今の状況は絶望的か?

今の国会の状況を見ると、安保法制もまったく、憲法違反の状況を改善して、合憲性を担保しようとしないまま、法案成立を与党の多数決で通そうとしている安倍政権の姿勢を見て、絶望的な気分に悩まされている人も多いのではないか、と思う。
しかし、私はそこまで悲観することはないんじゃないのか、と思っている。というのは、多くの自民党のOB議員が、この安倍政権の姿勢に批判的な姿勢を公の場で表明しているからである。
それは、この法律が参議院を通過して、法案として成立するかどうかということでは厳しい状況であることは変わらないのだが、しかし、政治とはそれだけではないと思っているからである。
例えば、今週の videonews.com で宮台さんは、これだけ安保法案の違憲性が言われながら、安倍政権の支持率が今だに、3割、4割であることには、ネトウヨ的心性の人たちの、「憲法残って国滅びるじゃダメじゃね」といった「ホンネ主義」による、という総括をしているが、私はそれは違うと思っている。それは、安保法制について、安倍政権の説明不十分かとの質問に対しては、まず、9割近くがイエスと言っているからである。つまり、この9割という数字は、この安保法制に「反対」の数字と考えていい。ではなぜ今だに安倍政権の支持率が一定以下に下がらないのかは、

が、安倍政権が「株価を彼らの責任で維持してくれる」と思っているし、大企業優先の経済政策を続けてくれる、という期待感が続いているから、

  • 安保法制がどうであれ、なにがあろうと、安倍政権支持派

というのが一定数いる、ということと考えるべきだと思うからである。これは、一種のバーターになっているわけである。
安倍政権の戦略は全て、このバーターだと考えるといい。安倍政権が、株価維持政策を続けていると考える限り、富裕層は、どんなに安保法制がムチャクチャと言われようと、我関せずで、安倍ちゃん応援でくるであろう。
アメリカは、この安保法制によって、IS戦争の荷物運びを日本に行わせるであろう。それによって、アメリカは「実利」を得るわけである。実際に、それによって、アメリカの税金の投入額を減らすことができる。
先般、山本太郎議員が、イラク戦争アメリカ軍が国際条約に違反して、多数の民間人の死傷者を生み出した経緯が詳細に語られたが、それにも関わらず、今の安倍政権は、イラク戦争の総括を行うことができない。第三者有識者会議を作って、一定のレベルのペーパーを作成することができない。ここに、アメリカと安倍総理の共犯関係がある。安倍総理は、アメリカの要望である、安保法制を成立させる、イラク戦争の総括を行わない。それによって、アメリカは、言わば、

  • 恩を受けている

わけである。この恩をアメリカは安倍政権に返さなければならない。それが、アメリカ政府による、安倍政権の「反民主的」であり、「戦前回帰的」な今の状況に対する「黙認」を、言わば、この恩の「対価」として返しているわけである。
新国立競技場は、安倍さんのパフォーマンスによって、ドラマティックに、ゼロベースの見直しが宣言され、工事はストップされた。しかし、これまでのいきさつをふりかえったとき、今回の工事ストップは、金額の高騰が示していたように、事実上、

