林トモアキ『ヒマワリ:unUtopical world』

主人公の、日向葵(ひゅうがあおい)、別名「ひまわり」は、女子高生でありながら、、完全に「ひきこもり」生活をしている。学校に行っていない。四年前。ある、テロ事件で、養子だった自分を育ててくれていた父親を亡くしてから、彼女は

  • 壊れて

しまった。
まったく学校にも行かず、日がな一日、部屋に閉じこもって、日中は寝て過ごし、ネットやテレビゲームをし、一日を過ごす。
そんな彼女がめずらしく、夜中にラーメンを食べに外出をしたとき、ある「場面」にでくわす。それは、一種の

  • ゲーム

をしている場面であった。そのゲームの参加者は、それぞれ「戦い」を行い、勝つと、相手から「ポイント」を奪う。そして、そのポイントを稼いでくことで

  • この世界を統べる

権利を得ることができる、とされている。つまり「世界支配」を行える、というわけである。無差別のバトルゲーム「ルール・オブ・ルーラー」。ひょんなことから、「ひまわり」はこのゲームの参加者となり、次々と強敵を倒していくことになる。
亡き父親が教えた「護身術」なるものだけを武器に、毎日部屋で寝て暮していた彼女が、次々とバケモノのような連中を倒していくというのは、あまりにも、ラノベ的なぶっとんだ設定であるが、問題はそこにあるわけではない。

「......私もあの日、......知っている人が。たくさん死んだんです。私は、それからダメになりました。何もできなくなりました。今じゃもう、学校にも行けなくなりました」

確かに、この作品の設定ではそれは「テロ」となっている。しかし、このインプリケーションは間違いなく、3・11の「津波被害」であることが分かるのではないか。多くの友達が、津波にのみこまれて死んだ、女子高生の彼女は、その日

  • 壊れてしまった

のである。学校に行けなくなってしまったのだ。
そんな彼女の前に、ある「ゲーム」が提示される。つまり、そのゲームに勝てば

  • この世界を統べる

ことができる、と。彼女は考えるのである。もしも自分がこの世界を支配できるとするなら、「どうしたい」のか、と。
日がな一日。学校にも行かず、不登校を繰り返し、「ひきこもり」の毎日を送っている彼女は、学校にも行かず、家の鏡に写る自分を見て、「お前が、もしもこの世界を支配できるとするなら、<どうしたいのか>」と問いかける、わけである。
だめになった自分。しかし、その彼女が、もしも「この世界」を好きなようにできるとしたら、どうしたいのか、と考える...。