アメリカとIS

日本の今の状況を考えるとき、安倍総理を中心とした勢力の暴走は非常に危機的なところまで来ている、という印象を受けなくはない。彼らの言うままについていったとき、日本の将来はアメリカによる泥沼の中東戦争に巻き込まれ、戦後の平和主義は終わりを迎えることになるのだろう、と。

春名幹男 アメリカはイスラム国の問題に至るまで、何度も失敗を重ねているんですね。一度目の失敗はやはり、2003年のイラク戦争だったと思います。これは非常に大きな失敗だったと思うんですが、イラク戦争をしたのは失敗だったとして主張して、出てきたのが、オバマ大統領で、2009年から大統領をしているわけですが、彼はイラクからの米軍撤退というのを公約に掲げたんですね。ともかく、撤退するんだと、いうことで、2011年の末に撤退したのですが、この撤退の仕方がですね、非常に杜撰だったと思います、つまり、一定の米軍を残す計画だったんですけど、要するに、地位協定の問題で、イラク側と話が合わなくなってですね、決裂しちゃって、それで、出てきたわけです、後先のことを考えずに出てきたんですね、そうしますと、イラクというのは、シーア派の人たちとスンニ派の人たちがこれまでも構想を繰り返して来たわけですね、スンニ派は少数派でして、シーア派は多数派で、選挙をやれば、シーア派が必ず勝つわけなんですね、それでシーア派が勝ってしかも、スンニ派を迫害するような政策を繰り返してきたと。
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イラク戦争のとき、イラクという国が宗派のバランスが難しい地域であることは、当時から言われていた。だからこそ、こういった地域に単純な「多数決」という「民主主義」をもちこんでは、絶対に安定しない、ということが言われていた。それは、ユーゴ内戦のとき、その地域の複雑な民族分布をそのままにして、「多数決」を行えば、絶対に多数による少数の弾圧が起きる、という意味において

  • 民主主義の限界

という形で語られていた。その当時の議論の流れを知っている人たちにしてみれば、時間が経ち、多くの人たちがこの地域への関心が薄れていった今ごろになって、まさか、ここまで、アメリカが

  • 無責任

な対応を行っていた、というのは驚きなのではないか。こうやったら、絶対にうまくいかない、と言われていたことを、楽観的にアメリカがやってしまう。つまり、まったく出口戦略がなかった、ということなのであろう。

春名幹男 少し違うと思うんですね。なぜかというとイスラム国というのは、元アルカイダ系の人ばかりで成立しているかというとそうではない、つまりなぜイスラム国が、国といい、地域的に面をですね、支配できるようになったのかというとすね、やはりサダムフセイン政権時代からの、バース党の幹部だとか、そういう連中が一緒になって戦ってるからなんですね、今あの、トップの、バグダディという容疑者がいるんですが、バグダディのナンバー2、ナンバー3、かなりの人たちはですね、元フセイン政権の幹部なんですよ、ここのところがですね、やはり今までのテロ組織とは違うんだと思います。
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よく思い出してほしい。アラブの春があり、つい最近まで、中東の問題とは、シリア内戦のことであった。ここにおいて、カタールやサウジが

  • 援助

していた勢力とは誰だったのか。まさに、アルカイダ系であり、今のISの中核を構成する勢力だったのではないか。
つい最近まで、膨大な武器や資金の援助を行っていた「勢力」が、この地域で「大きく」なり、そして、どんどん大きくしておいて、その後になって、たまたま、アメリカ人の捕虜の首を切る動画を流されたら

  • アメリカ国内の民意を無視できない

と、ここに至って、急に、ISへの空爆を始めるって、あまりにも場当たり的ではないか。自分たちで育てておいて、大きくなりすぎて、はむかってきたら、空爆って、一体、アメリカは何がやりたいのだろうか?
あまりにも、おかしくないか?
確かに、ISの恐怖戦略は、私たちの常識を外れていて、彼らのそれなりの勢力には、「過激派」として、現代社会との共存が難しいと思われるような「狂気」と呼びたくなるような要素があるとしても、だったらなおさら、

  • こういった勢力が「育つ」基盤に、さまざまな「養分」を与えていった

アメリカなどによる、あまりにもの、中東政策の「不思議」なまでの「バランスの悪さ」が、目立ってこないだろうか。アメリカは、こんなに頭の悪い人たちの寄せ集め集団なのか?

