白井さゆり『欧州迷走』

ヨーロッパ。
ここは、ヘーゲルに言わせれば、世界の「中心」ということになるのだろう。思えば、日本の近代化は、岩倉使節団の、アメリカ、そしてその後の、ヨーロッパ歴訪から始まっている。
もちろん、ここは、日本と同じように歴史のある地域。多くの慣習と文化を継承して、現在に至っている。そしてそれは、アメリカ合衆国にしても同じだ。彼らの建国の主要メンバーは、ヨーロッパからの移民が構成した。彼らにとってだって自分の「ルーツ」をおろそかにすることなどできるはずがない。自分が例えば、ドイツ系移民であるとするなら、当時のナチス政権からの考察なしで、どうして今のアメリカ政治を考察できようか(第二次大戦大戦中、多くのドイツ系ユダヤ人はアメリカに「亡命」した。外国人排斥を訴える最近の日本のネトウヨも、いつか自分がそういう立場になると考えるなら、どうして簡単に排斥などと言ってられるだろう)。
しかしともかく、今のヨーロッパだ。この地域をどのように考えたらいいのだろう。もちろん、この地域の最近の大きなイベントは、EUと、
広域圏通貨ユーロ
の誕生だ。ところが、イギリスは今だに、ユーロに参加していない。ところが、そのイギリスの金融こそ、今、世界の中心的マーケットとして、流通している。
あらゆることは、バランスである。
そこには、なにかの力の均衡がある。
イギリスもそうだが、フランスとドイツは月とスッポンくらい違う。その違う国同士が、同じ通貨でやっちゃおうっていうんだ。そりゃあ、いつまでも仲良くケンカしてちょーだいってなもんだろう。
ドイツは輸出依存構造型経済ということでは、日本とほとんど同じ傾向をここ近年も見せている。ブリックスなどの成長に対して、同じく、賃金抑制を続けてきた。
しかし、バカでも分かるが、そんなに簡単に賃金を抑制できるなら、だれがモノを買うか。だって、いつお金が入ってくるか分かったもんじゃないってんだ。モノなんか買ってられっかよ(実際、ドイツは日本と同じく、高齢者の貧困層が目立ち始めてきた)。
ひたすら貯金だ。
貯金。それだけが趣味です。
しかし、言ったらわるいが、トーゼンだろ。非正規雇用を増やして、賃金減らして、いつでも解雇できるってなったら、だれがお金なんか使うもんか。こんなことバカでも分かるだろ。
しかし、国はそれじゃー困るわけだ。国民がケーザイカツドーしてくれねえから、税金が入ってこねーじゃねーか。公務員から、大学教授まで、このベラボーに高い給料を払えねーだろ。
そして、マスコミと一緒になって、国民に「お金を使え」の大合唱である。買え、買え、買え、買え。
こういう国が不況になるとどーなるか。まさに、ディプレッシブ社会。街を歩いても、幸せそーな顔してる人なんて、数えるほどしかいない。みんな、明日の食い扶持が維持されるかが心配で心配で。ただもう、下向いて、ウツーな感じでブツブツブツブツ...。
フランスは、とにかく、「解雇されない」。解雇するには、企業は「いや、どーしても解雇せざるをえんかった。ここまで、努力したんだけど」、ってこれくらい、政府に「誠意を見せないと」解雇させてくんない。「当たり前だろ。お前が、一生面倒見るって、迎え入れといて、なに今さら言ってんだ」。
そうなると、どうなるか。企業はとにかく、「人を雇わない」し、みんな「最低賃金」。労働時間もやったら短かい。どんどん失業者が街にあふれる。「しょーがねーな。失業者。当然仕事探しには、お金がかかるし、時間もかかる。この負担を個人にしょいこませておけるわけがない。みーんな政府がメンドーみるぜ。何年だって」。
こーなるよな。
やたらと、何年も仕事のない奴が、街にあふれてるけど、彼ら、全然キキカンなしで、相変わらず、ショッピング三昧。「俺が働けねーのは、政府の責任なんだから、見付かるまで、俺のメンドー見させてやってんだ。当然、働いてた頃の、生活レベルの維持がゼンテー。だって、俺が今働いてないのは、俺の責任じゃないんだからな」。
おいおい、フランス。
こんなんでいーのか、と思うかもしれない。これじゃー、社会主義だ(実際、大学は国立しかなくて、ほぼ無料。どんなエリートもだれも一度として「受験勉強」なんてやったことがない)。しかし、一つだけ言えるとしたら、この経済構造は「不況に強い」。
国民がディプレッシブにならないから、消費が変わらない(だってどんなに仕事がなくなったって、政府がメンドー見るってんだ。なんで「不況になったからって特別の」節約をしなきゃなんないの)、なにより、企業の設備投資が揺がないことだ。だから、なかなか、不況にならない(ある意味、ずっと不況だったから、そういった外圧に耐性ができてる、ってことなんですかね)。
ただ、逆に言えばそれって、そういう産業しか存在しない国、とも言えなくもない。ただ彼らがだからといって将来を悲観しているかは、そう簡単ではない。少なくとも一つ言えることは、フランスの国民の、知識レベルは非常に高いことじゃないか。基礎研究をよくやってる。そういう意味でなら、彼らは少しも将来を悲観していない。
ひるがえって日本は、なぜ、ドイツのように、一律賃金カットに向かわず、非正規雇用による、賃金カットに向かったのか。政治が弱かったこともあるが、バカでマヌケなパンピーが立ち上がらなかったこともあるのだろうが、マスコミ、政治家、企業幹部、(一部の)大学教授を中心とした、バカでマヌケなパンピーに対する「マインドコントロール」がここでも成功した、ということもあるのだろう。
よく考えてみると、日本は「民主主義国家」なのだ。国民がこんなの嫌だと思ったら、変わるのだ。みんな投票すればいい。
なぜそーならないか。エラソーな大人がお前は「バカでマヌケな田舎モノだから」、まともな思考回路ももっていない。頭のいい「エリート」(笑)高校をでて、いい大学に入った俺が、頭の悪いお前の代わりに、「どうすればいーのか考えてやるな」。お前らはおとなしく、「俺のユートーリ投票してりゃ幸せになるよ」。
ディプレッシブ社会において、学歴による「差別」「侮辱」を、生まれてからずっと受け続けてきた国民は、もううんざりなのだ、そういった侮辱をこれ以上聞きながら生きたくない。
こうやって、国民は、さ迷える子羊として、いつまでも「いい子にしててねー」。
もーいいよ...。親切ぶってんじゃねーよ...。頼むから、オレの勝手にさせてくれwww。
こうやって「バカでマヌケなパンピー」は、疲れを知らない「エリート」の国民マインドコントロールに疲れはて、世の中への関心を失っていく。
ジャパン・パッシング。
これが最近は、すさまじい。国内でさえ、ジャパン・パッシングだ。とうとう、日本人。日本人と話しをしなくなっちゃった。お友達は、海外にしかいない。
でも、あんた、これからも食べていかなきゃなんないんでしょ。これだけの経済規模と政治の安定を生かして、もうちょっとなんかやってやろうってないのかね。このまま、ジリ貧ですか。

