ウィリアム・モリス『ユートピアだより』

ウィリアム・モリスというと、芸術の分野で、アールヌーボーだったかな、いろいろ有名な人のようでね。
彼が、社会主義的な、ユートピア社会を描いたのが、この小説である。
作品としては、やっぱり、ユートピアなので、素朴な描写が多い。小説としては、深みはあまりないだろう。
しかし、彼の社会主義というのは、これはこれで、独特なのだ。工業制手工業といいますか。個人事業に近い技術者の感覚と言いますか。もともと、社会主義って、マルクスの頃は、個人単位の技術者の集団、ギルドであって、ロシアや、ドイツ、日本の、国家的支援がないとやれないような大規模な工場を作ってというような、そういうイメージじゃなかったんでしょうね。少なくとも、そちらの方が普通だった。だって、そうじゃないと、個人とか、自由とか、当時の近代主義の御題目のイメージに合わないですよね。
そんな感じでみていくと、この本も読み継がれていくべきなにかがあるのだろうか。

ユートピアだより (岩波文庫 白 201-1)

ユートピアだより (岩波文庫 白 201-1)