孫崎享 幾つかの物事を考える鍵は、9・11が起こって、それで、2001年、それで9月に、チェイニーとインタビューがあったんですね、で、チェイニーに今ここで、オサマビンラーディンの首が出てきたと、そうしたらこの戦争は終わるかと、こう聞いたんですね。で、チェイニーはいやそうではないと、この戦いは世界中、何十年もかけて、そうするんだと、ということを言ったんですよ、これが一体何かってんですね、後でここに戻ってきますけども、だから、一番の首謀者であるオサマビンラーディンの首が出てきても、戦争は終わらないと言った、ということですね。
次にまた、若干フレーズは変わるんですが、私がイランの大使をしていた時に、かなり重要な人が、アメリカから来てたんですね、国連関係だったんですけど、その人に私は、二人で夕食をとって、なんであなたたちは、ハタミ大統領を支援しないのか、これからイスラム社会との問題というのは、アメリカの外交にとって、あるいは世界の外交にとって一番大きい課題になるだろうと、その中でイスラム社会の穏健派、これとてを繋ぐということは、絶対にプラスなんだから、それの代表格は、ハタミ大統領だから、と言ったらね、彼はね、あなたの言うことは、もっともだと思うと、それは、アメリカの広い国い益ということを考えると、あなたの言うことはほんとに正解だと。しかし、今のアメリカの中東外交はそういう形で決まらない国になってしまっている。今、行なっている、中東を決めているような人たちの勢力、これがイランとの関係が回復して、それで経済関係ができて、ますます協力をしようというようになったら、この人たちの発言力はなくなります。
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孫崎享 どういうことかというと、その流れから言うと、冷戦が終わった時の世界秩序がどうなったか、と、これを考えてみたらいいと思うんです。冷戦が終わった時の米国の戦略は、ソ連というものがなくなったから、もう軍事はいらないだろうと、マクダマルが中心になって言うんですね。それに対して、いや、せっかく世界一になったから、これを捨てるのは馬鹿馬鹿しい、と、この世界一の力を使って世界を動かそうと、という形になった。そこで、じゃあ、敵は誰かって話になって、敵いないんですよ。作りだせ、と。そこで、不安定な国々、北朝鮮、イラン、イラク、こういうようなものが自分たちの敵であると。ところが、自分たちの敵だっていったって、彼らはアメリカに攻撃できるような力を持たないから、そうするとどうなるかといったら、まさに、プロアクティブ、我々の方からでている、という話になる、
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アメリカ「全体」ではないが、その中の

  • 一部

の勢力は、この中東が何十年も「戦闘状態」が続くように、

  • わざわざ

誘導している、ということになるのではないか? むしろ、その状態の「維持」がアメリカの「目的」だということの「臭い」を、この地域の人たちが皮膚感覚で分かってきているから、その地域の倫理の腐敗の現れとして、首切りや生きたまま人を焼く動画のような、世紀末的な意匠にさえ、突き進んできているのではないか。

孫崎享 それで、イランの話をしますとですね、1979年、80年にイスラム革命ができました、イスラム革命ができて、それが当時はイランの人たちも、このイスラム革命ができたものを世界各地に広げていくんだと、特に、湾岸諸国ですよね、ここに広げるということを言い、実際に、サウジとかそういう所に行動を起こした、大変に危機感をもったんですよね、じゃあ、それが、十年と時間が経つとどうなるかというと、ハタミが出てきたわけですよ、穏健路線の人が出て来たわけですよね、だから、もちろん、過激派が出てきた、過激派も基本的には拠点が必要なわけですよね、その拠点の人たちというのは、必ずしも過激なものを求めているわけではない、時間が経つと、多分、過激から習性されていくんですよね、っていうのが、少なくとも、イランの実行例であり、これがイスラム教です、イスラムの場所ですからね、だから、確かに今のイスラム国というのは大変で、これを排除しなければならないというんだけど、その排除の仕方というのはなにも、西側が行って武力でもって、解体させる、武力でもって解体させれば、ますます広がっていく、それよりはむしろ、十年なり、それの期間を置くことによって、自助で変えていく、そちらの方が、より蓋然性があるとおもいます。
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むしろ、私たちが進めるべきことは、こういったアメリカやイスラエルに「抗って」、非軍事的な非暴力的な中東の平和秩序、穏健派のイスラーム勢力の台頭を待ち続ける、ということなのではないか。徹底した、難民支援などの非軍事的な援助を徹底することによって、その地域の火種を少しでも少なくしていく。
つまり、そのことを「可能」にする条件は何かを考えていくことだ、ということである。そのためには、少なくともアメリカによる泥沼の中東戦争にまきこまれることは、日本にも中東にも、ためにならない。この一線を守った上での、外交を模索する、以前からの日本の中東における「中立」の方針の維持が必須とされているはずであるのだが、安倍首相が推進する、

  • 日米軍事協力

の方向は、まったく反対のことを、クーデター的にもくろんでいる、ということのようである orz。