野口悠紀雄『消費税増税では財政再建できない』

日本の民主党の政治が、完全に財務省の口パクとなった今、通常のマスマディアを通した情報は、財務省政策を、ポジショントークによって、補強するような、
御用学者
しか呼ばれなくなってきているのだろう。
あらゆる学問は「なぜ」の、積み重ねであって、なにかがそうあるなら、そうした(選択した)行動が、どういった理屈の裏付けによるのか、を煩瑣なまでに、説明していく必要があるはずである。
その政策が、どれくらい、筋がいいのか(正当な学問的な考察フレームに準拠しているのか)は、全ての基本のはずであろう。
たとえば、なぜ近年、欧米で消費税が普及したのか。

インボイスは、多段階売上税にとって本質的なものなので、これを欠く消費税は欠陥税である。
インボイスは、取引段階で販売者から購入者に引き渡される書類である。販売者は、インボイスに消費税額を記載して購入者に引き渡す。購入者は、消費税額が記載されたインボイスがないかぎり、税務署に対して、前段階の税額の控除を申告できない。つまり、購入者から見ると、インボイスは「金券」のようなものだ。
インボイスは、多段階売上税において転嫁を確実にするために、不可欠の手段である。なぜなら、インボイスは金券なので、金券をもらいながらその分を支払わないわけにはゆかないからだ。したがって、インボイスがあれば、消費税分だけ売上価格を引き上げることが、現実取引で容易になる。
それまで、「間接税は前近代的な税」と評価されていたのが、インボイスが発明されたために、「付加価値税は現代的な税」と評価された。そして、ヨーロッパで広く用いられることになったのである。

業者は消費税の納税者ではあるが、本来は負担者ではない。だから、業者から税率引き上げ反対の声が出るのは、本来はおかしい。それにもかかわらず、現実には税率引き上げ反対の声が、消費者でなく業者に強いのは、転嫁ができない恐れがあるからだ。
インボイスがあれば、税額だけ納入価格を引き上げるのが容易になる」という事実は、一般には必ずしも認識されていない。したがって、インボイスの必要性を、弱小業者に啓蒙することが重要である。消費税率引き上げ前に、課税当局がまず行なうべきは、このことだ。

ところが、現在、検討されている、民主党口パクたちの消費税には、インボイスの検討という話は少しも聞こえてこない。
どうも変なわけだ。
消費税を福祉目的税化「する」と一国の総理大臣が、ネバーネバーネバーと、
やれるわけのない
ことを「約束」するわけで(そもそも、そのためには、消費税は30%にまで上げなければならないことが分かっているんですけど...)、
あー。
だめだ。
この国の総理大臣。
あまりに、口パクすぎて orz。
なぜか、復興財源を「恒久増税」化させようとしたり orz。
去年流行した、「ディザスター・キャピタリズム(惨事便乗型資本主義)」の、あまりにも典型すぎないんじゃないですかねー。すべて、
財務省の積年の念願(ポジション・トーク
を、311で、国民が動揺している「ここぞ」とばかりに、たたみ込んできている、と。
しかし、こういった方向が、日本の経済政策として、どこまで筋が悪いかを、まともに「諫言」する人が、数えるだけの、経済学者しかいない、ということなのでしょう。
消費税は、インボイスが必須であるだけでなく、生活必需品への減税も必須となる。つまり、かなり複雑な制度となることは、どちらにしても、まぬがれない。さらに、逆進性は避けられず、極端な税率の引き上げは、大きな
ライフスタイルの変更
を国民に強いてしまう(つまり、これを避けられないと考えると「希望を捨てる勇気」が必要みたいな、つまんないオッサンの脅しに忍従しろ、みたいな話になる orz)。
つまり、消費税が、あまり筋がよくないなら、そのオールタナティブを提示するのが、学者の役割ということになるだろう。

以上を考えれば、今後の課税対象をフローでなくストックに転換することを目指して、資産課税の準備をするべきだ。国税の範囲内で現在存在するのは、ストックそのものを課税標準にする資産税ではなく資産所得を課税標準にするフロー課税である。これを大きく転換する必要がある。日本は世界で最も高齢化が進んでいるのだから、外国の税制は参考にならないのである。

なぜ、国債が「危険」なのか。理屈から言えば以下となる。

第一に、国債の場合には、担保が存在しない。企業貸付なら企業資産があるが、国債にはそれに対応するものがない(建設国債であれば、社会資本があり、その生産力によって所得が発生するので、それに課税できれば償還財源に充てることができる。しかし、現在の新規国債の大部分を占める赤字国債については、こうした資産の裏付けがない)。
第二に、通常の貸付のデフォルトは、資産の一部が劣化することであり、資産のすべてが悪化するわけではない。しかし、国債は、償還期限の違いはあっても、「国の徴税能力を担保にしている」という意味で同一の資産である。したがって、国の償還能力に疑問が生じると、一挙に悪化する。このため、個別企業に対する貸付の不良再建化とは比較にならない大きな問題を引き起こすのである。

このように考えれば、国債を少なくできるなら、少なくした方がいいということに別に反論なんかないが、問題は、その
方法
であって、どのように国債を抑えていくのかの手段は、言うまでもなく、
支出
にある。なぜ、日本の財政が急激に悪化しているのかは、一言で言えて、つまり、
高齢化
による、「年金」などの「社会保障」の支出が増えているから、であろう。つまり、国の形が、昔の高度成長期の「発想」の頃のもの、そのままだから、まったく、現在の実情に合っていない、ということでしょう。
そもそも、本当に国が「社会保障」をやらなければいけないのかは、自明ではないはずである。

