月尾嘉男『日本が世界地図から消滅しないための戦略』

なんというか、こういう言い方をしては申し訳ないが、私がいわゆる学者の人とかを信用しないのは、そういった人たちが言っていることが、どう考えても恣意的に聞こえるから、なんですよね。つまり、今の状況の全体を考えて、その中で十分に

  • バランス

をとって、さまざまな方面からの検討を行って、そうした上で、語ってくれているのなら、まだ分かるのですが、いくつかあるうちの、なぜか、ある側面についてはまったく触れることもせずに、ある側面だけ強調して、なにかを主張されようとしていると、それってアンフェアなんじゃないのか、と思ってしまう。
その一番分かりやすい例が、

  • BIS規制

なんじゃないだろうか。このBIS規制が始まった経緯は、あまりに不自然であった。というか、こういったことの「突然」の決定というのは、本当に許していいのだろうか?

この組織の存在が日本で知られるようになった契機がバーゼル合意といわれるBIS規制である。これは現在までのところ一九八八年に公表されたバーゼル1、二〇〇四年に公表されたバーゼル2、二〇一一年に基本合意されたバーゼル3、さらに新しいバーゼル4の検討も始まっている。
内容は銀行の保有する資産のうち価格が変動する可能性のある株式、投資信託、外貨預金などのリスク資産の総額の一定比率を自己資本として保有しなければならないという規則である。バーゼル1では国際決済をする銀行は八%、それ以外の銀行は%四ということに決定し、一九九二年から実施された。
このような規制が突然のように登場した背景は様々に詮索されている。第一に一九六〇年代中頃から日本は貿易黒字国になり、八〇年代になると、その黒字が毎年数百億ドルにもなった。その結果、企業からの膨大な預金が集中するようになった銀行の保有する流動資産が増加し、それらを海外への貸出に急増させたことである。
八六年には日本の銀行の貸出残高は三七〇億ドルにもなり、一例として中南米各国への貸出総額はアメリカの銀行が三七%、日本が一五%、イギリスが一四%、フランスが一〇%、ドイツが九%という比率になり、中南米を自国の裏庭と理解しているアメリカにとっては看過できない事態であった。
そこでアメリカが日本の銀行の行動を分析し、二点の特徴を発見する。第一は日本の大企業はいずれかの財閥に属し、その財閥系列の銀行から融資を受け、海外市場でも同じ関係で進出してくる。第二は日本の銀行の貸出金利は低率で、海外の銀行よりも有利な条件で商売をしているというのが結論であった。
このような商売をしている日本の銀行の自己資本比率は海外の銀行に比較すれば低率になり、一九八四年の国際通貨基金IMF)の資料によれば、資本の定義にもよるが、イギリスの銀行が六・三%、アメリカが六・二%、日本が五・二%、ドイツが三・四%、フランスが一・九%となっている。
そこでアメリカとイギリスが世界全体で自己資本比率を規制しようという構想を持出すことになる。当然、日本、ドイツ、フランスは「各国とも金融市場の事情が相違するから同一の基準を適用することはできない」「自己資本比率は銀行の経営者が決定するべきことで、一律の規制は不要である」などと反論する。
そこで八七年にアメリカは前年に金融ビッグバンを開始していたイギリスと交渉して合意をとりつけ、さらに両国が提案する基準以下の規制しかおこなっていない国の金融機関とは取引しないという一種の恫喝を行う。その結果、八八年に自己資本比率を八%とするバーゼル1が成立し、九二年から実施されることになった。
日本のせめてもの抵抗は自己資本に銀行が保有する株式の含み益の四五%を合意することであり、これは大蔵省の千野忠男審議官の奮闘で実現したが、九〇年の湾岸戦争の影響により日本企業の株式の価格は急激に下落し、結果は逆効果になり、八%のために銀行は荒療治を開始する。
それは日本の銀行が邁進した狂気のような貸し剥がし貸し渋りである。自己資本比率を八%にするためには、融資している資金を回収する必要があり、それ以前は強引に貸し付けえいた資金を一転して強引に引上げはじめ、数多くの企業が倒産に追込まれ、それが連鎖するという悲劇が発生した(図23)。
とりわけ中小企業や零細企業が対象になったため、日本の製造業の基礎となっている優秀な部品を生産する中小企業が倒産し、日本の製造業全体が弱体になることになり、アメリカやイギリスが目指した日本の金融機関を弱体にするという目的と同時に、次々と欧米を追抜いていった日本の二次産業も弱体にするという副次効果も発揮した。

