サウジアラビアという国

私たちは結局のところ、忘れてしまっているようだが、日本は戦争に負けたわけである。そしてどうなったかというと、アメリカに占領されたのだ。それが、戦後の出発だったわけであり、そのアメリカと日本のまあ、今の自民党に連なる連中が、一緒になってこの日本を支配してきたというのは、明治維新において、薩長とイギリスやアメリカが一緒になって日本を支配していたというのと、実質的には同じことなのだろう。
そう考えると、日本はアメリカに似ている。というか、アメリカの構造は日本の構造でもある。
例えば、videonews.com で、高橋和夫という人がサウジアラビアの問題を論じている。
今、アメリカは劇的なイランとの和解を進めていて、イランが国際社会の表舞台に復帰してきている。すると、何が起きているかというと、イランの「石油」が世界市場に入ってくることになる。アメリカのシェールガス革命と連動して、世界はエネルギー過剰供給の時代に入ろうとしている。
そこにおいて、サウジアラビアの立場が微妙になってきている。イランは言うまでもなく、シーア派イスラーム教徒の国であるが、世界のイスラーム教の割合において、シーア派スンナ派に比べれば少数派である。サウジアラビアは、長年、世界に多くの石油を輸出してきた国であり、日本もサウジアラビアの石油に依存している国であるが、あまり語られないが、究極の独裁国家なのだ。

高橋和夫 逆にそうすると、サウジアラビアという国のある種の、あんまりノーマルじゃないところ、ワッハーブ派とかね、非常に急進的なイスラムを教えて、神学校を世界中に作って、そこからどんどん過激な人たちがでてくるとか、あんまりそういうところには目が行ってなかったけど、やっぱり、サウジってちょっと問題あるんじゃない? そういう感覚はだんだん芽生えてきますよね。
VIDEO NEWSイランの国際舞台復帰で変わる中東の勢力図

高橋和夫 サウジアラビア、クエートもそう、産油国みんな同じで、ある種の暗黙の契約があって、王様は国民の生活を保障する、だから、国民は働かなくてもいい生活ができる、その代わり、国民は政治に口を挟まない、というのがソーシャル・コントラクトなわけです。だから、王制で文句も言わない。ところが、油価がどんどん下がってきて、国民に税金をとるとかね、国民からしたらとんでもない。産油国の市民からしてみたら、政府というのは、福祉の発行機関なんですよ。授業料無料、医療無料、住宅ローン払ってくれる、給料は二倍払ってくれる。政府に物を差し出す、という、そういう発想が皆無なんですよ。そういうところで水に税金をかける、えっ、って国民は怒るんじゃないかな、当然のことながら、代表なければ課税なしと、アメリカ人だって言ったわけですから。
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サウジには、石油による収入はあるわけで、国民は税金を払わない。教育も無料であり、ようするに国民は文句を言わない代わりに、国がなんでも「くれる」というバーターの国だというわけである。
3・11で、当時のアメリカのブッシュ大統領は、中東に民主主義を広げたいと言って、イラクフセイン体制を破壊したわけだが、そもそも、サウジは独裁国家であり、というか、3・11の「主犯」はサウジに関係している勢力ではなかったのか、といった話が再燃してくる。
ようするに、アメリカにしても日本にしても、サウジは「石油」を売ってくれる「お得意様」なので、批判は

  • タブー

なのだ。サウジが石油を売ってくれなかったら、日本は、もしかしたら今の経済発展はなかった。だから、絶対にサウジ批判はマスコミにのぼらない。
ところが、アメリカとイランの劇的な和解であり、アメリカのシェール革命は、この様相を変えようとしているのではないか、と考えられている。端的に言ってしまえば、サウジの「石油」の重要性が相対的に下がっているわけである。

高橋和夫 理論的に押し進めた人たちが出てくる、それがワッハーブですよね、で、非常に理で押していけばよくわかるんですけど、でも、普通の人の感覚は、お墓参りもしたいね、お父さんのお墓にも参りたいよね、というところがあって、ずっと緊張関係がワッハーブ派と他の派はあるわけですね。
で、サウジアラビアを建国した、アブドラ・ゼウスという人は、この集団と組もうと。自分がお前の宗教を守って広めると、その代わり、お前の宗教は、俺の統治が正統であると言え、と。政治権力と宗教権力が一緒になって、ずっとサウジアラビアというのを押し進めてきたんですね。
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高橋和夫 石油産業の面ではガチンコですよね、明らかに利害の面では、我々よく冗談で、サウジアメリカって言いますよね、もう、サウジの生産量越えているわけですからね、だから、もう、エネルギーの地勢図というものは、まったく変わってしまって、今や北アメリカが世界最大のエネルギー大国になった。それは大きいですね、アメリカの、サウジを見る目が冷たたくなっている。で、そういう冷たい目で見始めたら、ナインイレブンのハイジャック犯の大半はなんでサウジ人だったんだろうとか、あいつらがなんで、って、はっきり見えてくる。
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日本人は任せてぶーたれるだけで、愚民だなんだと怒って、消費税増税だ、エリート教育だ、と言っている人が、ブッシュ大統領でさえ、中東に民主主義を広めたいと言ったのに、サウジの独裁をどうこうしろ、と言わない、というのはなんのダブスタなんだろうかw
日本の民主主義の「偽善」は、サウジアラビアに集約している。
日本の石油は、サウジに依存している。だとするなら、サウジ批判は絶対にありえない。なぜなら、こここそ、日本の生命線なのだから。
だったら、国民への説教も止めたらどうだろうか?
一方で、かっこいいことを言っておきながら、他方で、おべっかを使う「エリート主義」は現在のネット社会では通用しない。ホンネとタテマエを使いわけるな。