的場昭弘『「革命」再考』

どうも最近は、宮台真司とか東浩紀とか、完全にエリート・パニックになっている印象を受ける。
特にひどいのが、宮台真司で、トランプ政権になって、自分の主張に合わない政策が行われていることが原因なのか、支離滅裂なことを言っているだけのような印象さえ受ける(前から、変な人ではあるがw)。
そもそも、宮台真司東浩紀が世紀末から言ってきたことは、

という「運命論」だったわけであろう。世界はお金持ちはどんどんお金持ちになり、貧乏人はどんどん貧乏人になる、と。東浩紀の言うポストモダンが、たんに、資本主義の運動に人間は抗えない、ということを言っていたにすぎなく、こういった連中が、近年の「革命」運動に、

  • エリート・パニック

を起こしている、ということなのであろう。
東浩紀は、ツイッターで、「ポピュリズム」批判を行い、

こういった人々を「ポピュリスト」として侮蔑している。
しかし、ね。
とりあえず、掲題の著者は次のように、この現象は「ポピュリズムではない」と言っているわけなんだけどね。

一一月のアメリカ大統領選挙ドナルド・トランプが勝利しました。ある意味、これは当然の結果であったといえます。トランプが自分の勝利を「ひとつの運動」だと述べたのは、その意味で語っています。ひとつの運動が、いま世界で起きているということです。その運動とは何か。それは、エスタブリッシュされた既存の制度や価値観に対するアンチ、つまり抵抗です。いいかえれば「革命」です。
革命というものが、たんに政治的な政権奪取に止まらず、既存の価値観の転覆を意味するのだとすれば、まさにトランプ旋風は革命であったといえます。他の大統領候補でその可能性があったのは、バーニー・サンダースだけだったと思われます。彼が出ていたら、ひょっとして当選していたかもしれないのです。それ以外の人々は既存の価値観のなかで戦っていただけだともいえます。イギリスのEU離脱もそうですが、既存の政党のもつ既得権への嫌悪がますます高まっているのが現状です。それを覆す運動は、当然ながら草の根的に、民衆の不満の中から起こります。
既得権をもつものは、それに対して非難の言葉を投げかけます。「非民主的、人権無視、マイノリティや女性蔑視」などなど。しかし、この言葉が空虚に思えるほど、実は既得権をもつ人々のいう民主主義や人権は、とっくの昔に地に落ちている。なりふりかまわない、利益をめぐってのアジア・アフリカでの利益争い、その結果としての戦争、そして大量の移民流入というマッチポンプのような利益追及の図式を見れば、彼らの主張する言葉の内容は意味をもたなくなりつつあります。おまけに、そのとばっちりと尻拭いは、民衆に回ってくるというのです。
グローバリゼーションを推進するヒラリー・クリントンバラク・オバマは、多くの貧しい人々にとっては帝国主義者に見えたかもしれません。民主主義と人権の流布といった言葉の裏に隠された、資本と結びついた彼らの金満的戦略は、豊かさよりも、大きな貧富の格差をアメリカに生み出しているように思えます。その問題の解決のためには既得権益を覆さねばならない、と一般民衆が考えたのも当然です。
二〇一七年に行われるフランスの大統領選挙でも、同じようなことが問題となっていまう。フランスの社会党共和党は、トランプの勝利に震え上がっっているかもしれません。ひょっとしてマリーヌ・ル・ペンが勝つのでは? 当然右翼阻止、差別主義者阻止などという標語が、フランスのメディアで飛び交っています(大手メディア、経済評論家、有名大学教授なども当然既得権益の仲間です)。
しかし、こうした非難も従来の価値観からのみ意味をもつわけで、そうした価値観がなくなればすぐに意味を失うものです。いま起きている新しい政治の旋風を、従来の価値観でも説明できる言葉をあえて選ぶならば、ポピュリズムなどではなく「人民参加型政治」となります。この言葉を使えば、これまでの非難などたちまちに説得力を失うはずです。
もっとも既得権益者の非難の対象は、右だけではありません。左にも、こうした動きを実行しようとしている人がいます。左でいえば、アメリカのバーニー・サンダースやフランスのジャン・リュック・メランションです。実は、彼らのいっていることは右の人々のいっていることと変わりがないといえます。彼らも人民参加型の政治を主張しています。しかも、これらの人々は、決断型政治というものを重要視しています。この点が旧来の既得権型政党政治と違うところです。貧困に追い込まれた人々を、金融資本と対決しても救うという救世主型決断力です(実現のほどは別として)。いまの政治に欠けているのは、まさに対立を鮮明に押し出し、問題を解決しようとする意志と決断力であることを、彼らはいずれも理解しているのです。