国連はニューヨークに本部があるように、世界経済のさまざまな国際機関は日本にはなく、欧米にある。これは、日本会議の本部が元「生長の家」の一部の工作員の事務所であるように、各国際機関はその本部がどこに置かれているかで、だいたいの、その組織の

  • 利権構造

が分かるようになっている。
なんのことはない。
日本のバブル以降の「不況」の理由は、BIS規制である。これは、欧米が当時一人勝ちをしていた日本を

  • 潰す

ために彼らが考えた「刺客」である。これによって、日本は滅ぼされ、二度と立ち直れないようにされたのだ。
日本が不況になったのは、欧米の陰謀によってである。
なんのことはない。
日本一国を滅ぼすなど、世界の主要なプレーヤーにとって簡単だったのだ。
ルールを変えればいい。
彼らは日本経済の構造を細かく調べた。そして、日本経済のある「弱点」に気付いたのである。
これはなんの「正義」も関係ない。突然、彼らは「やる」と言って、始めたわけであるが、ほとんど、日本一国だけが、これによって、瀕死の重症に追い込まれた。ところが、欧米はこんなに日本が「弱って」いるのに、まったく、無慈悲であった。それは、日本が滅びれば、欧米はますます「景気が良くなる」と考えたからだ。
国際機関にとって、世界経済が「景気が良くなる」ことになど、なんの関心もない。彼らが関心があるのは、

  • 自分の味方の国々の景気

であって、それは日本ではなかった。欧米の利害にとって、日本は邪魔でしかない。だから、日本の一人負けの状況を見て、彼らは腹の底から「ざまーみろ」とほくそ笑んだのだ。

いつもこのBIS規制の影響を一番受けるのは日本の銀行なんです。なぜなら、日本の銀行って海外の銀行に比べて収益性がとても低いからです。
なぜ日本の銀行の収益性が低いかというと、それは日本の銀行がリスクを取るのが嫌いで、高い金利の取れない(=安全な)大企業向けの融資ばかりしているから・・・という側面もなきにしもあらずですが、まずそもそもビジネスモデルが違うのです。
日本の銀行は、融資をしたらその債券をずっと保有するのが基本です。貸出債権は銀行の資産になります。大きな資金を使って薄い利ザヤでじっくり稼ぐビジネスモデルと言えます。利ザヤは取れないけど安心できる優良な大企業向けに集中して貸し出しを増やします。ひとつひとつの融資の利ザヤが薄い(2%~3%程度)から量で稼ぐしかない。だから当然、自己資本比率は低くなってしまうのです。
一方、欧米の銀行は、貸出債権はさっさと証券化して、市場で売却して自社の資産から外します。小さな資金を回転させて貸出資産の売却利益を先取りするのです。少ない資本で短期間で利益を稼ぐビジネスモデル、このいわゆる「投資銀行モデル」で高収益を稼いできました。このビジネスモデルがサブプライム問題でミソがつき、リーマンショックで決定的な大打撃を食らったわけですね。
第75号 『貸し渋り再来!?』 ~なぜ日本の銀行はBIS規制に弱いのか?~ « ハッピーリッチ・アカデミー

BIS規制は本当に「正義」なのだろうか? これがある限り、日本の真の意味での経済の回復はありえないのではないだろうか。
ようするに、なんでもグローバル・スタンダードとか言っている日本の有識者は、これだから、

  • 害悪

でしかないわけであろう。本当にそういった、「フラット革命バカ」とか「グローバリズム・バカ」とか、日本から出ていってほしいんですよね。はっきり言って、邪魔なんだよ。日本を滅ぼす売国奴め。
なんとかして、このBIS規制なんていうバカな制度の網をくぐれる方法ってないでしょうかねえ。これって、典型的な第二の敗戦ですよね。なんで、こんな国際ルールの成立を許してしまったんでしょうね。だって、これ、なんの「正義」でもないでしょ。おかしいでしょ。こんなのおかしすぎる。
こういうことをやってるから、経済システムって信用ならないんだよね。だって、BIS規制がない方が、

  • より自由な経済運営

が行えて、世界中の冨が増えるんじゃないですか? 明らかに余計な「規制」でしょう。少なくとも、全世界一律にやるようなもんじゃない。これがあるから、さまざまな経済のダイナミズムが破壊されたよね。
しかし、どうだろう?
日本の経済学者で、今でも、この「規制」に正面から反対している人がどれだけいるんだろうね。そういう意味では、日本の経済学者は全員、売国奴だよね...。