しかし問題は、アジアで蓄積されている貯蓄の多くがアジア域内で投資されずに、米国と欧州を中心とする証券・金融市場へと向かっていることにある。
アジアで蓄積されたマネーがアジア域内で還流していない理由は、ドル(そしてユーロ)が世界の主要通貨であるというのも一因である。だが、それだけではない。米国そして欧州は世界最大の金融・資本を提供してきたことが重要なポイントである。
日本には米国に匹敵する大きさの債権市場があるが、国債が中心であり、しかも大半を国内投資家が保有している。社債証券化市場は欧米と比べれば小さい。株式市場でも外国投資家の保有や取引が増えているが、上場企業は圧倒的に国内企業が中心である。全体として日本の市場が提供する金融は増えているが、上場企業は圧倒的に国内企業が中心である。全体として日本の市場が提供する金融商品の種類や取引規模は小さい。アジアの国境を越えた銀行業務も欧米の銀行が圧倒的な存在感を示している。

やっぱり、そーだと思う。
やっぱり最後は、その「地域性」なんだ。
たんに、この地域の人たちがもっと、一緒に商売をやればいいわけだ。この地域でもっと、お金も仕事も回ればいいんで、みんなで、お金持ちになりゃいーわけでしょ。
日本も中国も韓国も、みんな自分の国民のお金が、この東アジアの外に行っちゃうから、「いつまでも貧乏なんでしょ」。
日本の国債って、実に、不思議だ。あれだけ、国債刷りすぎって言われていながら、なんの迷いもなく「日本の金融機関は買うんだよね」。なんか変だよね。ようするに、BIS規制などもあって、国内の金融機関は、お金余ってるのに、自己資本比率を保つために、国債を買う。そして国はそのお金で国民に福祉をやるんだけど、でもそれ、預金者、つまり、国民のお金ですよねー。これって、ようするに、「正規のルートを逸脱した」いわゆる一つの、国家総ぐるみの「福祉」ってことなんでしょ。
でもそんな裏ワザ、不健全じゃないですかね。いずれ、国民も気付くでしょうし。
なぜ、ユーロがつくられたか。この地域の人たちが、商売するのに、余計な中間段階をなくすため、ですよね。通貨が違えば、税金が発生して、通貨レートの違いによる、交換の費用が発生してとか、おんなじ地域で生きてるんですから、無意味でしょー。
ただ、明らかに、矛盾を抱えている。国民への福祉政策は各国でばらばら。どこも、それぞれ思惑を抱えているだけに、いつも口論が絶えない。
あんまり、借金しすぎたら、EU脱退してもらいます。EUの「おえらいさん」に怒られちゃった。そういうわけで、国民の皆さーん、我慢してねー。でも、それで国内の貧困層が泣くことになるなら、本末転倒だよなー。
でもね。
やっちゃったんですよねー、通貨統合。楽観的ということなんだと思う。
ひるがえって、この東アジア地域は、各国による、「デフレ」競争の、まっただ中だ。みんな、少しでも、自分の国は有利だと、値段を下げる。まさに、ユニクロヤマダ電気の価格破壊。いったい、どこまで行くんでしょうね。

