派遣切り

今回の朝生は、ここまで、左翼的な、雰囲気で終始した回も、めずらしいのではないか。
今回の、派遣切り、の特徴は何かと言えば、その、各大手企業の、あまりの、横並びの対応だった、ということだ。
まるで、カルテルを結んでいるかのように、各大手企業が、同じ対応をとった。しかも、はっきりと現れているのは、現在の経団連トップ、の、トヨタ、キャノン、がまず率先して、行い、他が追随するという形になっている、ことだ。
実は、今年、という区切りでみるなら、各大企業は、どこも、空前絶後の、純利益を、あげている、という。
本当に、そこまで、一気に対応しなければならないほどの、体力がなかったから、とは、どうしてもみえない。
もともとやりたかった、人員整理、人件費削減を、この機会に、一気にやった、としか見えないわけだ。
番組では、その大企業の行動の原因として、大企業は、上場している、株式会社なので、株主の意をくんでやった、という一般論に終始した。
ここで、あの忌しい、ライブドアホリエモンの茶番劇が、再度、亡霊のように、繰り返されるわけだ。
朝生内で、堀さんが言っていたが、株主、いいでしょう。しかし、あんた、うちの会社の株、いつまで、もっててくれるんですか。5年ですか。10年ですか。それくらいもっていて、大事にしてくれるなら、意見も聞きましょう。あんたなんか、一瞬だけもってて、一瞬で売っちゃうんでしょ。なんで、そんな奴の言うことなんて聞かなきゃいけないの。
ホリエモンが、会社は株主の物と、断言したとき、ああ、こいつは滅びるな、ということが分かった。ライブドアの、ラジオ・テレビ局買収は、あれだけ騒がせておきながら実現しなかった。もちろん、その過程で、しこたま、もうけたらしい。しかし、そのことは、たんに、こいつが口先だけの金儲けだけをモチベーションにする動物であることを証明することにしかならなかった。だれも、こいつの言うきれいごとを信用しなくなった。
しかし、少なくとも、この茶番が失敗することは、最初から、明らかであった。一つだけはっきりしていたことは、ラジオ・テレビ局の職人たちは、ホリエモンをガンムシし続けていたことだ。ラジオ・テレビ業界の職人たちが誇りをもって行っている番組つくりに、まったくリスペクトがなかった。ホリエモンがそんな発言をしていたなんてだれも聞いたことがない。だれがこんな、ホリエモンみたいなアホの下で働けるか。
すべての人に共通した解釈は、ホリエモンが株主の奴隷を自称するような、ゴミだということ。または、そう自称しながら、自分の懐を潤わせることしか考えていない、二枚舌であること。だれにも信用されなくなった、ホリエモンは、政界への色気をだす。
ただ、今回の事態は、実は、日本社会の、もう一つの側面を示唆しているとも言える(それは、観客席で発言した、フランスの学生のものであったが)。
ようするに、日本は、昔から、同一労働、同一賃金、でなど、全然ない、ということだ。
昔から、学生のアルバイト、主婦のパート、を、「半人前の労働力」、というレッテルをはって、うまく使ってきた。最初から、ダブル・スタンダード、であったということだ。
この関係を都合よく忘れて、現在の状況だけを、うんぬんしても、説得力がないのだろう。
事実、番組は、居酒屋のワタミの社長の、株式会社による、農業への進出の野望が披瀝されていたが、あまり、NGO側は、乗り気でなかった。それは、農業そのものが、そんな簡単に、ビジネス・モデルにのるものでないことだけは、はっきりしているからだ。
しかし、である。最近発表があったように、日本の自殺が多い地域とは、大手製造業の、工場村、となっているような所であった。こういった、大手製造業で働く人に多い。これは、なにを意味しているのであろうか。
一つは、こういった仕事は、あまりに、特殊な作業であるため、多くの場合に、他の会社に行っても、役に立たない、というのがあるのかもしれない。また、単純作業も多いのだろう。
あとは、最近の、工場の海外進出の傾向のため、非常に不安定になっている、というのもあるのだろう。もともと、やたら商品が売れる時期は、人がたくさんいるし、売れなくなれば、やることもなくなる、そういう所なのだろう。
もう一つの理由は、心理的なもので、上記のような、大企業の「正」社員、というポストを、奪い取れる可能性があるように、つい最近まで見えた、というのがあるのだろう。だから、少々の条件の悪い仕事も耐えていた面もあったのかもしれない(多少、お金がよかった面もあるのだろう)。そして、そうすれば、自分の将来への「あがり」を実現できる。それを夢みていた人たちが、あまりに一気に、ほうり出され、その幻想を打ち壊されたことが、精神的なショックとなっている、ということなのだろう。