  • 作れない

と、ギブアップをした、と考えるのが普通だと思っている。つまり、キールアーチに代表されるように、神宮の森の、あの狭い所に、この短い工期で、作り上げることは不可能だ、と工事関係者が判断した、ということだと思われる。
そもそも、2016年東京オリンピック誘致のときは、晴海埠頭に移転をして、巨大スタジアムを建設する予定であった。しかし、海に近く風が強いことから、ことごとく、陸上の公式記録が非公認になることが予想されて、移転を断念した経緯があった。
そもそも、である。
ザハ案のキールアーチは、デザインコンペの案では、それなりに、流線型で見栄えのする印象を与える「絵」であったがw、その後、JSCが「修正」して提示してきたデザインは、ネットのクソコラで、さんざん馬鹿にされたように、情けないまでに、かっこ悪い「ヘルメット」であった。多くの人が思ったのは、なんでこんな、かっこ悪い「ヘルメット」を、大金を出して作らなければいけないのか、ということであった。
そりゃあ、キールアーチといって、技術者としては、しかも、こんな神宮の森のような、狭い場所に実現できるとしたら、技術者魂をそそられる、チャレンジングな企画なのかもしれない。しかし、そんなことは、大衆にはなんの関係もない。むしろ、失敗して、大損をかいたら、どうしてくれるのだと。地震で木っ端微塵になったら、どうするんだと。
そもそも、場所が悪い。ここ、神宮の森は、明治天皇に「ゆかり」のある場所で、いつまでも、国民の争点にして「騒がしく」しておける場所ではない。
おそらく、これ以上、政府は「もめ事」を深めて、ぐちゃぐちゃといつまでも続けることはできないと思っている。なんとかして、国民の多くの意見を反映した、誰もが合意できる所を、意見を集約して、実現しようとしてくると思っている。
そもそも、なぜこんなにダメダメだったのか。それは、晴海埠頭に最初はつくろうとしていたことが象徴している。つまり、ゼネコンはこれ幸いと、たんに競技場を作るだけじゃなくて、この競技場を中心として、ビックプロジェクトにすることで、大儲けをしたいわけである。たんに、競技場ができるだけなら、たいした儲けじゃない。この競技場を中心として、その周辺一帯を、

  • 再開発

することで、エンドレスに終わることのない、大土木工事にすることで、死ぬまで、くいっぱぐれることがなくなるくらいに儲けたいわけである。そこまでしないと、政治家に大金をキックバックして、デザイナーに大金を払って、それでも、土建屋がうっはうっはに儲かる開発にならないわけである。
キールアーチは、もはやザハのデザインとなんの関係のない、たんなるヘルメットになってもやらないわけにはいかなかったのは、その屋根の天井に、さまざまな施設を裏側に作ることの「儲け」が捨てられなかったから、というわけであろう。
彼ら、土建屋は、晴海埠頭をあきらめたとき、なにを考えたか。この、神宮の森を、

  • 全部壊して

セカイ中の「どこにでもある」ショッピングモールを、作ることを画策した。彼はら明治天皇にも関係の深いこの神宮の森を、すべてなぎ払って、しょーもない、つまらない、ばかばかしい、ただのショッピング街に変えようとした。その象徴が、キールアーチだったのであり、この神をも畏れない、おそるべき、金の亡者によって、東京は破壊されようとしていた。
ネットでは、デザインコンペでの伊東氏のデザインで、新国立競技場は作られるのではないかと噂されているが、一つだけ言えることは、ここで多くの人の関心の的となってしまっては、彼ら金の亡者の草刈り場には、もう、することはできないのではないか、と思われる、ということである。
同じことは、安保法制にも言える。
まず、そう簡単に参議院の議論は、安倍政権の「思い通り」の議論にはならないであろう。彼らには耳の痛い議論が続くはずである。そして、その先を考えても、自民党総裁選挙があり、来年には参議院選挙があり、もしもそこまで安倍政権でひっぱることで、自民党の大敗を国民が実現できるなら、まずこの安保法案の国会承認が、参議院で通らなくなることで、事実上の「空文化」を実現できる可能性がある。もちろん、それと平行して、各地で違憲裁判が行われるであろう。もちろん、その後の衆議院選挙で野党が過半数を実現すれば、政権交代となり、そこでの最初の仕事は、この法律の破棄、以前への差し戻し、となるはずである。
しかし、その前にも、いろいろなことが起きるはずである。まず、自民党の来年の参議院選挙の立候補者たちは、もしもこれを安倍政権の下で戦わなければならないとしたら、相当に厳しい選挙戦になることが予想されるわけであろう。そこから、かなり早い段階から、安倍政権からの離反が始まる可能性がある。そして、その動きを、ある意味で「後押し」することになるのが、最初に話した

たち、ということになるであろう。安倍の「カリスマ」は、いくらなんでも彼がこの先、何十年も政権にい座ると考えることは現実的ではない(というか、国民が許さない)。しかし、そうだとするなら、そもそも、安倍の意志を継いで、国民を牽引するようなカリスマがどこにいるであろうか? 私はこれは簡単なことではないと考えている。もちろんそれだけで、今の絶望がまぎれるというところまではいかないだろうが、少なくとも、まったくの絶望を未来に見なければならない、とまでは言えないのではないか、と考えるわけである...。