後藤和智「さらば宮台真司」

著者は、宮台真司の議論、特にその、若者論、いわゆる、なんの根拠も示さず主張される、若者の「脱社会化」という、彼のプロパガンダを、批判する。最近、右傾化したという人がいるが、そういったことは、昔からの、この延長上のことでしかないと。
私も、比較的、上記の主張に賛成である。
宮台真司の多くの発言の中で、幾つか印象的なものがある。
マックス・ウェーバー以来の、近代国家学の起源が、マキャベリの、あたかも国家がまわっているかのように、国民にみえるように、裏では、非合法なことをやってでもそれを実現すること、であると。なんだったか、それが、近代政治学の常識なんだとか。しかし、これまた保守的ですな。いわば、国家はなんでもありだと。非合法、国策捜査、好きなだけやるのが、国家なんだと(どうでもいいけど、この人、自分の専門分野の「常識」だっていうんなら、それこそ「証明」しろよ。まず、そういう主張がされている文献の個所を添付しろ)。
この人の天皇制擁護ぶりは有名だ。師匠の小室直樹でしたっけ(大澤真幸に、なんの特徴のない小室なんていう俗物を、宮台が師匠呼ばわりしているのが、理解できないというようなことを言っていたと思うが)、このウルトラ右翼が、天皇制こそ素晴しい、ですからね。
こうやって見ると、宮台は、ヘーゲルに似てますね。首都の国立大学で教授やってるし。無難なところでは、徹底してリベラル空気をかましているが、本質的なところでは、国家を否定することは絶対に言わない(そうじゃないと、自分の学校での地位が危い)。
私から言わせれば、たんに彼こそ、「国家主義者」ってだけなんですけどね。いろいろリベラルなことも言うけど、それも国家が受容できるくらいのレベルだからですよね。
宮台が、昔、左翼はデモばかりやってるが、私は国家官僚とのつながりを大事にして、むしろ内部から、影響を与えていく、というとを言っていたが(逆に、こういうことをやらない、左翼はヘタレだというわけだ)、でもこれって、自分は相手のご機嫌を損ねるようなことは決っして言わない、ってことでしょう。おべっかを使うんだ、と。彼は、国家主義者、なによりも日本にとってエリートが必要で重要、でしょ。そりゃ、本音レベルで、話が合うんですから、そりゃ楽しいでしょうね。
国家は奥深い。国家は素晴しい。国家は必要だ。そして、日本においては、正統性からも、天皇制は絶対止めてはならない。日本がこれほど、うまく「うまく」いっている理由は、天皇制があるからだ。
天皇制という伝統は奥深い。今まで天皇制が続いてきて、うまくいってきて(?)、もし急に止めるというのは、科学的に、リスクがある(バーグ)。だったら、さっさと政教分離なんてやめたら?
最近、印象的だったのが、小林よしのりとの対談で、

マル激トーク・オン・ディマンド第326回(2007年06月29日)
5金スペシャル 右翼も左翼も束になってかかってこい
ゲスト:小林よしのり氏(漫画家)、萱野稔人氏(津田塾大学准教授)
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コソボ紛争だったかな、ハーバーマスが軍事介入を支持していて、日本の左翼が、日本が軍隊による介入に反対しているのを見たときに、決定的に日本の左翼はダメだと思った、と。
左翼は、国家をなくせばいいとか言ってるけど、お前ら、他の国の軍隊が日本を攻めてきて、自分の奥さん、恋人をどうやって守るんだよ、みたいに脅してましたね。
そりゃ、あんたの理論では、軍隊(戦争)では人を殺して「いい(善い)」らしいからな(国家主義者らしいや)。
具体的に、だれが、殺しに来るんだよ。そもそも、女たちがどうなるなんてことは、その女自身が考えることじゃないか。なんで勝手に分かったようにお前がどうするなんて決めるんだ(フェミニズム歴史学の最初は、女が男の財産であった歴史そのものですからね。自分の女がどうなる、は、自分の財産を侵害される、くらいに思ってるんじゃないですかね)。