なぜ日本は入国制限をいつまでも行わなかったのか?

今回の新型コロナの経緯を見て感じる、多くの人の違和感は

  • なぜ早めの対応がとれないのか?

であろう。そして、時々刻々と事態が推移しているため、人々が「前に行われていた政策」に対して、ほとんど批判的な指摘がない。

日本政府は4月1日の国家安全保障会議で、外国人の入国拒否の対象を大幅に拡大することを決めた。
水際対策強化のため、これまでは一部地域からのみ入国を禁じていた中国と韓国の全土が対象となり、新たにアメリカ、台湾、イギリスなどEU以外のヨーロッパのほぼ全域、インドネシアやタイなど東南アジアの7カ国、南米やアフリカ、中東の一部を含めた49の国と地域が加わる。これにより日本への入国拒否の対象国は合計で73カ国・地域に拡大。過去14日間に、これらの地域にいた外国人は日本に入れなくなる。なお、「特別永住者」については、入国拒否対象ではない。
4/2更新【入国規制まとめ 】日本への入国拒否、ついに英米も加え73カ国・地域に拡大 | やまとごころ.jp

この事実は驚きだ。今ではよく知られているように、東京の指数関数的増大が始まったのが、3月後半だ。つまり、専門家委員会は「それ」が発生するまで、完全に

  • なにもしていなかった

ということなのだ。まったく、警戒していなかった。今のアメリカの状況を考えてほしい。なんと、この4月1日まで、入国制限されていなかった、というのだ。ということは、

  • 彼ら

はどんどん日本に入ってきていた。
もっと言えば、海外の日本人の帰国者の問題もある。
今ではよく知られているように、新型コロナは「無症状」の人が感染させる。つまり、日本に入国する段階で無症状であることが、少しも彼らが感染者でないことを意味しない。
最近もニュースになっていたように、日本は武漢からの入国者とダイアモンドプリンセス号の乗客からの感染爆発は抑えたが、今、流行しているのは、それ以外のイタリアやアメリカから入ってきている人たちから爆発したものだ、と分かっている。

岡部:少なくとも二〇〇九年の新型インフルエンザ程度では特措法には相当しないというのが、当時のコンセンサスです。今回、WHO(世界保険機関)がパンデミック宣言を出してはいますが、最初の広がりはインフルエンザに比べても弱いわけで、とても非常事態宣言などというのを持ち出すような病気ではない。むしろもっと冷静な対応が必要で、確かに備えておくという意味ではあってしかるべき法律だとは思いますが、それに相当するかどうかの議論は別にやらなければいけない。それが僕の意見です。
(岡部信彦「ゼロリスクの感染症対策はありえない」)
中央公論 2020年 05 月号 [雑誌]

上記のインタビューは、なんと3月19日のものだそうで、なんと、東京の指数関数的増加が始まる

  • 直前

まで、専門家会議の岡部先生には、まったく「危機感」が感じられない。
どういうことなのだろうか?
日本の海外からの人の検疫は、そもそも「無症状者」に対しては、基本的になにもできない。それは、新型インフルエンザ等特措法でもそうで、つまり、

  • 絶対に一定の割合の「感染者」が日本に入ってくる

ことを前提にした法律になっている。
しかも、今回の新型コロナにとっては「無症状段階」こそが、感染力が強いことも分かっているわけで、そう考えれば、対応策として一番協力な方法は

  • 感染の「可能性」のある人を日本に入れない

だったはずなのだ。
しかし、なぜか日本の専門家会議はこの政策に、4月1日になるまで「興味」も示さない。
これは、どういうことなのだろう?
おそらく専門家会議は、今に至るまで「集団免疫」論で考えている、ということなのだろう。一定の感染者を国内に入らせて、流行が起きたとしても、その流行が「指数関数的増大」にならなければいい、と考えていたのだ。
そして、日本の感染者がずっと「くすぶり」続けている限り、クラスター対策班は有効に機能し、まさに「集団免疫」でやれる、と。
しかし、3月後半の東京の指数関数的増加によって、そのもくろみは崩れた。上記の引用にあるように、結果としての

  • 感染者全体

が一定の範囲で抑え込めていたなら、まさに「普通の風邪」ということで、社会がパニックに陥る必要はなかった。しかし、そうは楽観視できない数字が出てくると、今までの

  • のんびり

と傍観している態度が、社会的に許されなくなる。つまり、どんなに重症化率の低い「弱い」ウイルスだったとしても、その「感染者」の母数が増えれば、総数としての重症者は増えて、

