日本現代文学

八目迷『夏へのトンネル、さよならの出口』

ほとんどなんの情報ももたないで、映画館で、アニメ「夏へのトンネル、さよならの出口」を見たわけだが、これも、そこまで深く考えたわけでもなく、そのまま、2日くらいかけて、原作のラノベを読んだ。その間には、いろいろ情報をしいれていたので、映画と…

安里アサト『86----エイティシックス−−−−』

ウクライナ戦争は奇妙な戦争だ。しかし、大事なポイントは、 ウクライナは20才から60才までの男性の国外退去を禁止しているが、必ずしも「徴兵制」までを強制していない。多くの男性は、ボランティアなどを行っており、軍人にはなっていない。 ロシアの…

トネ・コーケン『スーパーカブ』

現在、テレビアニメが放映されている、原作のラノベの第一巻。 主人公の小熊という女子高生は、少し特殊な生い立ちをしている。 父親は小熊が生まれて間もなく事故で死に、さほど多額でなかった父の遺産を着り崩しながら小熊を育てた母親は、小熊が高校に進…

入間人間『安達としまむら』

このライトノベルは、けっこうな巻数が出版されているが、ある意味で、第1巻で基本的な、この世界観は完成している。 今期の、これを原作としたアニメの第一話は、この第1巻の最初の重要なところが描かれている。 高校1年の一学期。安達はほとんど授業に…

渡航『やはり俺の青春ラブコは間違っている14』

まあ、このラノベについては、以前にも何回か言及をさせてもらっているわけだけれど、けっこう前に最終巻が出ていたわけだが、私はあまり、最終巻を読んでみよう、という気持ちになれなかった。それには、いろいろな理由があるのだろうが、正直、作者が何を…

タカヒロ『鷲尾須美は勇者である』

私が今さらながら、アニメ「ゆゆゆ」について、改めて考えてみようと思ったのは、以下のニコニコ動画を見て、ここで、非常に重要なキャラとして、 三ノ輪銀(みのわぎん) のことに言及されていたからなのだが、 『刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火』まだまだま…

武田綾乃『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編』

(おそらくは、多くの人がアニメ化された3年生編を見て、そのストーリーを知ることになるだろうことを考えると、この原作のネタばれは極端なまでに止めておくべきなのだろうが、このブログでは、あまりそういうことを考えないで書こうと思ってきたこともあ…

河野裕『きみの世界に、青が鳴る』

この階段島シリーウを今まで読んできて、この作品のテーマとしての、 なにかを<捨てる>ことなく<大人>になれるのか? つまり、成長できるのか? 子どもが大人になることの、その「汚なさ」への抵抗をどこまで徹底できるのか、ということでは興味深く読ん…

鴨志田一『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』

今期、放送されている深夜のテレビアニメに「ゴブリンスレイヤー」というのがあるが、この、第一話は一部で、少し「話題」になった。というのは、どう見ても レイプ を思わせる表現があったからで、こういったものを アニメ で作り放送するのは「いかがなも…

河野裕『夜空の呪いに色はない』

私が「身体論」を疑うようになったのは、それを一見 理論の<外> であるかのように語る「しぐさ」が疑わしいと思うようになったから、と言ってもいいだろう。つまり、これは一種の「ロマン主義」なのだ、と考えるようになった。このことは、今の歴史修正主…

西尾維新『悲終伝』

一方において、物語シリースは、あれほど「終わり」を何度も繰り返しながら続いているのにも関わらず、この伝説シリーズは、あとがきで作者が宣言しているように、どうもこの物語は、これで終わり、といった印象が強いわけで、その差異とはなんなのだろう、…

水野良『グランクレスト戦記』

つい最近、映画館で「マジンガーZ」を見たら、彼ら世界平和のために戦っている主人公やヒロインが、作品の最後では、普通に「結婚」して、子どもをもうけて、その子育てをして、それこそが 幸せ なのだ、といった描き方がされているのを見て、基本的にこう…

十字静『図書迷宮』

最近のアニメなどの、サブカル作品を見ていると、ある「特徴」があることに気付く。それは、基本的に主人公の男の子の性格が 不分明 な場合が多い、ということなのだ。それは、例えば、今期のアニメで言えば、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」のヒロであ…

武田綾乃『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』

正月はとりあえず、一年を通しても、比較的ゆっくりできる時期であり、普段あまりやらないことを時間をたっぷりとってやれたりできるということもあって、じゃあなにをやるのかということになるわけであるが、私はとりあぜず、小説を読もうかと。 もちろん、…

蒼山サグ『天使の3P!』

日本の十代以下の子どもたちの死因の第一位が「自殺」であることが知られるようになっているにも関わらず、そのことをまったく話題にもしない、この日本社会の閉塞した感覚をどのように表現したらいいのか、私にはよく分からない。 今週の videonews.com で…

