橋爪大三郎『ジャパン・クライシス』

それにしてもよく分からないのは、どうして、私にとっては「自明」に思えることを、こういった「学者」さんが、こうも簡単に議論をミスリードしてくるんだろうか、ということなのだ。
もちろん、掲題の社会学者が本の対談の中で質問相手となっている、小林慶一郎なる経済学者が自らのポジショントークで、こういった「持論」を言うのは知ったことではないが(慶應大学という、お金持ちのお坊ちゃん大学の人が、こういったことを言うのは「当たり前」なんですかね)、どうしてこう、一応は社会学者を名乗って、いろいろと一般向けの本も書いてきたような人が、こんな

  • クズ

な議論を行うのでしょうかね。
やっぱり、マルクス主義の「緊張感」がなくなっている、ということなのでしょうね。この橋爪とかいう人はマルクス主義者ではないのでしょう。まあ、社会学者って「自分はマルクス主義者じゃない」と言うために使っている肩書みたいなものですからね。つまり、自分はマルクス主義者じゃなくて

だ、と。まあ、それくらいの意味しかないんじゃないですかね。なんなんですかね、社会学って。今だに、意味がわかんないんですよね。社会学っているんですかね。マルクス主義があれば、それでいいんじゃないですかね。違うんですかね。
つまり、私が何を言っているかといえば、「消費税」のことである。

橋爪 でもね、小林先生。よーく考えるとそこには、大きな大きな違いがありますよ。
財政再建なら毎年計画的に、時間をかけて税金を払い続けるので、まだ我慢のしようもある。ハイパーインフレは、死ぬほどの激痛をともなう、これが第一の違い。
税なら、その額をいくらかにするか、国民は説明を受けるし、自分の意見も言える。これに対してハイパーインフレは、意見も言えないし、そこから逃げる術もない。まったく民主的でない。これが第二の違いです。
第三の違いは、公平であるかどうか。税金なら、誰がどれくらい負担すべきかを、世代間の公平も含めて、検討することができます。課税対象も、所得、資産、消費、相続などの、何にどれくらい課税すればいいのか、議論できる。所得税は累進性、など能力に応じて公平に負担する仕組みを考えることもできる。これに対して、ハイパーインフレは、有無を言わさず、国民から無理やり、資産を奪い取ってしまう。
小林 これを債権者と債務者の関係で言えば、債権者からお金を取り上げて、そのお金を債務者に与えるのがインフレです。
橋爪 めちゃくちゃに、不公正じゃないですか。だって、四〇〇〇万円の住宅ローンを組んでマンションを買った人は、インフレで、事実上ローンを返さなくていいことになるのにひきかえ、老後に備えてこつこつ四〇〇〇万円の貯金をした人は、それがあっと言う間にゼロになってしまう。
小林 より堅実な生活設計をしていた人に対して、より過酷な仕打ちとなる。借金を重ねてばかりで、先のことをあまり考えずに暮らしていた人に対して優しい政策になってしまうわけです。

そもそも、なぜここで、「ハイパーインフレ」を問題にしているのか。それは、「国の借金」が増えすぎている、ということであった。しかし、もしもそれで「困る」と言うなら、まずは、国は自らがもっている「資産」を売りとばして、いったん、返したらどうであろうか。公務員の給料を減らしたらどうであろうか。そんなに「怖い」のなら、まず、それをやってみたらどうであろうか。なぜやらないのであろう。つまり、本気で「ハイパーインフレ」を恐れているのだろうか。
もちろん、なるべく国が借金をせずにすむような体質に変わっていくような政策が必要なことでは、だれも異論はないであろう。不要かつ不透明な特別予算などをなくし、官僚の天下りとなっている意味不明の財団などを廃止して、不要な支出を減らしていく手段は必要であろう。しかし、そのことと「ハイパーインフレ」とを結びつけることには、違和感がある。
そもそも、「ハイパーインフレ」は、さまざまな国際情勢や、マネーゲームによっても起きうるといった話であり、「国の借金」はその一つの「要因」にすぎない。つまり、どうしても違和感を覚えるのは、本気で「ハイパーインフレ」の不安から、こういったことを言っているのかは疑わしいんじゃないのか、というところなのである。
そして、その答えが、上記の引用の中の最初の小林さんの発言にあるように、ようするに、インフレはお金持ちが持っている「資産」の価値を目減りさせる、というところなのであろう。
インフレ傾向にあれば、国債の利子の「価値」が目減りするのだから、比較的に、国家はその返済を「軽く」できる。ところが、民間は帰ってくる「利子」の相対的な価値が目減りしているんだから、

  • 損をする

と、橋爪さんは言いたいわけでしょう。しかし、緩やかなインフレを目指す政策がそれほど、たちが悪いかどうかは、長年、日本の政治の課題が、デフレ対策だったことを考えても、(低所得の方には、物価が上がって大変ではあろうが)意見が別れるところであろう。
そして、こういった「発想」においては、ある種の

