花田十輝の脚本作成術の研究

この前このブログで、ユーフォ3とガルクラは、公美子と仁菜が「自己犠牲」をやっていると考えると、あらゆる矛盾が解決するんじゃないか、といった仮説について検討した。そのときに私の頭の中にあったのは、花田十輝先生は、どうやってアニメの脚本を作っているんだろう、という疑問だった。

――(全国大会での)ユーフォニアムのソロ奏者を決めるための覆面オーディションと、その結果は、アニメならではの展開になっています。このあたりの流れは、やはり構成の段階から考えられていたのですか?
石原:はい、構成からですね。久美子と(黒江)真由の2人だけのオーディションを行って、最終的に久美子が負けるという展開は、初期の打ち合わせの段階から挙がっていました。(シリーズ構成の)花田(十輝)さんが、原作準拠版とアニメ版の2案の構成を出してくれました。
元々、僕はどんな作品でもそうなのですが、原作準拠型の人間なので、最初にそのアイデアが出た時は色んなことを考えましたが、最終的には、北宇治のあるべき姿や久美子の成長などをより分かりやすく描ける展開を採りました。
www.animatetimes.com

こちらはユーフォ3の監督が、花田先生がどうやって脚本を書いてきたのかを紹介している場面だけれど、もうこの段階で驚くべきことが書いてありますよね。まず、

  • 原作準拠版とアニメ版の2案の構成を出してくれました。

とあるように、今回の公美子の全国ソリ落選は、花田先生のアイデアだった、と言っているわけ。しかも、そのときに、原作準拠と、原作破壊の二つをセットにして、監督にプレゼンをされている。分かるだろうか? つまり、なんで二つを一緒に提示したかというと、原作破壊版は

  • 花田先生が考えた案

だから、なんとかしてこちらを採用させるために、セットにして提示しているわけねw 当たり前だけど、原作破壊版の方が花田先生の「オリジナル」成分が多いのだから、それだけ

  • 花田先生の作品

の養分が多くなっているわけ。もちろん、著作権もその分、花田先生の割合が大きくなっている。

ーーあと、花田さんは近年、シリーズ構成だけでなく全話の脚本を自ら書かれていますけど、何か理由があるのですか?
花田:昔からなんですが、後になってやっぱりこうじゃなかったとひっくり返してしまうことが多いからです。書いていくうちにどうしてもキャラクターが膨らんできて、他のライターさんに変更の指示出すのもお互いにストレスなので、自分で書いちゃうんです。
ーーそうなると執筆量がすごいことになりますよね。
花田:そう言われるんですけど、他のライターさんの個性を引き出し、いいシナリオを書いてもらう作業というのもとても時間がかかり、大変な作業なので、かかる時間はあまり変わらないです。自分が書いている時間は確かに増えちゃうんですけど。
ーーそれは筆が早くないとできないですよね。最近、花田さんの名前をやたらと見かけますけど、全ての作品で全話書いていますよね。
花田:それは、ここ数年、書いていたものがたまたま今年全部放送になっただけ、という理由です。書くのが早いというか、「まず書いてみますので、それからみんなで考えませんか」とはよく言いますね。僕はどうせいくら考えても頭の中で出来上がらないので、とりあえず忘れないうちに紙に記録して、それから考えるタイプ。なので直しは何度も重ねます。本作でも例えば10話は決定になるまで15稿まで修正していますね。
realsound.jp

こちらは、直接、花田先生にインタビューをして、その脚本作成の方法論を聞いている個所だけれど、もう読んですぐに分かるように、

  • ものすごいスピードで最後まで書き上げている

わけ。だから、監督からは「仕事が早い」ということで重宝される。しかし、早い分だけ、それぞれの連続性だったり、各キャラのバックグラウンドだったりが、深く考察されていない。花田先生は、とにかく「アイデア」を紙に書く、アイデア出しに重点を置いている。思いついたことを、紙に書き留めておいているというレベル。しかし、そういったレベルだから、とにかく仕事が早い。だから、監督に喜ばれる。
じゃあ、そっからどうするかというと、それが