になる。
しかし、たとえそうだとしても、今の専門家会議の多くは結局は「これは大したことはない」という認識は変わらないのだろう。だから、上記にあるように

を今回の事態に使うのは「反対」なのだ。
ようするに、

  • やる気がない

わけだ。
こうやって考えてみると、おそらく多くの人が感じている直観として、

  • 他国との比較

が大事になってくるのではないか。なぜ、中東などの多くの国で、それほど感染が広がっていないのか? それは、単純で

  • 早めに「国境封鎖」をしている

からだw なぜそうするかといえば、彼らは自国がいかに「医療体制」が脆弱であるかを分かっているから、入国者を入れない、ということに対して容易に

  • 国民的なコンセンサス

が成立するのだ! これは「死活問題」なのだから、さっさと国は国境を閉鎖しろ、と。
ところがそれが、日本ではできなかった。できなかったどころか、大手マスコミから、SNSから含めて、当時、

  • 早く、アメリカ人を日本に入れるな!

といった国境閉鎖の迅速化を求める声が、あまりに少なかったことに、大きく特徴とされる。なぜ、専門家を含めて、そういった声が大きく挙がらなかったのか?

追記:
よくスペイン風邪と、今回の新型コロナが比較されるが、言うまでもなく、当時と比べて、世界人口は圧倒的に増えている。そして、それは日本も変わらない。このことは、 新型インフルエンザ等特措法の作成当時と比べて、

  • 日本への「旅行者」の数

も、びっくりするぐらいに増えている。つまり、ここ何年かの間で、日本は急速に「観光国家」に変わっていた。日本の収入源の大きな柱に、海外からの観光客になっていた。それは、明らかに、 新型インフルエンザ等特措法においても、想定されていないような規模の観光客の増加が、ここ何年かで起きていた。
この急速な動きに

  • 法律

が対応できていなかった、というのが実情のように思われる。
あと、舛添さんのブログ記事が注目されているが、

このような方針転換が正しいのか否か、それを諮問する専門家による検討会(アドバイザリーボード)を私の直属で設置することにした。政府の新型インフルエンザ対策本部には専門家諮問委員会が設置されており、尾身委員長などそうそうたる専門家に集ってもらっているが、首相官邸がメンバーを教授以上の肩書きの者に限定するなど、官僚的、権威主義的手法で人集めをした。
そのため、若手の専門家や既存の医療エスタブリッシュメントに反対する者の意見が入ってこない。そこで、セカンドオピニオンを取り入れる必要があると、私は判断したのである。現場で戦っている医師や看護師の意見ほど貴重なものはない。
こうして、19日、神戸の「野戦病院」を指揮する岩田健太郎神戸大学医学部感染症治療学分野教授)、国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官の森兼啓太、東大医学部感染症内科助教授の畠山修司、自治医科大学感染症学部門準教授の森澤雄司の4人に集まってもらった。
感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(9):感染経路が不明に・・新しいフェーズ

2009年の新型インフルエンザのとき、厚労大臣だった舛添さんは、尾見先生などを中心とした政府の専門家会議とは独立に、大臣直属の「専門家会議」を、岩田先生などを中心として組織していた、という。
このことは、上記の問題に対して、一つの可能性を示唆している。上記の岡部先生の発言にもあるように、今回の新型コロナにおいては、専門家委員会は

を反映しているかのように、どう考えても「慎重派」を、あえて厚労省が集めて作られたような、長老中心とした組織であった(ようするに「御用学者」なのだw 奴らは、政府が「言ってほしい」ことを言うために集められた連中であって、彼らがそもそも政府の意向に逆らうことを言えるはずがないのだw)。そして、実際に、

  • 全ての対応が「後手後手」

に回っている、というのが、今の現状であろう。だとするなら、もしも今回の新型コロナ対策において、舛添元厚労大臣の「直属の専門家委員会」が今回も組織されていたなら、まったく違った

  • 徹底して、先手先手の「強力な国境封鎖」「強力なロックダウン」

の政策を提言して、政府側の「無能」な、後手後手の専門家委員会と

  • あらゆる場面において「対立」

することによって、今回の「失敗」の、かなりの部分が回避されていたのではないか? まあ、そんな空想をしないでもないわけである...。