  • 差別感情

が露骨に現れているのが、上記の引用の後半であろう。ようするに、貧乏人は「さぼっていた」のだから、彼らが「生きるのが苦しい」のは、当然の報いだと言いたいのだろう。そのために、お金持ちの貯めた「お金」を、貧乏人に奪われるのは納得がいかない、と。貧乏な奴は、アリとキリギリスの比喩から、キリギリスのように「散財」の限りを尽した快楽主義者なんだから、彼らに人権なんていらない、と。
まあ、ようするに、貧乏な連中が貧乏で苦しんでいるのを、なんで助けなきゃなんないんだ、と言いたいんでしょ。
ようするにさ。
ハイパーインフレ」とか、どうでもいいわけでしょ。自分の資産が、インフレで目減りするのが許せない、と。なんで、貧乏人のために、俺の資産が減らされなければならないんだ、と。
まあ、ここまで「正直」だから、消費税なんですよね。

橋爪 消費税率を三五%に引上げた場合、国民の負担が増すのは当然として、それ以外に、何かまずいことが起きますか。
小林 われわれが購入している様々な商品が一律、三〇%値上がりするわけですが、日常品に関しては、それほど大きな負担にはならないのではないでしょうか。もちろん、日々の飲食代が三〇%値上がりすれば懐が痛みます。生活パターンは変えざるをえなくなりますが、中流以上の人なら、生活が破綻するほど深刻な事態にはならないでしょう。
橋爪 それは所得が三〇%ほど、目減りするのと同じですね。
小林 そうです。
橋爪 賃金の三〇%分カットを五〇年間、我慢する、みたいなことかな。
小林 ただ、消費税の負担は国民全体に薄く広く行き渡りますから、働く世代や高齢者など、特定の層に偏るようなことはありません。
他方で、懸念される点も幾つかあります。一つは、住宅や自動車といった耐久性の高い商品を扱う業界が、かなり冷え込んでしまう可能性があるということです。景気全体にもネガティブな影響があるでしょう。それともう一つ、消費税にはたしかに逆進性がある。つまり、低所得者ほど、食費など生活必需品購入費の割合が高くなり、税の負担感が増す。ですから、消費税を引き上げる時には低所得者に対する救済措置が必要です。
橋爪 アメリカでは低所得者に、フードスタンプ(食料クーポン)を配っています。このクーポンは高級食品には使えなくて、パンや小麦粉みたいな食材しか買えないようになっている。これはよい仕組みだと思います。

橋爪さんはどうも「消費税」を、「賃金の目減り」の比喩で、ずっと考えていたんじゃないのか、といった印象がありますよね。しかし、消費税はまず、その地域の産業構造を徹底的に破壊するわけでしょう。つまり、まずもって「雇用」が破壊される。つまり特に、若者の

  • 就職

が破壊される。ようするに、橋爪は大学教授なわけで、まあ、安定した職種なわけでしょう。公務員みたいなもので、採用されたら、定年まで一定の金額はもらえる、と(最近は大学教授も不安定な契約形態もあるようですが)。しかし、一般のサラリーマンだったら、リストラもあるし、そのたびに、契約条件が悪くもなる。なにより、消費税増税で景気はどん底に落とされるのですから、その上でまだ同じ額の仕事につけていると考えている時点で、まったくもって、上記の比喩はリアリティがないわけでしょう。
私が理解できないのは、消費税には「逆進性」があると言っているのだから、廃止以外ありえなくないですかね。どうも私は頭が悪いのでしょうか。どうして、

なんですかね。なんでこれで「トレードオフ」になると思えるんですかね。まったく意味が分からないんですよね。なんで「バラマキ」なんですかね。そもそも、消費税でお金をまきあげなければ「救済」という

  • ありがたくくれてやる

なんていう「上から目線」の対応をされなくてもすむわけでしょう。こういったレトリックって非常に多くないですかね。
つまりさ。
この本の本当の目的は、「消費税増税」なわけでしょ。これを実現する方法という目的から、ハイパーインフレとか難しい言葉で国民を脅しているわけでしょう。そもそもさ。どうしてハイパーインフレを防ぐのに、消費税35%でなんとかなるとか言ってるの。もしもこれを「完全」に防ぐというなら、そんなもんではすまないんじゃないですかね。マネーゲームで攻撃されれば、どんな財政状況だって、なんでも起きうる。しかし、そういった「不安」でさえも防ごうと「ボクノサイキョウノ国家」を目指すんだったら、いくらでも国民から税金を取らないと気がすまなくなる。これで十分なんていう上限なんてない。でも、橋爪さんは「安心」したいわけでしょう。自分の稼いだ資産を守りたい。まあ、一番のお勧めは橋爪さんにキャピタルフライトをしてもらうことですかね。この人自身が日本から逃げてくれれば、少なくとも

  • 日本に対する「不安」

から、この人は解放される。まあ、移住した新天地で同じようなことを言ってるでしょうから、この人の「病気」は直らないでしょうけどね。