コミットメントについて

今期のアニメは、話題がのきなみ「けものフレンズ」にもっていかれた感があるが、まあ、世間的にはどうでもいい感じの枠で、「バンドリ」というのがやっている。
よく分からないのだが、原作として、中村航という人が書いた小説が単行本としてあるのだが、見るとまったく、アニメの内容が違っている。どうも、漫画版の方とアニメは近いということのようなのだが、まあ、その辺りの、なにが一次創作で、なにが二次創作なのかみたいな話は、視聴者にとって、どうでもいいのだが。
おそらく、基本的なコンセプトというのはそれほど変えるつもりもなく、それぞれのキャラの「性格」を、まずは

  • アニメ受け

する感じにしてあって、そこから敷衍した細かなサイドストーリーを手当てしていく、といったくらいの感じで、まあ、見ている方からすれでどうでもいい、ということだろうか。
ただ、アニメも後半にさしかかってきて、あと一人。ドラマーの紗綾が加入するまでのプロセスをどのように描くのかな、というところで、細かい伏線が、上記の小説版と重なってきている部分もあって、ちょっと書いてみようかと。

「私ね、前にバンドをやってたの。楽しかった。みんなで夢を追いかけて、みんなで同じ夢をみてた。コンクールの決勝に残って、その日のために、みんなで必死に練習を積み重ねてきた」
紗綾の足もとで、ザンジとバルが、んなあ、と鳴く。
「でもその大切な本番の日にね、お父さんが急に倒れてしまったの。みんなは駅で、ずっと待っててくれてた。行けない私を、駅でずっと待っててくれた。私がみんなの夢を、壊してしまったの」
足もとのネコを見つめながら、紗綾は語った。
「責任を感じて、そのバンドはやめた。みんなは、私のせいじゃない、って言ってくれたけど、もうバンドはやれない、って思った。怖くなって、勝手にあきらめたの。バンドは運命共同体だから、自分のせいで夢が壊れてしまうことがある。私があきらめてしまえば、もう誰の夢も壊さないし、自分も傷つかずにすむ」
それから紗綾は、ゆっくりと顔をあげていった。
「でもね、私、驚いちゃったんだ。香澄ちゃんは私を待たないっていうから。でもそうだよね。私のせいで、なんて思っちゃいけないよね。そんなふうに思いたくないし、誰にも思わせたくないもんね」
ふふ、と言う感じに紗綾は笑った。
「私、すっごくバンドがやりたくなっちゃった。香澄ちゃんに撃ち抜かれちゃったみたい。みんなと一緒なら、私はもう一度、始められる気がする。私、みんなと一緒に夢を撃ち抜きたいの!」
満面の笑みで、紗綾は言った。

BanG Dream! バンドリ

BanG Dream! バンドリ

アニメ版がこういった形で彼女のバンド参加の決断がされるのかは分からないが、少し気になったのは、あらゆる「コミットメント」において、こういった「理由」でそれをあきらめる、というパターンは世の中的には多いんじゃないのか、と思ったわけである。
大学入試の当日に、親が危篤になって受験をあきらめた、とか。家が貧乏で、家業の手伝いをしなければならないので、部活動をあきらめた、とか。
しかし、そういうものなのだろうか?
というのは、例えば、上記の引用のコンクールにしても、むしろ、親が倒れているのに、コンクールに行く方がどうかしているわけであろう。そんなの、ドラムなしで演奏すればいいんで、それにケチつけるようなコンクールの審査員など死んでしまえ。
バンドのドラマーがバンドに参加できないなら、そのドラマーの分も他のメンバーが演奏するのは当たり前ではないのか? そこにドラムの音がないのには、倫理的な

  • 理由

があるわけでしょう。だったらなぜ、そのことが瑕疵になるの? 堂々と、そのことを聴衆に説明すればいい。だれだって、必死に生きているんだ。それに、ドラムのいないニセの演奏を見せられて、お金を返せとか言う奴がいたら、頭おかしいでしょう?
大学受験だってそうで、なんで、試験は一年に一回なの? その非倫理性を分かっているわけでしょう?
なんかさ。
多くの場合に、こういった「コミットメント」を馬鹿にしているんだよね。本気でコミットメントするっていうことは、「覚悟」がいるんだよ。そして、一度、覚悟をしたら、そう簡単に前言を覆したりしない。それがコミットメントなのであって、そういった人としての覚悟を馬鹿にする奴は、そいつの方がおかしいんだ。がんばろうとしている人を邪魔すんじゃねえよ。
まあ、そんなことを思いましたけどね...。