日本代表の選手によるサボタージュ問題

現在、JFAは西野監督の次の監督の人選に入っており、7月中の専任を考えているのだそうである。しかし、私には根本的な違和感がある。それは、言うまでもなく、前回のブラジル大会からの4年間の

  • 総括

なしに、次の監督だけが決まるなどということがありうるのか、という疑いである。
例えば、今回の大会の特徴は多くの選手が「代表の引退」を宣言していることで、もちろん彼らがベテランと呼ばれるような年齢に達していることが一つの要因ではあるのだろうが、私にはそういった扱いに違和感を覚える。ようするに、彼らは今回のハリル解任の

  • 責任

をとって代表の引退を宣言したのではないのか?
そもそも、代表は辞める必要がない。なぜならそれは「監督」が選ぶものであって、自分が出たいから出られるものではないからだ。そうでありながら、わざわざ「引退」を言うという行為自体が「不自然」なのであって、そこにはなんらかの「理由」が関係している、と推測することは十分に意味がある。
例えば、キャプテンの長谷部は今回のハリル解任の「混乱」の選手側の責任をとって、今回の大会でのキャプテンの辞退を訴えていたそうであるが、慰留された、といったことを大会後に話している。このことからも、選手側にも大きく、その責任を受け止めていた下地があったことを意味している、と考えるわけである。
ようするに、選手は自ら「引退」を宣言することによって、協会になんらかの「メッセージ」を送っている。今のままではダメだ、というメッセージを送っているわけである。
もう一度、田嶋会長のハリル解任の「理由」の説明に戻ってみよう:

今回選手に聞いてわかったのですが、自分がでれないから監督を変えてくれなんて言うような選手は一人もいない。日本のサッカーを考えてくれているのがわかってとても嬉しかったし、スタッフも監督と実際に話したりしていました。
そして西野技術委員長もサポートする立場で、ハリルホジッチ監督と話し、色々変えてもらうようにいってきたのも事実です。
ただ、今回3月のところで、我々は何とかひっくり返すというか、段々バランスが崩れてきたようなものを何とか元に戻したいと思っていたものが、残念ながらもっと悪くなってしまったということですね。それで契約解除ということに至ったということです。
サッカー協会会長の発言を解読してみた【NHK生出演】|中村慎太郎|note

これは言うまでもなく「選手と監督の関係」について言っている。つまり、

  • どちらかが悪い

ということを田嶋は言っていない。これはどっちかが悪いという、そういう問題じゃない。どっちが悪かろうが、お互いの関係が「温和」でないこと

  • 自体

を問題にしているのであって、そこで田嶋は、選手の側ではなく、「監督」の側の

  • 制裁

を行った、と言っているわけである。田嶋が言っているのは、「チームの雰囲気」である。みんなが「楽し」そうにやっていない。なんか、みんながギスギスしている。だれが悪いのかは分からないけど、今回は田嶋は選手の「味方」をした。なぜ田嶋は選手側の味方をしたのかを彼は

わけで、ただただ田嶋はそう「選択」した、と言っているだけである。
そこで、選手側のこの件についての発言を見ておこう:

「記事をいろいろ見ていたけど、ハリルさんをあれだけ解任したほうがいいという報道が出ていたのに、実際に解任したら"なんでこの時期に"となっていて、俺は見ていてよく分からなかった」
W杯アジア最終予選後、チーム内には閉塞感と停滞感が漂い、3月のベルギー遠征では事実上、崩壊していた。日本サッカー協会は4月7日付でハリルホジッチ前監督との契約を解除したが、乾は「俺らからすると、その判断はそのときから素晴らしいと思っていたし、勇気ある決断だったと思っている」と指摘。その口調は徐々に熱を帯びていった。
「そのときから西野さんを信頼していたし、その判断をした協会に自分たちが応えないといけないと思っていた。(W杯で)勝ったからどうではなく、このチームでやるとなった時点で(西野監督を)信頼していた」
7月2日の決勝トーナメント1回戦で対戦するベルギーには昨年11月にも国際親善試合で対戦。敵地で0-1で敗れたが、当時とは日本も文字どおり別のチームになっている。「あのときは戦い方という意味でバラバラだった。選手同士はバラバラではなかったけど、戦い方のやり方がなかったというか、バラバラだった」。そう振り返る乾は当時との違い、そして現在の代表チームへの自信を口にした。
「今は意思統一して攻撃も守備もできている。そこが違い。ハリルさんのときは基本的に縦に速いサッカーをしないといけなかった。でも自分たちにそういうタイプのサッカーは合わないと思う。この3試合はボールを保持しながらやっていたし、それが日本の良さ。それはベルギー相手でもできると思う」
「あのときはバラバラだった」乾が語る日本の良さと西野Jの強み(ゲキサカ) - Yahoo!ニュース

