改憲論者とは何者か?

いわゆる「改憲論者のパラドックス」というものがある。どういうものかというと、

  • もしも改憲が民意なら、改憲論者が改憲すべきと言わなくても、勝手に改憲されている。もしも改憲が民意でないなら、いくら改憲論者が改憲すべきと言っても改憲されない。よって、改憲論者の「改憲すべき」という主張は無意味である

ということである。なぜこういうことになるのか? 言うまでもない。改憲を行う場合のルールが憲法に書いてあるからである。つまり、国民は改憲論者に言われるまでもなく

  • もしもそれが必要ならば

勝手に憲法を変えていた、ということなのである。事実、大日本帝国憲法は敗戦を境にして、日本国憲法に「変えられた」。
このように考えたとき、そもそも、「改憲論者」とは何者なのか、という疑問がわいてくる。
普通に考えて、この世界の今のルールはどこか間違っている、または、自分が考える理想とは違っているから、それを理想に近づけていくための第一歩として、この国の憲法の一部を変えるべきなんじゃないのか、と言われることは、まあ、理解できなくはない。
しかし、私が理解できないのは、自称「改憲論者」と呼ばれる人たちが、

  • なぜ「改憲しなければならない」と言うのか

にあるわけである。それには、おそらく、今の憲法では、なんらかの「瑕疵」があるから、なのであろう。だとするなら、自らが考えるその「理想」をこそ、まず語るべきではないのではないか?
不思議なことに、世の改憲論者は、そうせずに、「護憲と言っている奴は頭がおかしい」と言っているにすぎない。憲法には変更してもOKというルールがあるのに、変更しようと言わないのはおかしい、というわけである。
しかし、そういう意味なら、この日本に「護憲論者」という人はいないことになる。なぜなら、私たちはこの憲法に従うべきだ、と言っているのだから、憲法に従って改憲することは憲法に反することにはならないからである。
ここで問われているのは、

  • なぜ改憲しなければならないのか

という、改憲を主張している人の「動機」の方なのである。

  • 日本人は冨の平等を実現するべきである。だから、それを実行に移すための、国民的合意を獲得するために、憲法にその意志を明確にするために書こう。
  • 日本に原発は危険だから、二度と日本に原発を建設させないために、憲法にその意志を書こう。
  • 日本は世界平和に貢献すべきだから、軍隊をもって、徴兵制を行って、世界の紛争地帯に日本人を送りこんで、現地の困っている人を助ける「奴隷」を、国内の国民から調達しよう。

まあ、理由はなんだっていい。つまり、

  • 「これ」を実現するためには、憲法を変えたければできない(または、やることは難しい)。だから、憲法を変えよう

と言うのなら分かるわけである。
憲法を変えることで、なにを実現したいのか。それは本当に憲法を変えなければできないのか。
ようするにさ。
憲法を「変えて」どうしても、やりたいことがあるんだろ。だったら、それはなんなんだよ、と聞いているわけである。どんな理想を、憲法を変えることで実現したいの? その理想をまず語れよ。本気で、自分の人生を賭けるくらいの覚悟で訴えろよ。だって、本気でそう思ってるんだろ? だれがなんと言おうと、そうすべきと自らの内面から、ふつふつと湧き上がってきている実感なんだろ。
だったら「それ」を言えよ。憲法がどうのこうのとか関係なく。
つまりさ。
その理想が国民にとって同意できるものであれば、

んだよね。別にあんたが憲法をどう考えていようと、国民が「言われなくても」、憲法を変えますから、心配しないでくださいな(だって、憲法には変えたいときに変えられる「ルール」が書いてあるんですから、国民が変えたいと思っているのに、それを利用しないわけがないんですから。まさか、日本国民のくせに日本憲法を知らない人なんて、いるはずないんですからw)。
憲法を変えるべき、なんて言わなくていいですから、自分が考えるその「理想」だけを語ってくださいな。
というかさ。
多くの人には、なにが言いたいか分かってらっしゃると思うが、ようするに世の憲法改正論者って、なぜ憲法を変えなければならないと、その人が考えているのか、を「本当のところ」は言わないんだよね。つまり、そこのところを「ぼかして」いるんだよね。
というか、彼らって、そもそも「理想」がないのだ。理想がないのに、なぜか「憲法は変えるべき」っていうのだけは決まっているんだよね。
ようするに、どういうことか?
まあ、安冨歩さんの言う「立場主義」だよね。つまり、自分は改憲論者という「立場」なんです、と言っているだけなんだよね。つまり、東大話法。だいたい、こういったように、直接、自分の思いを訴えない。なんか、話を迂回させて、まわりくどく、くねくね言っている人というのは、ちょっとインテリに多くて、警戒が必要ってことだと思うんですね...。