第一に、受益者がはっきりしているので、原理的には、料金徴収が可能である。司法、防衛、警察、一般行政などのサービスに対しては、料金を徴収しようとしても難しいから、公共主体がサービス供給主体にならざるを得ない。しかし、社会保障関連のサービスは、これらとは大きく異なる。
まず、民間の保険でも原理的にはできる。実際、年金、医療、介護のどれに対しても、民間の保険が存在する。したがって、現在社会保険として行なわれていることを、民間保険に任すことは十分考えられる。また、自助努力に任せるべき側面もある。
第二に、「外部経済効果」もほとんどないので、公的な補助を与える必然性もない。教育(とくに初等教育)は、教育を受けた以外の人もメリットを得るため(つまり、「外部経済効果」があるため)、公費で一部をまかなうことが正当化される。しかし、社会保障に対しては、そうした正当化をしにくい。
第三に、所得再分配機能を果たしているかどうか、疑問である。とくに年金保険料は、低額の保険料として徴収することを正当化しがたい。

日本の年金制度の筋の悪さは、あまりにも自明であって、若者が仕事がないっていうのに、その若者からむしりとって、お金があり余ってしょうがない、ジジババに、恵むっていうわけでしょう。
なんで、こんな制度になっちゃったんですかね。

それに、日本の年金制度は、最初から現在のような仕組み(現時点の給付を現時点の若年層が負担する仕組み。これは、「賦課方式」と呼ばれる)にするつもりでなかった。発足当初は、積み立て方式で運営していたつもりだったのである。保険料が低すぎたために、結果的に賦課方式になってしまったのだ。

だったら、今すぐ、止めましょう。と思うんだけど、ごめんなさい。止めらんないんですー。だってもー
行くところまで行っちゃってるから。
原発みたいだ。)

民営化するには、現在の公的年金清算する必要があり、このためには、これまで払い込まれた保険料を払い戻し、将来支払うべき額を現時点でまとめて支払う必要がある。しかし、それは不可能だ。現在の積立金で清算しようとしても、不足額が実に一〇〇〇兆円超という途方もない額になってしまうのである。日本の年金制度は「止めようとしても、もう止められないところまで来てしまっている制度」なのだ。

そりゃあ、そうですよね。みんな、くれるっていうから、払ってきたわけで。サラリーマンの厚生年金なんて、すごい額なわけでしょう。どっかの知事みたいに、(ついこの前出版した新書を)
あれ、忘れて
ってわけにはいかないですよねー。これは、本当にどうなるんだろうか。
たとえば、私たちは、毎日、なにかを食べないと生きていけない。ということは、エネルギー保存の法則からも、ある程度のカロリーをだれもが、かならず、摂取していると考えられますので、ということは、一日に食料がどれだけ売れるか、は、

  • なん人、国民がいるか

で、だいたい計算できる、ということになりますよね。すると、そのうち、外食をする人はどれくらいだとか考えると、街に、
食堂
がどれくらい必要か、が計算できるわけでしょう。つまり、人口が多くて、食堂が少なければ、どこも満杯になることで、別の店が新規開店することになる。
ということは、これを、各年齢層別の需要で考えると、子供が多い時代は、学校建設ラッシュになって、老人が多い時代は、
老人ホーム建設ラッシュ
になる、ということでしょう。老人の持病となりやすい、
老人病院建設ラッシュ
になる、と。つまり、日本のこの先の何十年かは、間違いなく、病院ビジネスや介護ビジネスが、日本の産業の主流になりそうなものなんだけど、どうもこの分野は、
タブー
のようで、日本の既存の企業も、この分野への参入に、それほど活発には思っていないように思える。
みんな自分が若いと思っているのだろうか。自分が老人相手の商売を始めるという実感がないのだろう。若者向けの、アイドルをずっと追いかけてきて、急に、老人向けになにかをやる、ということの意味を理解できていないのだろう。
でも、理屈からいくと、そういうことになるわけでしょう。
つまり、どうやって、エルダリー・ビジネスを、マネタイズしていくか。介護もそうだが、医療の分野こそ日本の
聖域
白い巨塔」であって、規制緩和の最後の「本丸」なわけでしょう。薬価問題にしても、医療問題こそが、21世紀の日本の趨勢を大きく左右しそうに思うのですが...。
とにかく、一つだけ言えることは、日本は、いずれはインフレになっていかざるをえない、ということだろう。なぜなら、耐えられないから。
じゃあ、どうするか。
その時に、備えるしかないんじゃないでしょうか。

現在の日本の財政赤字問題は、増税という手段では解決できない段階にまで達しているということだ。これを解決する手段は、インフレでしかあり得ない。したがって、それに備えた資産運用方法が必要になる。
だだし、この問題に個人レベルで対処することは難しい。最も望ましいのは、国がインフレインデックス国債を発行することだ。元本がインフレにスライドして増加し、実質価値が一定に保たれるものであれば、インフレが生じても実質資産価値を維持できる。

こうした国債が大量に発行されれば、国はインフレに陥らないような経済運営を強制されることとなるだろう。少なくとも、日銀引き受け発行を行なうことに、強い自制が働くだろう。インフレによる国民生活の破壊を防ぐため、インフレインデックス国債の発行を求める政治活動を起こすべきだ。

結局のところ、政治とは、さまざまなカタストロフィーを回避していく手続きそのものであって、そうした場合に、どうやって、
国民の同意
を獲得していくのか、ですよね。まず、正論があって、それに時代が対応していないなら、新たなアイデアを模索する...。
こういう定言をするのが、経済学者なんだと思うんですけどね(運命論なら、だれでも、説教できますしね...)。

消費増税では財政再建できない ?「国債破綻」回避へのシナリオ

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