河野裕『サクラダリセット』

今、アニメ版の第10話が終わったところで、ちょうど原作の第三巻の最後が描かれた。アニメ版は、おそらく時系列で原作を並べているところがあるのだろう。 正直、原作の最終巻の第七巻までを駆け足で読んだ感想としては、うーん、といったところだろうか。…

武田綾乃『立華高校マーチングバンドへようこそ』

結局、世の中には二つの「表現」があって、一つはいわゆる「抽象」とか「表象」と呼ばれているもので、ある直接的な対象そのものを記述しないで、なんらかの別の表現によって、その指示しようとしている対象を解釈するという手段であって、こちらはなんとい…

長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』

私たちは、儒教的な倫理社会や、任侠の人倫的正義は立派だと思うし、映画などを見て「あこがれる」側面があることを否定はしないが、一般に私たちはそこまで、性根が座っていない。つまり、それはタテマエであって「ホンネ」は、 人間は簡単に死ぬ のだから…

初野晴「クロスキューブ」

人はなぜ生きるのだろう、という問いは、逆に言えば、なぜ人は死なないのだろう、自殺しないのだろう、というように問いが反転する。しかし、そのように問うのであれば、逆に、 なぜ「もうすぐ死ぬことが分かっている人がいる」のだろう? という、少し奇妙…

明月千里『最弱無敗の神装機竜4』

ラノベやエロゲにおける、いわゆる「ハーレム」展開は、まさにそれが、この問題の本質であるかのように一般的になった。 たしかに、男性向けとして作成されるラノベやエロゲにとって、魅力的な女性の登場が読者の作品への興味をもたらす、と考えることは一般…

林トモアキ『ヒマワリ:unUtopical world』

主人公の、日向葵(ひゅうがあおい)、別名「ひまわり」は、女子高生でありながら、、完全に「ひきこもり」生活をしている。学校に行っていない。四年前。ある、テロ事件で、養子だった自分を育ててくれていた父親を亡くしてから、彼女は 壊れて しまった。 …

河野裕『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』

うーん。 前回だったか、功利主義と徳倫理学は相性が悪い、といったようなことを書いた。 一方において、功利主義は「無敵」と言われる。なぜかというと、どんな「推論規則」も、その妥当性を、功利主義的に計算できるからなのだ。つまり、功利主義とは 何が…

西尾維新『悲亡伝』

トルコがロシアの飛行機を打ち落として、今、世界は第三次世界大戦に突入しようかの大騒ぎであるが、そもそも、なんらかの「武器」を形態して、目の前に現れた時点で、相手への信頼がない限り、なんらかのそういった武力衝突が起きないことを保障することは…

柳実冬貴『対魔導学園35試験小隊2』

ときどき思うのだが、戦争が「終わる」とは、どういうことであろう? こんなことを言うと、頭がおかしいんじゃないか、と思われるかもしれない。戦争が終わるとは、文字通り、戦争が終わるということで、平和になるということでなんの不思議もないじゃないか…

西尾維新『終物語 上』

掲題の小説の中ごろに、有名な「モンティ・ホール問題」が重要な役割を演じている。詳しくはウィキペディアでも読まれれば、その概要は把握されるであろうが、この確率問題のポイントは、ある「言外」の約束事が関係している。 「プレーヤーの前に閉まった3…

伊東計劃『ハーモニー』

よく日本には宗教がない、と言われる。つまり、ほとんどの日本人が無宗教だ(無宗教な生活をしている)と。そして、そのことに、日本以外の国の人は 不思議 に思う、というわけである。なぜ日本以外の国の人がそのことを「不思議」と思うかというと、そのこ…

諸星悠『空戦魔導士候補生の教官』

孔子の論語が興味深く、現代においても理解されるのは、そこに、「教える」側と「教えられる」側との諸関係の本質があると思われているからであろう。というか、この論語に「よって」、私たちはその関係を血肉とし、実践してきたと言ってもいい。そういう意…

三雲岳斗『ストライク・ザ・ブラッド』

このラノベの第一巻を読むと、ある程度、この作品の構造が分かるようになっている。私たちが作品を読むとき、結局その「リアリティ」を中心に読むことになる。つまり、つまらない作品というのは、それらの登場人物が「なぜ」そう振る舞うのかに 納得 を感じ…

山形石雄『六花の勇者6』

哲学者のヘーゲルを、カントの保守反動、つまり、バックラッシュとして解釈することは、ある程度、合理的なんじゃないのかと考えるわけだが、その場合、問題とされたのは、 現実的であることは合理的である という「現実法則」についてであった。こういった…

山形石雄『六花の勇者5』

人間には生きる本能があるという場合、それは、実際に進化論ではないが、こうやって人間が今に至るまで生きてきたのだから、それを疑う人はいないだろう、ということになるのではないかと思われるが、逆にこう問うてみることはどうであろう。つまり、 人間に…