「原爆 63年目の真実」

テレ朝の特番。2部構成となっている。
第一部は、原爆投下3ヶ月後の長崎の爆心地をアメリカ軍のカメラマンのマクガバンが16分のフィルム撮影をしている。
そこに、ある少女がなにか物をもらってちらっと笑う場面がある(すぐに表情を戻すのだが)。たしかに目鼻立ちもしっかりした少女で映像写りも目立つ感じで、マクガバン自身も遺言でその少女が印象的だったと言っている。この悲惨な状況で、なぜこの少女は笑ったのか。彼女の所在を探すところから番組は始まる。実に、テレビ的ではないか。いつでも、テレビは映像美、というか、美しい女性ばかり興味をもち、流してますね。
彼女はご健在だったようで、今でも面影のある感じだった。その時は、何日も前から、ろくに食べてなくて、食べ物をもらえるという話を聞いて来てみたら、こうやってもらえたので、うれしかった、みたいに言ってましたね。
もともと、まともな食事がとれる状態じゃなかったし、こんな状態まで侵略戦争やってることが異常でしょう。
第二部は、原爆そのものの方に関心をもつ。
あまり知られていないが、日本もナチス・ドイツも、原爆開発をやっていたんですね。結果としては、アメリカの方が先に開発して、広島、長崎に落して、戦争は終わったのだが。しかし、どうだろう。ナチスはともかく、日本は、本当にどれだけやる気があったのだろうか。坂口安吾も、当時から、先に、原子爆弾を開発した方がこの戦争に勝つ、とだれでも言ってたし知っていたというんですね。だから、しらじらしいわけです。こんな子供にウランの採掘をさせて。アメリカがあれだけの最先端の科学者、資金をかけて、やってるのに。まったくやる気がないでしょう。
平泉澄の解説本を読んでたときも、日本軍がそれなりに最終兵器の開発にめどがついてきているから、ここまで戦争をひっぱったんだろうというな彼の考えを示唆する場面があるんですね。結局、日本軍指導部から、そんなものはまったくめどのたつところまでいっていない、という返事をもらってから、彼は終戦工作に動きはじめる。そう考えると、まったくばかばかしい。
また、原爆投下チームのエザリに注目する。エザリは、アメリカ軍の指示を無視して皇居に爆弾を落とした本人ですが(自分がこの戦争を終わらせると考えて)、戦後、ほぼ唯一人といえるくらい、広島、長崎への原爆を批判する。なぜ、彼が批判したのか。実は、彼も被爆者だから、なんですね。アメリカは、日本に原爆を落とす前に、何度も国内で実験を行っていて、モルモットのように、多くのアメリカ人が被爆させられていたわけです。エザリもその一人であって、戦後、日本の原爆の本を読んで、その後遺症が自分にあてはまることに気付くんですね。彼は、たとえ日本に落とすにしても、あのような市街地に落とすべきでなかったと言ってますね
大江さんをだすまでもなく、原子爆弾が、あまりにも象徴的なのは、日本のこの時以外に、人類は今まで、一度も経験していないんですね(実験は何度も行われましたが)。だから、実際は、この時に、人類史から、「戦争」という概念は失くなったのでしょう。もちろん、インドなど原爆を所有する国は多くなってきていて、緊張はさらにましているんでしょうが(原発も失くなる気配もありませんね)。