フロイトからアドラーへの往還運動

さて。アニメ「ViVid Strike!」が、ほぼ第一話において予想しえた内容のまま最終回を迎えたのに対して、アニメ「Lostorage incited WIXOSS」は、少し興味深い展開を迎えている。
アニメ「ViVid Strike!」において、フーカ・レヴェントンはリンネ・ベルリネッタと戦うのだが、その姿はまるで、アニメ「とある魔術の禁書目録」における上条当麻のようである。一方的に、説教を行い、正論を述べるわけだが、それはリンネが「倫理的」に間違っているから、結果として、リンネの胸を打つわけである。
しかし、よく考えてみれば、こういった結果になることは、ほとんど作品の最初から予想がついた。という意味は、リンネがここまで「罪の意識」をもつ理由がよく分からないのだ。そういう意味では、作品はあまり合理的ではなかった。そんな細かいことより、フーカが上条ちゃんみたいなイケメンになって、無双をやる「かっこよさ」が描かれば、あとはどうでもよかったのであろう。
他方における、アニメ「Lostorage incited WIXOSS」の第11話「二人/すず子と千夏」は興味深い展開を見せた。森川千夏(もりかわちなつ)が自暴自棄になった理由は、父親のリストラによって、無職となり、彼女の志望校への入学が絶望的になったからであった。ところが、その父親が

  • がんばった

わけである。それによって、千夏はなんとか父親が集めてくれたお金で、志望校に行ける「めど」がついた。
じゃあ、千夏はすず子と「和解」をすればいいんじゃないのか、と思わなくもないが、千夏はクラスメイトの白井くんなど多くの人たちを罠にはめ、ゲームの敗者に落としてきた。もう彼女は罪から逃げられなくなっていた。千夏はすず子とバトルを行うのだが、最後には自分の罪に押しつぶされ、すず子に負ける。
千夏は自らの子供の頃を思い出す。自分はなぜ、すず子に「優しく」したのか。それは、すず子を他の友達から独占したかったから。他の友達にすず子を奪われたくなかったから。千夏は、自分が「悪い」ことをしているという自覚を当時からもっていた。千夏はずっと、自分という

が他人に「悪」を行うことが許せなかった。彼女はずっと自分は「悪い」存在だと思っていたのだ。しかし、それに対して、すず子は「奇妙」なことを言う。というのは、それは「私も一緒だった」と言うのだ。自分が千夏に、あの幼い頃、声をかけたのは、千夏がそうだったようにと同じ動機だったと。
ではなぜ、すず子は、千夏と違い前向きなのか。それは、彼女が「過去」ではなく、これからどうするのかについて語っているからなのだ。
千夏の懺悔の言葉を聞いて、すず子が言う言葉は、どこかアドラー的である。つまり、過去の「罪」に悩まされるのが「フロイト」だとするなら、今や未来にどうすべきかを選択しようとするのが「アドラー」だと言ってもいいであろう。
しかし、そういう意味では、リンネが前向きになれたのも、このフロイトからアドラーへの変化だったと言えるわけである。自分は笑ってもいいのか。それは、今、これからどう振る舞うのかに関係している。自分は楽しんでいいのか、自分は笑ってもいいのか。もしも、リンネが楽しんでいいなら、笑っていいなら、それは

  • フーカがそうなってほしい

と願ったから、と考えることができる。つまりは、フーカが「リンネはこれからを考えて生きるべきだ」と言ったから、彼女はそう変わった。
同じことが、千夏にも言える。千夏が前向きに戻れたのは、すず子が「導いた」からなのだ。すず子は、そのためにゲームを勉強して、千夏に勝った。フーカとすず子に共通するのは

  • 相手のために相手に「勝つ」

という「倫理」である。すず子は、千夏に勝ったから、千夏の弱音を千夏から引き出せた。まさに、それを勝ち取るために、彼女は必死で練習した。相手が千夏だから、そこまでがんばれたのであり、それはフーカも同じなのだ...。