乾選手は、田嶋会長のハリル解任の選択は「正しい」と思う、と主張している。しかし、よく上記の引用個所を比較してほしい。田嶋は、選手と監督のどちらが悪いのか、といった判断をしなかった。彼は選手側が悪い可能性があることを認めながら、

  • あえて

監督の解任を「選択」することで、「温和」でないチームの「雰囲気」の改善を

  • 優先

した、ということしか言っていない。ところが、乾選手の主張を見てほしい。彼は、ハリル解任が

  • 正しかった

と主張している。それは、それによって「戦い方」の「バラバラ」が解消されたから、と言っている。さらに、ベルギー戦後のインタビューも見てみよう:

大会を通していいサッカーはできたし、世界でも戦えるところは示せたと思います。コロンビアはホントに強かったし、セネガルの身体能力もすごかったですけど、ボールは持てたし自分たちもこれを4年間続ければ、もしかしたらもっといいところに行けるかもしれない。今回は監督交代から約2カ月で、ぶっちゃけぶっつけみたいだった。それでもこれくらいのサッカーができるというのは日本にとってはすごいプラスなこと。
もちろんベテラン選手が多いとか言われていますけど、岳(柴崎)も元気(原口)も、宇佐美(貴史)も宏樹(酒井)も、まだまだできると思いますし、次の4年後に向けて新しい選手も入ってくでしょうしけど、オレとしてはスタッフも変わらず、このくやしさを知ってる人たちでやっていくのがベストだと思います。西野さんはもちろん、テグ(手倉森)さんとか、森保さんは五輪もあるので難しいのかもしれないですけど、こういう経験をした選手、スタッフが続けていくことがいいんじゃないかと思います。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180703-00000011-sasahi-socc

乾選手は上記の引用の前段で、ベルギー戦の3失点を「反省しなければならない」ということを言いながら、最後で、

  • 大会を通していいサッカーはできた

と主張することで、今回の日本のW杯での戦いは「成功」だったと総括する。その上で、

  • オレとしてはスタッフも変わらず、このくやしさを知ってる人たちでやっていくのがベストだと思います。西野さんはもちろん、テグ(手倉森)さんとか、森保さんは五輪もあるので難しいのかもしれないですけど、こういう経験をした選手、スタッフが続けていくことがいいんじゃないかと思います。

という形で、基本的には今の体制で、大会後もやっていくべきだ、と主張しているわけであるが、大事なポイントは乾選手が大会後も同じ体制でやっていくべきだ、と主張している「理由」に

  • 今回の日本のW杯での戦いは「成功」だった

という彼の視点からの「主張」があるわけである。
しかし、である。
今回の大会が「成功」か「失敗」かを判断するのはだれだろう? 協会しかない。乾選手は自らの「主観」で、今回の大会は

  • 成功

と言った。それは、選手の立場からは、決勝トーナメント進出を大会前に監督が目標に掲げていて、少なくともそれは達成しているのだから、そう言うことには一定の理由はあるのかもしれないが、そう決める

  • 規準

が別にあって、それに基づいて言っているわけではない、ことは注意が必要なわけである。
乾選手は田嶋会長の、ハリル解任の選択は「正しかった」と主張するわけだが、彼はそこにおいて、田嶋会長が、監督が悪かったとも、選手が悪かったとも言っていない、ということをよく分かっていないんじゃないだろうか? 田嶋会長はたんに、監督と選手の間が「温和」じゃないから、その「雰囲気」の解消を行った、と言っているだけで、その場合に、もしかしたら、監督の側ではなく、選手の側の

  • 解任

が行われた可能性だってあったんじゃないのか、ということについて、なぜ彼は語らないのだろう? 彼はなぜ、ハリルが悪いのではなく、選手が悪いから

  • バラバラ

だったの「かもしれない」、ということについて語らないのか? 