域内で国際金融センターが形成されれば、アジアで蓄積された資金が還流する可能性が高まり、アジア全体の発展に寄与することになるであろう。そうなれば、アジアの通貨取引が拡大し、ドルへの依存が減っていくため、アジアでも通貨統合に向けた動きが現実味を帯びてくる。
だが、アジア各国はできるだけ迅速に国際金融センターを育成して世界的な競争に勝ち残ろうと、独自の優遇政策をとりがちである。たとえば外国から優秀なファンドマネジャー、金融機関、ヘッジファンドなどを招くために、法人税キャピタルゲイン税、利子所得にかかる税率を引き下げまたは免除している国がある。そのほか経済特区を設置して質の高いインフラを優先的に提供するなどの政策が行われている。
最近では欧州を中心にタックスヘイブンへの監視強化の動きが強まっていることから、資金がシンガポールなどの一部のアジアに流れているとのうわさもある。2008年3月3日付の英紙フィナンシャル・タイムズは「プライベートバンキング(富裕な個人や家族に提供される資産運用サービス)が伸びているシンガポールは、リヒテンシュタインでの税金払い逃れの調査によって大きな恩恵を受けるだろう」とのソシエテ・ジェネラルプライベートバンク担当部長の意見を掲載している。シンガポールは銀行守秘義務についての数年前に新しいルールを導入しているからである。2009年3月にシンガポールは国際基準に従って税情報の透明性を高めると約束している。
だが、シンガポール法人税率を2008年1月に20%から18%へ引き下げ、しかも税控除を拡大している。IMF(2008d)は、こうした行為は「経済決定にゆがみをもたらしており、国際基準よりもかなり低い実行税率(10%以下で、香港と並んで非常に低い)である。税によるインセンティブの供与を整理し、税の効率性を引き上げるべきだ」と提言している。これに対し、シンガポール政府は「国際的に税の競争環境が高まるなかで、必要な対策である」と反論しながらも、「税によるインセンティブを提供する前に、慎重な費用対効果の分析をする」と応えている。
アジアで世界マネーを取り込むべく優遇政策が過剰になると、各国間で競争が激化し、財政の健全性、各国間および投資家間で不公平性などの問題が起きてくる。この結果、優遇政策を採用していない国は企業、金融機関、投資家の撤退に苦しみ、税収も大幅に減少してしまう。税収の目減りを回避するために消費税や個人所得の税率を引き上げすぎると、一般消費者に負担のしわよせがいくことになる。この結果、アジア域内で相互に恩恵を高めるどころか、むしろマイナス面が大きくなる可能性もある。
EUでは加盟国内でこうした問題に対処するために、いくつかのガイドラインや指令を作成している。たとえば、「ビジネス課税に関する行動要網」では、法人税の実効的な課税水準が、非課税の場合も含めて加盟国で一般的に適用されている水準よりも著しく低い税率にすることは有害だとみなされている。

当たり前なのだろう。なんでも自由放任とやれば、各国、恐しいまでの競争を仕掛けてくる。相手の市場をぶっつぶせば、俺の勝ちだ。そのためなら「なんだってやる」。国民には、いったん、「地獄を見てもらう」。耐えさせる。でも、いつか勝つんだ、
俺たちの民族が。
アホか。そうやって、みんな死ぬんだよ。進化論も知らないのか。幕末の日本のように、みんながテロリストになったら、国家を維持できない。だったら、みんなでテロリストにならないような、「手打ち」をするしかねーだろ。
話し合って、ルールを決める。これが、どんなに難しくても、これしかねーって。みんな分かってる、戦略的互恵? だからそれが、面従腹背なんだって。

欧州迷走

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