西尾維新「きみとぼくが壊した世界」

前の2作と較べても、正直、あまり、ミステリの部分で、読みごたえのある感じはしなかった。ちょっと中途半端にきれいにまとめたつもりになるとこんな作品になるといったところではないですかね。そこは作品のプロットが許さない性質のものかもしれないが。
途中で、ある日本語しか話せない登場人物が、一人で、イギリスにとり残されるみたいな場面がある。
よく考えると、そういう場面というのは、実際にあったら大変でデンジャラスであるが、うまくいくケース、最悪のケース、どちらであれ、じゃあ、どうやって日本に帰れるかとか、どのように意志を現地の人に伝えるかとか、具体的にそういった場面を記述されたら、興味深いかもしれない。(文化人類学では、文明人の大人も、それぞれの部族の中では、子どもとして接せられるみたいな話がありましたね)。
でも、その場面は、「かたことでも、なんとか通じた」、みたいな、通りいっぺんの説明だけあって、具体的な場面が記述されているわけでもない。ああ、これ、小説なんだな、という感じですかね。作者のスコープにないことは、こういうふうにチープに処理されるんだな、と(上から目線でそんな感じですかね)。

メフィスト 2008年 05月号 [雑誌]

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