坂田聡『苗字と名前の歴史』

日本人にとって、氏名の氏は、いわば、明治以降に、今の形になったそうであるが、しかし、そのことは、なんなのか。それについて、この本では、性と苗字でいえば、それは苗字の方なのだということが、強調される。
では、その苗字とはなんなのか、なのだが、それは、家制度と、密接に関連していることが強調される。
南北朝時代後期から室町時代を通して、遺産相続の方法が、子供たちにそれぞれ分配するものから、長子相続に変わったのだそうだ。それによって、財産を分散させることなく、持続させることになり、つまり、家制度が定着していく。
ところで、庶民レベルでも、実は、明治以前から、苗字を使われていたのだそうだ(公式の文書では使うことを禁じられていて、ないことになっているが)。だから、明治政府が、制度化したとき、庶民は今まで使っていた苗字を申請して、すんなり定着した。また、夫婦同姓(同苗字)も明治以前から、庶民では定着していたそうだ。だから、明治政府が短期間だが、別性にしようとしたら、庶民からかなり、反発があったそうだ。

苗字と名前の歴史 (歴史文化ライブラリー)

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