NHKスペシャル「シリーズ日本と朝鮮半島 第2回」

今回の内容は、かなり重要な印象を受けて見ていた。
韓国は2008年、親日行為者財産国家帰属特別法を作り、戦中の親日派の粛清を行った。
今ごろである。
彼らの資産を没収し、戦後の決算を行ったわけである。
完全な遡及法である。
なぜこの時期かと考えれば、それは歴史的経緯を考える必要がある。終戦直後から、朝鮮半島は二つに分かれ、戦争を行う運命を背負うことになる。そういった混乱がやっと収まってきたのが近年ということなのだろう。
しかし、その内容は衝撃的であった。なんと、3.1運動、をまっさきに代表する英雄や、上海で、臨時政府をつくり、独立の憲法素案の祖のような、チェ・ナムソン、や、イ・グァンス、までがそのリストに含まれていたからである。
言わば、韓国を作った英雄である。
そういった理由については、番組はかなり詳しく説明していた。日本の朝鮮統治が、そもそも最初から、かなり暴力に頼った、強圧的なものであったことは言うまでもない。実際、自分もこのブログで何度も紹介した。しかし日本にとってみれば、別に、そのことに深い意味があったとは考えないのだろう。事実、世界の欧米による植民地も日本と同じようなものだったと彼らには見えたのだから。
しかし、それを決定的に変えていく動きが、世界中であらわれる。イギリスの、エジプトやインドの植民地は、ガンジーの運動などにより、一方的な武断が通用しなくなっていることを印象づけていた。
そして、朝鮮における、3.1運動こそ、日本の朝鮮統治を、決定的に変更させる事態であった。
日本は反省したわけである。世界の欧米列強の関係者に聞いても、3.1運動のようなことを続けていては、日本は袋叩きにあう、と言われる。
日本は、武断政治から、文化統治に転換していくわけですね。
重要なことは、「いい悪いは別にして」、ここで日本側の態度が変わった、ということなんですね。しかし、大事なことは、それが、朝鮮にとって、いいことなのか悪いことなのかの判断は別だということです。大事なことは、日本の方針が、違う方向になった、という事実です。
これから、日本は、朝鮮をかなり「日本人並み」に扱うこと、同じようなルールを適用すること、法においても、経済においても、教育においても、こういった方針を積極的に推し進めていきます。
この、日本側の中心的役割を担ったのが、朝鮮総督斎藤実でした。
彼は、なんと、朝鮮人の、独自の議会をつくり、つまり、「自治」を認める、朝鮮自治案、を日本政府に提案したというのです。
ところが、ときの、貴族院や軍人の「保守派」は時期尚早として、却下したのだそうです。
さて、また、保守派ですか...。いずれにしろ、このとき、自治が認められていたら、どういう光景になっていたんでしょうね。それほど変わっていなかったかもしれないし、分かりませんけど、重要なことは、現場にいた、彼がそれを「必要」だと考えて、ここまで実行していたことですよね。
もちろん、考えれば分かることですが、日本が朝鮮人の「ために」さまざまな援助を行う、彼らの国を近代化できるようにするために、日本並みに扱うということは、「今の日本のような状態にする」ということです。
つまり、貧困層と富裕層の拡大を、朝鮮内部に「日本人が」作ったような形になった、ということでしょう。
これは、どこの、「開発援助」でも起きていることと言えるのかもしれません。沖縄にしても、基地が来ることによって、多くのお金を懐にした人たちが実際にいる一方で、基地周辺の貧困層にとっては、その基地周辺の環境が、絶望的である限り、彼らには煉獄の日々が続くことしか意味しないのでしょう(ここからも、本来、具体的な対策をこうじられなければならないところには、なかなか手当てがされにくいんですね)。
もちろん、それ以降の朝鮮の歴史は、言うまでもありませんね。満州事変以降、世界の戦局は不穏さを拡大し、それと並行して、朝鮮政策も、創氏改名や皇国教育、とよりラディカルになっていく。満州国の建設や、その後の、日本軍のかなりの部分が朝鮮人によって担われていく歴史もあるわけですね。
正直に言って、どうも、日本の特に、知識人関係の人たちが、ほとんど、この朝鮮統治について、発言しないですよね。鳩山総理が、東アジア共同体構想を発表しているんだから、まず、明らかに、日本にとっての橋頭堡は、韓国でしょう。こことの関係を、これから、50年、どうするのか。
しかし、それを発言するには、どう考えたって、日本の朝鮮統治時代を、どう総括するのかの議論なしにありえないでしょう。
そう考えると、どうも日本の文化系知識人って、歴史を語ることを避けてますよね。自分が歴史の判断をしたくないんでしょうね。「それは自分の専門外」と言いたいんでしょうね。でもそういった認識なしに、政治を語れるんでしょうか? 今の日本の政治がどうあるべきかの議論なんてできるんでしょうかね?
明らかに、民主党マニフェスト民主党の「全て」の政策が、東アジア共同体とリンクしていることは自明でしょう。
もう日本国内のパワーバランスをどう操作するかで、とどまるような、冷戦時代の知識人はいらないんですけどね。いいかげん、この地域の経済発展とか、人の交流とかを、発言してほしいんですけどね。
そのために、まずやるべきこと。日本の朝鮮統治の総括なんじゃないですかね。それをどう考えてるのかの発言なしに、抽象的な「説教」をされてもね。