明月千里『最弱無敗の神装機竜4』

ラノベやエロゲにおける、いわゆる「ハーレム」展開は、まさにそれが、この問題の本質であるかのように一般的になった。
たしかに、男性向けとして作成されるラノベやエロゲにとって、魅力的な女性の登場が読者の作品への興味をもたらす、と考えることは一般的なわけである。
しかし、他方において、男の主人公が美女軍団に一方的に「ちやほや」される展開に対して、読者に「いやみ」に感じられないために行う「設定」には、幾つかのテクニックがあるように思われる。
残念系と呼ばれるものでは、そういった少女たちが、どこか「だめ」であることが、「だめ」と判断される、ある特性をもっていることが、この問題を相対化させる形になっているわけで、まあ、これはこれで傲慢な話だと思うが、まあ、成立している。
他方、掲題のラノベにおいては、ある「迫害される同士」といった特徴が、この問題を緩和している。
日本という国において、そもそも、雇用機会均等法によって、女性の雇用における「地位」の平等が、実質的に行われたのが、1999年だったことは、驚きなわけである。もちろん、それ以前から、実質的な運用において、男女が平等に扱われることが行われていたことは確かであるが、逆に言うなら、そのような「運用」すら行われていなかった以前は、女子アナは30歳定年を前提に採用されていた。女子アナですらが、ことほど左様だったわけなのだから、あらゆる分野で、女性は迫害されていたことは間違いないわけであろう。そう考えるなら、戦前の女性たちが「銃後の母」として「活躍」した、などというのは

  • どういった「条件」での活躍だったのか

をよく考えた方がいいと思うわけである。
しかし、そんなふうに言うなら、日本は、今だに、労働契約に関する幾つかの人権国際条約を批准していない、と言うではないか。そういう意味では、まったく「奴隷」というのは過去の話ではない。それは今も続いているわけである。
そもそも、「イエ制度」と呼ばれているものがあるが、そこにおいて、家庭の中での女性の立場は確かに弱い。しかし、そういう意味で言うなら、次男以下の男の子供たちも、「なんの権利もない」わけである。その家を継ぐのは長男である。つまり、長男至上主義であって、「イエ」の財産を継ぐのは長男であり、すべてを長男が相続する。いや、そうしなければ

  • イエ

などというものの、「巨大な図体」を何世代も維持できるわけがないわけである。
例えば、つい最近、高市総務大臣が、放送免許を取消を政府は必要に応じて行う、といったことを明言したが、この問題の重要さがまったく認識されていない。普通なら、こんなことを言っている大臣は、国民の声によって、さっさと議員辞職にまで追い込まなければならない。憲法には言論の自由と書かれているのだから、こんなことを政府にさせてはならないわけである。
ところが、こういったことを言い始めると、高市大臣は「女性」であるから、彼女ばかりが攻められる、といった「小保方問題」のときの女性差別のような議論が再燃する。しかしね。「小保方問題」は、そもそも、「STAP細胞」というサイエンスにとっても「大きな話題」だったから、「小保方問題」となったんじゃないのか。それは、女性だったからと、関係ないだろ。
つまり、何が最優先事項なのか、ということなのである。明らかに、今の最も重要な問題は、高市報道問題であろう。これを、そのままにしておいていいのか。これ。非常に重要なわけでしょう。小保方さんは、これから、いくらでも名誉回復すればいいけど、高市のこの発言を、今のまま、素通りしたら、とんでもない国に、日本はなってしまうわけであろう。
なんで、女性たちで、この高市を大臣の座から、ひきずり降ろそうという運動が起きないんだろうね。明らかに、今の安倍政権は、「女性」が、なんらかの意図で、シンボルにされている。つまり、今までの

  • イエ制度的なものの「擁護」の立場の女性

を、ピンポイントで一本釣りしてきて、大臣にしている。なんだろう。このままでいいんだろうか? 今の女性大臣で、女性の人権拡大に寄与してくれそうな人って、一体いるんですかね?
なんかがおかしい。
ようするに、日本の女性は「男にこびている」んじゃないのか。「小保方問題」批判にしても、自殺した笹井さんは奥さんに、生前、「彼女は才能がない」と何度も言っていたわけでしょう。じゃあ、どうすればいいの? 小保方さんがもう一度、理研に採用されれば気がすむの? 大学院の学位は復活されれば気がすむの? なんでもいいけど、

