撃的な戦術を考えたことはある、とは放送で言ってましたね。ただ、それを実際にW杯の本番でやるというのは、ファンタジーに近い、わけで「まさか」と。)
なんていうかな。もう一生で、二度と使えないような「戦術」なのかもしれませんね...。