NHKにっぽんの現場「トキ 人里に帰る」

先月、佐渡島で、トキが放鳥された。
トキは、日本を象徴する鳥であり、東アジアを象徴する鳥。中国を含め、数の減少が激しく、世界的にも、絶滅危惧種ということなんだそうだ。
日本における、絶滅の流れは戦後、急激に進行した。そして、あまりにも少なくなり、すでに手遅れとなってから、佐渡島のトキ保護センターにおいて、人口飼育が行われてきた。
一度、絶滅の道を転げ落ちた種が(それにはそれだけの理由があったからこうなったのであって)、再度復活することは、神にも挑戦するような、絶望的な道であろう。
昔、「デューン砂の惑星」を読んだとき、「生態学」という学問の意味について考えさせられた。ある土地に、ある生態系を実現させることは、工学的と言ってもいいような、科学的プロセスを必要とする。工業製品と同じような、品質の管理を必要とする。
かつての日本では、つい最近まで、トキは、どこでも見られた、だれもが見慣れた普通の鳥であった。
そう。はるか太古からトキは、日本とともに存在してきた。トキは、日本書紀万葉集にもよくでてくる、日本を代表する、重要な鳥なのだ。
日本とは、トキのいる国であり、トキが日本なのであり、ずっと、日本人の心は、トキそのものだったのだ。
そのトキが、こうやって、(これまた日本でまっさきに名前をあげられる)佐渡島に、戻ってくることが、あまり大きく報道されないことは、なんともいえない、日本そのもののパワーがなくなってきている、感じを思わせる。