山崎養世『次のグローバル・バブルが始まった』

毎回、山崎さんの本は、勉強させられるが、今回も、読みごたえがあった。
今、日本では、アメリカのサブプライムローン不況によって、世界同時不況が起きるのではないかという噂がありますが、それを一蹴する。もちろん、そう簡単に回復することはないでしょうが、これは、昔からある、周期的な現象です。わるくなるところがあれば、よくなるところがあるわけです。
ブラジル、インド、ロシア、中国。BRICs、の台頭ですね。
実は、ここ10年くらいで、まったく世界は変わっていたのです。例えば、少し前まで、アジアは何度も襲われた、金融恐慌に悩まされてきました。
その、驚くべき変化の主人公の筆頭は、中国です。中国は、国有企業の不良債権に悩まされていると思っていたら、劇的な復活をはたします。その鍵は、アメリカ企業でした。中国は、アメリカの資金だけでなく、多くの経営者を受け入れました。これらの経営者たちが、中国内の多くのリソースを利用して、成長してきたわけです。日本が、外圧と言って、海外の企業の経営への介入に徹底して排除・抗戦していた間、中国では、なりふりかまわない、経営の介入を許していたわけです。中国にとって、なによりも必要だったのは、国内の経済の活性化なのですから、もうかれば、なんでもよかったのです。
そして、決定的なターニングポイントとなるのは、2006年です。この年はこれから、いろいろな場面でふりかえられるようになるのではないでしょうか。ここで、中国は為替レートを上げてきました。内需型経済への移行を完全ににらんでのものです。もちろん、そうなれば、外資系企業の中国を生産基地としての魅力は低下する。しかし、その上昇はコントロールされた、ゆっくりしたものだろう、といいます。おそらく、中国国内は、未曾有の景気になるのではないでしょうか。
もちろん、この流れに懸念をしめす傾向もでています。

その一つは中国国内の需要拡大によって、石油や鉄鉱石といった一次産品が世界的に需給が逼迫し、価格が上昇してきたことです。これは最大の石油消費国であり、石油輸入国でもあるアメリカの企業収益を圧迫し、アメリカ国内のインフレ要因ともなります。
仮にこのまま成長が進んで中国の12億人がアメリカ人並みの生活水準に達するとしたら、資源争奪戦は熾烈なものになることは明らかです。それがきっかけとなって軍事的緊張が起こる怖れもあります。
実際に「中国は新帝国主義者であって、世界中から地下資源を買い漁ってい」という批判は強くなってきています。
さらに中国の資源効率が極めて悪いこともあって、使用する資源が莫大なものになり始めています。

今、急激に、一次産品が、値上がりしていますね。ちょうどこのタイミングとリンクしているわけです。
どうも、世界経済、きなくさくなってきてますよね。
では、この流れは、日本にとって、どういうことを意味するのか。その予想は暗いものです。今までのものつくり大国は、アメリカがたどったように、小規模なものになるでしょう。一つ言えることは、金融大国への道を、イギリスに習い、進むことしかないだろう、ということでした。おそらく、ブロック経済的な、輸出入の規制を、さまざまなタイミングで各国がやってくるでしょう。日本にとっては、つらい状況になるでしょうね。
こういうトレンドの中で、世界的な問題はどうなっていくのか。

国民に競争に対するセーフティーネットを設け、最低限の生活を保障し、教育や医療の格差をなくしてゆく。それができるかどうかが問われています。
とても難しい課題です。中国やインドも苦闘しています。アメリカで黒人の血が半分入ったバラック・オバマが大統領候補としてブームを起こしたのにも、市場経済万能で進んできたアメリカでも、国民の間の格差を何とかし、もし一度政府が国民を守る役割を果たしてほしい、という民意が表われています。
日本は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた80年代までは、成長と国民のセーフティー・ネットを両立させた社会でしたが、いまはその両方が失われてきています。
そうしたことに成功している国は、イギリス以外は、ほとんどが小国です。それは小さい国の方が国内の経済格差の是正もやりやすいからです。
シンガポールフィンランドスウェーデンノルウェーデンマークアイルランドアイスランドルクセンブルグ、軒並み人口一千万人以下の小国です。
政府と国民の間が近いから、政府に再分配をやらせても信頼ができる。間に中間搾取が入りにくい。そういう国では国民が税金や保険料の形でより多くの資産を政府に預け、再分配を任せています。

日本の最近の地方分権は、こういったことを目指しているんだと思うんですがね。しかし、世界の今迄の歴史が教えることは、こういった国はたえず、周辺の大国からの侵略に悩まされてきたわけですね。そして、現在のトレンドは、EUのような、広域国家連合。おそらく、こうれまでの各国ごとの福祉もやりにくくなるでしょう。
あまり、明るい未来を描けないのが、残念ですが。まあ、戦争などの、政治的な衝突よりはましですから、先進国のアドバンテージをいかして、いろいろやるしかないんですけどね。かといって、貧富の拡大は、各国の世相を荒廃させるでしょうし、きなくさい動きも目立つようになるでしょう。あまり安心して見れるような雰囲気にも感じられないわけだ。

次のグローバル・バブルが始まった!

次のグローバル・バブルが始まった!