ETV特集「日系アメリカ人の日本」

日系人について考えることは、大変、刺激的なことである。この特集では、日系アメリカ人を追う。
日系アメリカ人は、真珠湾攻撃の後、強制収容所に入れられる。また、一部は、ヨーロッパ部隊に、日系人部隊として参戦した人もいるそうだ。
そして、戦後、彼らは、子供に、日本語を教えなかった。これが、日系人の大きな特徴となったのだろう。
戦後、日系人グループが、日本に招かれて、岸元首相に、日系人を日本の重要な役職として仕事をさせてもらいたい、ということを言ったことがあるそうだ。
すると、彼は、今まで、政治の重要な地位にいる人は、貴族や、元武士など、重要な役職についていた。日系人は、貧困層、経済的脱落者だったから、海外に移民をしたのだから、難しい、こういった趣旨のことを言ったそうだ。実に岸元首相らしい。
こういった、貴族主義者、日本のエリートが、戦争が終わるまで、日本の全てを支配していたのだ。こういう連中だけが、自分たちに都合のいいように、日本をどうこうしてきていた。
こういった岸元首相を、おじいちゃんとして、無謬の尊敬を捧げてるのが、安倍元首相。いわずもがな、でしょうか。
今、天皇がどうこうと言ってる連中、なんだ、話を聞いてると、おじいちゃんが、国の官僚でやってたとか、さらにさかのぼれば、重要な役職の武士だったとか、こんな連中ばっかじゃないですかね。名誉回復、お家復興の名を語った貴族政治の復活。みんなこういう意味の日本エリート主義者でしょう。
少し前まで、日本企業は、バブルの前まで、元気だったが、その頃、日系人は、アメリカに来た日本企業に、相手にされなかったわけですね。もちろん、日系人側にも、日本語が話せないなど、いろいろ不利なところはあったでしょうが。そもそも、日系人には、日本人と、どうコミュニケーションをとればいいのか、わからなかった。
しかし、その頃から、今になって、まったく状況は変わってしまった。アメリカで、アジアといえば、中国人。こういう時代になって、やっと、日本企業は、日系人の重要性が分かってきた。しかし、なにを今さら言ってんですかね。
しかし、そうなった頃には、日系人はずいぶん様相が変わってきていた。
彼らは、自分たちをアジア系アメリカ人と自称するようになっていた。日系4世にもなると、親が、ほかのアジア系の人と結婚するケースも多くなって、日系をわざわざ自称する動機もどんどんなくなっている、ということなのでしょう。
ただ、三世の間では、ルーツ探しの動きがあるという。彼らは、二世にインタビューをする中で、彼らから、我慢、年長者への尊敬、こういった考えが、頻繁にでてくる体験をする。しかし、その考えは、三世にとって、実際になじみのある考えであった。また、彼ら日系人が、義務教育において、よく勉強して、いい成績の人が多かったところにも、上記の考えが影響していたのだろう。そういったところから、彼らは彼らのルーツを発見していく。
この特集を見ているとき、日本の政治史について、考えていました。そして、その思考の道筋にどうも、うまく言えない、うさんくささを感じていた。日本と言ってみても、それって、例えば、上の、岸元首相のような、天皇や武士の周辺にいた連中だけを、「日本人」と言ってる連中もいるし、こうやって、アメリカのような、別の新天地で、日系人として、生きている人もいる。
私たちがもし、アメリカなど、世界の国々で生きることを選んだとき、その「日本」という概念って、なんなんの?って、話ですよね。
むしろ、なにかそういった、一部のエリートが、さかんに大本営や、義務教育を通じて宣伝してきて、すりこまれてきたものと根本的に思想、発想の違った、もっとベースにあるようなもの。
多くの人がその慣習としてある、感性としてある、それをたんに純粋じゃない邪魔で無駄なものとしてそぎ落とす前に、もちろんそれをそのまま完全保存すればいいわけじゃないだろうけど、でもそのベースには、多くの歴史的な根拠があり、単純に捨て去られることのありえない、歴史的事実性があって......。