だからこそ今大会の試合を見ても、そのことが(香川)真司さんや本田(圭佑)さんの活躍につながっていると思います。経験があればある選手ほど、監督の指示が違うと思えばチームのために意見を言うし、チームのためになると思ったら監督の指示と違うこともやろうとする。そういう意味では、監督が求めていることに100%集中する選手もいる一方で、それが難しい選手がいるというのも、また事実だと思います。
スポーツナビ FIFAワールドカップ ロシア大会特集 サービス終了のお知らせ

本田圭佑はひとりの人間として、サッカー選手として成功するための手本となる生き方をしている。もし、人の指示に従う生き方をしていたらJリーグサイドバックでキャリアを終えているかもしれないし、そもそもプロになれていないと思う。
@zlataneto 2018/07/03 14:38

しかし、彼のサッカー観と選手特性は日本代表を間違った方向へ導いた。ブラジルではザックの指示を無視した遅行、パワープレー要員の招集を拒否するかのハーフナーへのクロスゼロ。そして、今大会ではあわや、チームを崩壊寸前まで追い込んだ。もし、スタメンで起用され続けたとしたらゾッとする。
@zlataneto 2018/07/03 14:42

本田に憧れた若い子どもたちが代表になった際に間違ったメッセージになってないだろうか?監督の指示は無視してもよい、中心選手になれば何をしてもいい。監督の戦術に選手が口を挟み独自に連携を行うとゲームモデルが感覚的なモノになってしまうため、初招集の選手が活躍できなくなる。
@zlataneto 2018/07/03 15:01

これは言うまでもなく、本田一人だけに責任を負わせれば済む話ではない。多かれ少なかれ、乾選手の言う

  • バラバラ

という意味では、ほとんどの選手がこの問題にコミットメントしていたと言っても過言ではない。彼ら、ハリルに「反逆」し、「サボタージュ」し、チームの雰囲気を「悪く」することにコミットメントした選手たちは、言うまでもなく、今後も何度でも何度でも繰り返し行われる。私がここで問題提起しておきたいのは、もしも選手が

  • マスコミで「監督批判」を行ったとき
  • ゲーム内外を問わず、監督の命令に「逆らった」とき

協会は、この「不和」を解消するために、つまり、この「不和」の拡大を防ぐために、

  • 監督を解任するのか?
  • その問題の選手を解任して、別の選手を召集するのか?

を、事前に決めておかなければならない、と考えるわけである。そうでなけれ、今後、日本代表の監督には誰もなり手がいなくなる。というか、その度に、解任される側の監督は、その

  • 理不尽

な解任理由を相手にして、裁判で訴訟をしなければならなくなる。乾選手が分かっていないのは、なぜハリル元監督が協会を相手どって、今、「裁判」をやっているのか、なのであって、むしろ、ハリルは上記の乾選手の発言を元にして、

  • 乾選手を訴え

て、乾選手とハリルが裁判で「どちらが正しいのか」を争えば、この問題が、どこに「争点」があるのかが分かるのではないか。乾選手は、もしもそこで、ハリルとの裁判で負けてみればいい。今回の裁判では、ハリルは賠償金は要求していないと言うが、もしも彼が「一般的」に妥当な金額を要求したら、それがどれくらいの金額になるのか。まあ、一流選手となった今の乾選手にとっては、それでも

  • はした金

なのだろうが、「負ける」ことで、自らの「名誉」が傷つくことの代償がどれだけ大きいか、自分の主張していたことがどれだけ「幼稚」であることが、裁判の場で、公的に多くの人に知られることが、どれだけ自らの名誉にとって大きいか、知ることになるのではないか...。