TBS報道特集が報じた安保法制

9月5日のTBSの報道特集の内容は驚くべき内容であった。去年、防衛省が用意した、防衛大臣用の想定問答集が、今回の安倍総理が言っている内容と整合しない。つまり、今回の閣議決定はまったく自衛隊と相談せずに、内閣だけて決定した、と言うわけである。
先に内閣でだけで、閣議決定をして、その後に、自衛隊に決定を下ろしてきたのではないか、と。
この想定問答集では、今安倍政権がさかんに言っている集団的自衛権の根拠としての砂川事件最高裁判決について、その研究にそれを直接の根拠として進めない、となっているというのである。また、問答集では専守防衛を堅持する、となっているのだが、そもそも、専守防衛アメリカが攻撃されたら、日本がアメリカを助けるために戦闘に参戦するというのは、まったく両立しない。
つまり、より詳しく分析するなら、中川大臣や統合幕僚長という非常に一部の防衛省の上層の上澄みが、内閣とグルになって、勝手にふわっとした内容の法案を決定しているだけで、実際の内容に防衛省は関係していないんじゃないのか、ということになるであろうか。
つまり、どういうことか。
防衛省内部で、まったく、つめた議論が、今回の内閣主導で説明されている内容に対して、行われていないんじゃないのか、というわけである。
本当に、こんな法律を今のまま通過させていいのだろうか?
それは、日本の国民として、憲法違反の法律だから、というだけでなく、実際にこの法律に基いて、防衛省自衛隊によって行う活動が、十分に現場の事情を考慮したものになりうるのであるのか、ということなのではないか。
なぜ、国会の審議はあのような、非常に不自然に内閣の説明が、奇妙奇天烈な内容になるような事態になっているのか。まったく、現場のリアリティと関係なしに、内閣側が「アメリカが言っていること」を慮って、机上の空論で、適当なことを言っているから、それが実際の自衛隊の現場のリアリティと、まったく整合しなくなっている。なのにそれで、内閣がおし進めようとしている。
もともと、ろくに現場の関係者と議論をつめていないから、その場その場で、場当たり的なことを、内閣は言っている。
これは、大変なことになってきていないだろうか?
もともと、安倍総理は、戦後レジームからの脱却として、今度の安保法案の内容が、まあ、個別的自衛権の範囲で行える内容であったにも関わらず、なんとしてもこれが

  • 憲法解釈の変更としての、集団的自衛権の容認という日本の戦後の歴史の一大改革を自分が成し遂げた

という歴史的偉業にしたがっている。つまり、憲法違反のことが、今回のことを奇禍として、なんでもできるようになったんだ、と安倍首相は宣伝したがっている。他方で、アメリカからの「相応の負担」を求められている、という文脈もある。
こういった状況を総合して、内閣と防衛省の上層の数人の「上澄み」だけで、今回の法改正を、クーデター的に突破しようとしている。だから、防衛省の実質的な活動部隊が作成した、リアリティのある、

  • 想定問答集

と、安倍首相や中川防衛大臣の発言が、まったく整合性がとれなくなっている。
これは、大変なことになってきていないか?
伊勢崎さんが前から言っているように、自衛隊は軍隊じゃないから、軍法もないから、自衛隊がもしも現地の人々を皆殺しにしてしまった場合に、その自衛隊を裁く「法律」がない、ということから始まって、さまざまな「矛盾」が、もしも、この法律に基づいて運用したときに、起きてくるのではないか。
というか、防衛省の現場のかなりの割合は、この問題の「リスク」に実際に気付き始めているんじゃないか。つまり、どういうことか。自衛隊の、かなりの割合の人たちが、今回の法律に「反対」しているのではないか。そして、そのための、それなりの「行動」を、おおっぴらにはできないけど、行っているのではないか。そして、その一端が、共産党内部告発として発表している、リーク情報としての内部文書にあらわれているのではないか。
つまり、

の、かなり緊迫した「かけひき」が実際には、私たちの見えないところでは起きているのではないか...。