国境

私たちは国家を「自明」なものと考えている。その上で、今回のウクライナ戦争についても、その「国境」を変えてはいけない、と主張する。つまり、ウクライナはその領土をロシアに奪われてはならない。なぜなら、それが

  • 正義

だから、と。
国家が、他国に侵略されてはならない、というのは、国連憲章が主張していることだ。それよりもなによりも、戦争で侵略された側の国民が、侵略した側の国民に殺されることを受け入れられるわけがない、と思うわけだろう。
そうした場合、どちらが「正義」かで議論をしている限り、戦前の大日本帝国軍の、

が、まったく今のマスコミにおいて再現されていることは、驚くべきことだ、と言えるだろう。WW2の反省によって、マスコミはこういった報道を反省したんじゃなかったのかと思っていたら、今度は

  • アメリカ側を味方しているんだから、やってOK

ということになった。かなり危ない橋を渡っていると思わざるをえない。
まず、アメリカが近年、ウクライナに何をしてきたのか、が問われている。アメリカは、さかんに軍事援助をウクライナにしてきた。これをロシアが脅威と思うことには、一定の合理性がある。それは、誰も言及しないが、

のときの、アメリカとキューバソ連)が、まったく、今を反対にして同じだったわけだろう。ウクライナは、モスクワに、あまりにも近い。ここで、アメリカがミサイル配備や、核配備をされたら、数分でモスクワに到達する(まあ、そう言えば、北朝鮮のミサイルは、日本において同様の状態なのだがw、アメリカは、自国に到達する、北朝鮮のミサイルの開発に対する反対しか言っていないわけでw、まったくのダブルスタンダードなわけだが)。
このロシアとウクライナアメリカ)の対立は、2014年のマイダン革命から始まっている。そこで、親欧米政権が誕生したことに対応して、すぐに、ロシアがクリミア占領を行った所から始まっている。
もしもウクライナが親欧米政権になり、ロシアと対立するなら、ロシアは黒海の港湾を使えるのか、という話になる。つまり、大国ロシアが、数えるほどしか、不凍港の海のルートをもっていない問題が、

的な意味において、重要になる(ちなみ、日本海側は、モスクワから、あまりに遠いため、そこまで、こちら側が重要になることはなかった、という関係にある)。
この8年の間、ロシアとウクライナミンスク合意を2回、成立されているわけだが、ロシアどころか、ウクライナの方こそ、これを確信犯的に破っている。そもそも、ウクライナ国内は、ロシア語話者が東部に多くいるわけだが、彼らは

  • 内戦

の敵として、徹底して弾圧されていた。むしろ、彼らを「助けて」いたのは、ロシアの方だった。ロシアが支援物資などを届けていたから、なんとか生き延びられていた。しかし、ウクライナが、クリミアへの

  • 川の堰止め

によって、深刻な水不足になっていたことを今は誰も話題にしない。
今回の戦争で、ロシア軍が多くのウクライナ国民の犠牲者を出したことは結果だが、そうだとしたら、どう考えても、「大量虐殺」というような数でないことは明らかだろう。もちろん、そうであっても、死者は悲惨であり、許されるものではない。しかし、もしもそう思うのであれば、なぜウクライナは「和平」を、もっと真剣に探らないのか、というのは大きな問いなわけだろう。
自国の国民が死んでいるわけである。それを、相手のせいにしていたって、自国の国民が亡くならなくなるわけじゃない。それを実現するのは、政治家の役目なわけで、もっと真剣にロシアと交渉をやらなければならないのではないか?
なにかが、おかしいわけである。
おそらく、ゼレンスキーは、アメリカがウクライナと「一緒」に戦ってくれることによって、ロシアと戦争しても「勝てる」と思っていたわけだ。だから、いくらでも、ロシアを挑発しても、大丈夫だと思っていた。ところが、アメリカは、肝心な「戦力」の部分で

  • 小出し

にした。しかも、ウクライナNATO加盟は「絶望的」になっている。それは、なんらかの

  • バランス

のことを考えてることが分かってきた。アメリカが考えているのは、この「戦争」を契機にして、自国の軍需産業の武器を、世界中の国々に

  • 売る

ことだった。これによって、テレビでは毎日のように、ジャベリンの発射演習の模様が繰り返し流されることになり、さながら

  • 品評会のデモンストレーション

のように、今のウクライナがなっているw
アメリカは本気でロシアを怒らせようと思っていない。もしもロシアが本気で怒ったら、ロシアの核ミサイルが何十発もアメリカに落ちてくるからだ。つまり、アメリカは最初から、ロシアに「勝ちたい」と思っているのではなくて、

  • ロシアを怒らせて

ロシアに、アメリカにとっての「軍事的脅威」であり続けてもらうことで、アメリカの軍需産業に公的お金が流れることの

  • 正当性

を与える存在で「あり続けて」もらうことでしかない。それは、今のウォールストリートが、ロシアの株をどんどん買っているし、ルーブルがまったく値下がりしていないことからも分かる。むしろ、アメリカや日本のGDPがこの戦争で深刻な下げを見せている中で、ロシアのGDPは増えてすらいる。まあ、当たり前というか、これだけ、エネルギーインフレを煽っておいて、これだけ、エネルギー市場で単価が高くなっているわけだから、ロシアのGDPが上がるのは当たり前なのだがw
確かに、一時期に比べて、日本のウクライナ戦争の報道も下火になってきた。その最大のきっかけは、マリウポリでのウクライナ軍の「投降」だっただろう。このいきさつは、奇妙というか、ある意味で、分かりやすかった。最初に、国連がロシアと交渉して、その後、ロシアは人道回廊を作った。ところがこれに対して、ゼレンスキーは国連に「なんでウクライナに先に来ないんだ」と怒ったわけだ。しかし、国連が先に、ウクライナに行くわけがない。なぜなら、マリウポリの一般市民を「逃げられないようにしている」のは、ウクライナの方だったからだ。マイリウポリの、アゾフ大隊は、マリウポリの一般市民を