例えば、前の videonews.com の番組でオバマの政治の総括をしたとき、以下のように彼の特徴をまとめている。

古矢旬 ただね。彼は例えば、愛国者法みたいな、2001年にすぐに議会がブッシュにほとんど全権与えたですよね。軍事行動について。ああいうのは議会をちゃんと通った法だからということで、彼はね、むしろ、ルールオブローなんですね。彼にとって一番守るべき。まあ、憲法学者だったというのもあるんでしょうけど。ルールオブローを彼は盾に取るんですよ。だから、これは一度通っている法律だからってんで、愛国者法でも、彼がある程度のことをやるときに利用できれば利用したんですね。
VIDEO NEWSオバマの8年間に見るトランプ政権誕生の背景1

今、トランプ政権になって、いかにオバマが「トランプに比べて」良かったかといった議論になっているが、そもそも、オバマには、さまざまな問題があった。そういったオバマやヒラリーでは、結局は多くの「不満」を解決できない、ということが

  • 今の問題

であるというのが、掲題の著者の問題意識なわけで、早い話が、たとえトランプが弾劾され、次の大統領が選ばれることになったとしても、上記の問題はなにも解決していない。上記の引用で、バーニー・サンダースなら

  • トランプに勝っていたかも

と言っているが、民主党の代議員選挙が「なんちゃって」民主主義であったことは、今ではみんな忘れている。そういったニセ民主主義がヒラリーという「選挙に弱い」候補を選んでしまったために、トランプに負けたわけだが、そもそも、東浩紀先生はバーニー・サンダースは「ポピュリズム」だと言っているわけで、そもそも彼に言わせれば、

  • 民主主義に反対

なわけだ。民衆が政治に関わることに反対なわけで、つまりは「エリート独裁」が解決だ、と言っているわけで、中国共産党北朝鮮が理想なんだろうw
他方、宮台真司はどうだろう? 今週の videonews.com において、そもそもトランプには「思想」がない、と言う。では、トランプ政権の「思想」とはなんなのか、という問いに、スティーブ・バノンを挙げるわけだが、こういったオルト・ライトの特徴は、宮台に言わせれば、

  • 既存の秩序を破壊しようとしているだけ

ということになる。どういうことなのかな、と思って、番組を通して見ると、ようするに、

  • アメリカの「思想」とは、プロテスタンティズムだ。
  • なぜ、アメリカ建国において、憲法に「政教分離」のような、ジョン・ロック的な思想が反映されたのかは、歴史的ないきさつ があったのだろうが、そもそもアメリカはプロテスタンティズムの国家なのだから、憲法の方が間違って書かれている。
  • プロテスタンティズムということは、カルバンの予定説なわけで、つまり、私たちの「日常」の中に「神の意志」が示されている。つまりそれは、「お金」をもっている、ことが「神の天国への切符」の印となっている。
  • そうであれば、お金持ちからお金を奪って、福祉をしてはならない。なぜなら、お金持ちや貧乏人がそのようにあることは、「神の意志」の示されたものなのだから、その神の意志を「ごちゃごちゃ」にするような福祉はやってはならない。

ようするに、どういうことかというと、スティーブ・バノンやオルト・ライトが言っていることは、

なわけで、

  • 福祉反対じゃない

わけだ(この辺りは、左翼に共通している)。確かに、白人至上主義はそうなんだけど(実際、彼の集会でナチス式敬礼をやっている奴等が散見されるわけでw)、しかし、オルト・ライト

ってことなんだよね。それで、宮台先生が「エリート・パニック」を起こした、というわけ。彼に言わせれば、アメリカは宗教国家なんだから、そのアメリカの宗教であるカルバン的なプロテスタンティズムの教義である

  • お金持ち優先国家

に反対する勢力が現れるわけがない、ということなんだ。アメリカ政治の歴史を見ると、ずっと共和党が政権をとってきて、唯一民主党が勝ったのは、大恐慌の後のような「例外」しかない、って。
つまり、そのアメリカにオルト・ライトのような「福祉容認」でありつまりは、「非プロテスタント的(お金持ち優先ではない)」ような、保守主義ではない勢力が現れたことに、パニックされちゃっているんだよね。
確かに、スティーブ・バノンの演説をしている姿を見ると、頭がヤバいのは確かなんだけど、だからって、それをまるで「悪魔」でもあらわれたかのように表現してしまう、宮台先生はもう学者じゃないでしょう。どんなにエキセントリックな奴でも、そう振る舞うのには、それなりの「理由」があるわけで(日本会議の連中だってそうなわけでしょう)、それを

  • 既存の秩序を破壊しようとしているだけ

と相手を悪魔化してしまっている時点で、宮台先生はもう学者ではないみたいです(確かに、彼自身、自らをプロテスタントと言ってましたし、彼自身、時々、中国をエキセントリックに非難する姿を考えても、まあ、右翼なんでしょうね)。