  • 男たちも「小保方並みの処分が徹底されるまでは許さない」

と言うんだったら、科学の世界の自由性に逆行するんじゃないですかね。小保方さんが今、科学コミュニティから「はぶられている」のは、単純に、彼女を受け入れようという科学者仲間がいないから、でしかないわけでしょう。なんで、彼女を擁護しようという科学者があらわれないの? なんで彼女には科学者「友達」がいないの? そうやって怒っている人たちは、自分たちでお金を出しあって、彼女に研究を行える環境を用意してやればいいだけなわけでしょう。
少し脱線してしまったが、掲題の本に戻ろう。
主人公の少年は、旧帝国の第七皇子であった。しかし、クーデターにより、今は別の王国に代わっている。主人公の少年が生かされているのも、恩赦によるものにすぎない。ひょんなことから、彼は、ある高貴な身分の女性たちで構成されている女子高校に入学することになる。
まさにハーレムである。
男子生徒は彼一人。あとは全員、JK。まあ、女子校なんだから、当たり前ということになる。
しかし、ここには一つ、私たちの社会と違うところがある。それは、この社会が徹底した

  • 男尊女卑

だということである。早い話が、JKたちには、自分で結婚相手を選ぶ「権利」はない。上記の「イエ制度」を考えてみてほしい。そもそも、家の財産は、夫であり長男のものである。よって、娘は、

  • 夫や長男が「誰」と結婚させるかを決める

なにかでしかない。普通に考えて、夫や長男、つまり「イエ」の財産が増える相手と結婚させることが、基本的な、最初の命題となる。つまり、この命題さえ成立すれば、JKたちに拒否権はない。どんな嫌な男でも、家が「そいつと結婚しろ」と命令されたら、それに逆らえない。
しかし、そのことは、この作品にでてくる高貴な身分の男たちは、みんな分かっているわけである。女は「どんなに侮辱的に扱ってもいい」。なぜなら、女は自分たち「イエ」の財産なのであり、それに忍従しなければならない立場だから。

「お前はバカだな。適当なヤツになすりつけるんだよ。ちょうど、うちに客人の子が何人か来てただろ?」
「----あのアイングラム家とかいう商家の娘が、ちょうどいいんじゃないか?」
「.....!?」
ラグリードが告げたその一言に、ルクスは一瞬、頭が真っ白になる。
表情が反射的に引きつり、同様に声が上擦った。
「そんなことが----あっていいのですか?」
「あいつは皇族でもないし、所詮は女だろ?」
バッサリと切り捨てたアベルの一言に、ルクスは絶句する。
「俺の家より金持ちなんで、目障りだったからちょうどいいぜ。おまけにあの女、無口でぼーっとしてるし、声をかけてもほとんど反応ないし。きっと馬鹿なんだろ。騙すのにうってつけじゃねえか」
「ああそうだ。ちょうどいい、いいときに来てくれたもんだ。おいラグ、適当な理由を作って、アイツをここへ連れてこい。きっと中庭にいるはずだ」
アベルの命令に頷いたラグリードは、笑みとともに走り出す。
何も知らないフィルフィに、罪を着せるために。
「そんな、そんなことって......」
「なんだ、ルクス。お前、一番下の弟のくせに、俺に逆らうのか?」
アベルが睨み、恫喝の声を出す。
「だけど、こんなこと.....」
「はっ、お前は何もあかってねえな。いいか。この帝国じゃ、女なんてものは道具なんだ。男である俺たちに尽くし、子供を産み、気分をよくさせるのが女の役目だ。しかも相手は皇族じゃねえ、ちょっと金持ちなだけの子供だ。これくらいのこと、何でもないさ」

高貴な家の、JKたちは確かに、召し使いたちによって、綺麗なオベベを着せられ、いかにも裕福な身分といったような格好をしているが、そういった意味では、もう一つの

  • 奴隷

に過ぎない。つまり、「夫の奴隷」なのだ。
彼女たちは、この女子校を一度、卒業した途端、高貴な身分の男の「妻」として「売られて行く」わけで、彼女たちが唯一、自らの「自由」を感じられるのは、この女子校にいる間、ということになる。
なぜなら、この女子校には「自治」があるから、である。
この女子校に所属している限り、男たちも、容易には介入してこられない。
こうやって書いていて、まるで、今の日本のようではないかw
ルクスは、旧帝国時代の子供の頃も、一番下の兄弟として、兄弟からもハブられ、父親からも嫌われ、母が亡くなった後は、人間不審を生きてきた。そんな彼が、この女子校で受け入れられたのは、そういう意味においても、お互いが、この社会から「迫害されて生きている」といった、同士的な感情があるから、と解釈できるであろう...。