吉田戦車『伝染るんです。』

一時期、はやった、このマンガを、今、文庫で読んでみている。
このマンガは、文庫では、全五巻のようなのだが。
なんだろう。
第三巻の途中くらいから、なんとも言えないような、恐しい、強烈なインパクトをもってくる。
第三巻の前までは、言ってみれば、普通の、ギャク・マンガ、であった。おきまりの、おちを、ちょっと、エスプリをきかせた、言わば、「ねらった」ギャクであった。
そういう程度の、「笑い」が、第三巻の、途中くらいから、がらっと、変わってくる。
いったい、第三巻、くらいから、何が起きたのだろう。

立ち室。ボー。「お父さん 早く出てよ、学校 遅れちゃうじゃない!」ドンドン。「遅刻しやうよー!」「お姉ちゃん、先に立たせて!お願い!!」「ダメョ、順番ですからねー!」「お姉ちゃん、まだー!?」ドンドンドン。ボー。

「お前はわしが立ち直らせてみせる!」「じゃ父さんは ぼくが 立ち直らせてみせるよ。」「な、なんだと......」「ねえ母さん、いいでしょう。」「そうね、父さんだけ お姉ちゃんを立ち直らせるなんて ずるいわね。」「ぼく やるよ、母さん」「...ま、まこと......」

「キャ!」シュッ。カッ。「ペドロ君のリンゴ文だわ。」トオル君のパパは 17年前にトオル君をむりやりおどして、トオル君の父になったにちがいない。トオル君の父おやはやぱりミチーさんのような若い女性がいいと思う。ペドロより Pedorro「......ペドロ君。」じーん「ありがとう... 100人の味方を 得た思いよ。」しゃり

まだ、読んでいる途中だが、なんと言えばいいか、その辺りから、私がよく使う表現の、「言語的」になってきた、とでも言えばいいのだろうか。
多くのキャラクターは、これといった、人に突出した、能力や、才能があるわけではない。語ることは、平凡であり、普通に、人並みの、自己主張はする。しかし、総じて、控え目であり、自虐的で、内向的性格。
彼らが、たんたんと、語る、言葉は、普通であればあるほど、まじめに語れば語るほど、その「意味」が分からなくなる。なにをやっているのだろう...。
「変」なのである。
新しい教科書を作る会は、論敵に、自虐的というレッテルを貼って攻撃したが、彼らは、このマンガを無視するだろう。
自虐的とは、こういうことを言うのだ。

伝染(うつ)るんです。 (1) (小学館文庫)

伝染(うつ)るんです。 (1) (小学館文庫)