  • ブレイン・ストーミングw

いわゆる、「ブレスト」ね。まあブレストというと、ラノべの俺ガイルで、典型的なブレストキャラが登場したけど、あんな感じで、監督を含めた関係者と会議をとにかく、しつこいくらいに何度もやるわけね。そして、そこで、どんどんアイデア出しをさせる。そして、そのアイデアを脚本に取り込むことをノルマにして、後はひたすら、そのノルマが取り込まれているかどうかのチェックをやって、それで最終的な完成にする。
このブレスト方式の特徴は、例えば監督とかがアイデアを出すと、なんか監督は「仕事をやった」って気持ちになれるわけねw しかも自分が出したアイデアが採用されれば、誇らしくもあるでしょう。でも、そのアイデアが本当にこのストーリーと整合的なのかは、よく分からない。
つまり、この方式は脚本家が、それぞれのアイデアに対しての「責任」を分散できるわけね。自分が出したアイデアじゃなければ、そのアイデアを出した人が説明責任を負わされる、みたいな形で脚本家が言い訳できるわけ。
つまり、脚本の首尾一貫性のなさ、矛盾の多さに対して、集中砲火を浴びにくくしていることになっている。
たとえば、最初に書いた「自己犠牲」ということでいうと、先生はまず、主人公が次々と自己犠牲をすることによって、回りで苦しんでいる人たちを救っていく、というストーリーを、ものすごいスピードで書いているんだと思うんですね。それで、一気に短かい時間で、最終話まで書いてしまう。そして、その後に、

  • 主人公は客観的に見れば、明らかに自己犠牲なんだけど、本人は天然のボケなのか、それに無自覚

というふうに整理して、まず、主人公の一人称の視点をうまく使って、自己犠牲を隠蔽する。次に、

  • 主人公の回りの人は、その主人公の自己犠牲の行動を見て、「この主人公は自己犠牲をやった」ということを認識するんだけれど、その認識を主人公に向けても、回りの人に向けても語らない。だけど、その自己犠牲を受けた上での、それをふまえた上での「分かってますよ」的な行動を的確に行なう

わけね。こうして、このストーリー上からは、自己犠牲的な言及は一切、排除されるわけだけれど、だからなんか、ストーリーが変なんだよねw それを、多くのアニメを見てきた人は「矛盾」と言うんだけど、信者っているわけで、彼らはなにがなんでも礼賛しかしないから、当然、こういったネガティブな分析は排除されるわけ。
例えば、花田先生のインタビューで一番炎上しているのが以下の個所だろう。

――もし、続編が作れるとしたらどういった話を盛り込みたいですか?先程、コメディ要素にも言及されましたが…。
花田 一個考えてたのが、仁菜が超イケメンボーカリストに口説かれて、ホイホイ家までついて行っちゃう話です。で、結局襲われそうになるんだけど、巴投げでノックアウトして逃げ帰ってくるっていうね。こういうのは、アイドルものではできないネタなので、盛り込んでみても面白いなと。あとは日常のエピソードをもっとやりたいですね。
0115765.com

以前に、JリーガーがツイッターのDMを使って、ファンの女の子を次々とナンパして、セックスをやりまくっているということを暴露したが、なんと花田先生は、

  • 仁菜がイケメンボーカリストにレイプされる

ストーリーを続編として構想しているんだそうだw なんだその薄い本は、と思うかもしれないが、これが花田先生の脚本術なわけねw こういう雑なストーリーをとにかく書き上げて、それをネタに

  • ブレスト

をさせて、アイデア出しをさせて、どんどん修正する。もともと、内容がないから、すっかすかのストーリーができあがって、とにかく最初から最後まで意味不明なんだけど、やたらと監督とかからは、評判がいいわけね...。

追記∶
ガルクラの仁菜は高校でイジメられていた。そういうストーリーになっている。しかし、ヒナは最終回で全くそのことを反省してないし、逆に仁菜をおちょっくっている。しかし、高校でクラス全員からイジメられるということは、クラスの女全員が、クラスの男子全員にレイプをやれと言ってるのと変わらないわけね。つまり、それくらいの覚悟でイジメという言葉を使わなきゃならない。だからこそ、仁菜は自殺を考えたわけでしょう...。