  • 市民の盾

にすることによって、ロシアが総攻撃をかけないようにしていた。ところが、国連が最初にロシア側とネゴってしまったために、国連とロシアの間で、一般市民の救出の合意ができてしまった。そうなると、ウクライナはそれを断れない。しぶしぶ、一般市民の投降を認めたわけだが、すると

  • 一瞬

で、アゾフ大隊は「投降」した。これを見せられて、世界中の人は、本当にアゾフおおを「英雄」にまつりあげることは正しいのかを考えさせられたわけだろう。
ロシアが正しいと言うつもりはないが、ロシアがこれだけ苦労しているのは、ロシアがなるべく、ウクライナの一般市民に被害がおよばないように行動しているから、というのは、あまりにも明らかなのに対して、ウクライナの特に、アゾフ大隊のような連中は、自分たちが生き残るためなら、一般市民の犠牲なんて、たいしたとじゃないと思っているんじゃないのか、と思わせる行動が多くみられる。むしろ、アゾフ大隊の抵抗方法が、「市民の盾」を使うのだから、ロシアはこれだけ時間がかかって苦労しているわけで、しかし、そうだとしても、ロシアにとっての「建前」は、

なのだから、それをやるだけの価値があると思わせているのは、むしろ、そういったアゾフ大隊の態度だ、と受け取られているわけだろう。
今回の戦争で、今は、結果として、ロシアはドンバス地方の東部と、そのまま南部に下がった、黒海沿岸部までの占領を実現している。そして、この線は、おそらく、クリミアへの水止めを回避するという意味でも、最低限のラインなのかもしれない。
ロシアにとって大事なことは、そういった「地政学」的なバランスだった。これに敵対したのは、むしろウクライナなのであって、ウクライナの親欧米政権は、まるで、ロシアとの国交を断行するかのような、強硬策を主張してきていたけであり、その状態で、この地域の

  • バランス

ができるはずがないことが分かっているはずなのに、アメリカのネオコンと、ウクライナ国内の民族派の強硬策に、ゼレンスキーが逆らうだけの政治的なパワーがなかったがゆえに、ここまで来たわけで、そもそも今のウクライナ政権に、正常な政治的行動が可能なのかさえ、疑わしいわけである。
ゼレンスキーは今でも、湯水のように、アメリカが軍事物資を支援してくれると思っている。しかし、アメリカの民主党政権は、次の選挙で国内のインフレを理由に大ピンチの状態だ。大量のホームレスが家賃が高すぎて家を借りらられない状態をほっておいて、そこまでの予算の投入を国会が認めるのが疑わしくなっている。
そもそもウクライナは、ソ連時代はソ連邦に属していたわけで、ロシアとウクライナ

  • 同じ国

だったわけで、そういった国で、しかも、モスクワに近く、国境をこれだけ共有している国が、単純に

だからといって、地政学的なバランスを無視して、「親欧米」といったって、限界があることくらい分かりそうなものだろう。つまり、明らかに、今のウクライナ政権は

  • 政治の素人

によって乗っ取られているわけで、彼らから合理的な判断がなされることを期待できるのかは疑わしいわけである。
国境とは何か? それは、「人工的」に引かれた線であって、なんの意味もない。ウクライナの多くの国民は、ロシアに「親戚」がいるわけであって、そんな簡単に切断できない。境界は常に、一定のバランスによって、変わらざるをえないわけで、それを認められないというのは、地政学的な現実を分かっていない、と言うしかない。
もともとが人間が引いた線にすぎないのだから、だれから昔、そう引いたのなら、いつか、その線が別のように引かれることは、いくでもありうる。大事なポイントは、

  • 隣国

とは、そういうものだということであって、そこで「国家の主権」だとかいった、夢物語を語っていって、しょうがない、ということなのだ...。

追記:
なぜウクライナはここまで、親欧米に傾いたのかだが、二つあって、一つはウクライナ国内の民族派えあり、過激派であり、強硬派にゼレンスキーが対抗できなかった、というのがあるあろう。暴力的な人たちなので、そう簡単に操れない。彼らの機嫌を損ねると、どんな仕返しをされるか分からない。もう一つが、アメリカのネオコンが、「甘い言葉」をずっとかけ続けたから、なわけだ。
ウクライナはこの戦争が始まってすぐに、まるで、ウクライナがすぐにでもNATOに入れると思って、申請をしようとすら思っていた。しかし、これにも理由があるわけで、バイデンがNATO加盟国が攻撃されたら、全力で助ける、と演説で言っていたからだ。
しかし、ゼレンスキーはNATOに入れないことが分かった。それ以降のゼレンスキーの言っていることは滅茶苦茶である。もはや、やけくそと言ってもいい。あとは、なんとかして、アメリカやEUなどに泣き言を言って、お金をせびって、戦争を続けるかしか、自らのプライドを保つ方法はない。いや、一つだけ手段があう。それが、

  • 世界中の人々の憐み

である。世界中の人が、どこまでゼレンスキーを「かわいそう」と思って、「募金」をしてくれるか。もちろん、ゼレンスキーはそのお金を貧しい人になんて使わない。一人でもロシア軍人を殺すためお武器を買うお金に使うわけだが、このことを知らずに、ただただ憐みの心で、募金をしてくれるお金がどこまで集まるかにかかっている、と言えるのかもしれない...。