日本経済の診断

今の安倍政権の、いわゆる、アベノミクスについては、そもそも、安倍政権自体が使わなくなっている言葉というのもあり、なんとも、もにょるのだが、少なくとも、安倍政権の政策はリフレ派が主張するリフレ政策が継続されているわけで、その評価を避けて通ることはできない。
ところが、そもそものそのリフレ政策をさかんに唱導していたクルーグマンが以下のように言い始めているのだ。

ポール・クルーグマン(米ニューヨーク市立大学大学院センター教授)という、リフレ政策をせっせとやって日本の経済にカツを入れろと言ってきた人も、ある頃から日本の人口が減っていることを視野に入れはじめて、彼が書いた2015 年の文章には、「日本の生産年齢人口1 人当たりの生産高は、2000 年ごろからアメリカよりも速く成長しており、過去25 年を見てもアメリカとほとんど同じである(日本はヨーロッパよりもよかった)」と、今では日本経済を評価してくれている。
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(このクルーグマンという人は、学者というには、何度も自分の持論をくつがえしてきた人だと思うわけで、今回もそれが起きた、というくらいのことで、まあ、その程度の信頼の人だ、ということなのだろう。)
ここのところ、videonews.com では、宮台真司が、日本人の一人あたりの生産性の低さをボロクソにけなしていたわけであるが、彼はそもそも、経済統計の見方なんて知っているのだろうか? この記事では、一人あたりの生産高は、そこまで悪くない、と言っている(まあ、日本の「人口減少」からかんがえれば「よくやってる」と)。なんなの?

(1人当たり産出量は)通常は年率1~1.5%程度の成長でしかなかったのだ。それよりも目に見えて急速な、年率3~4% の成長が起こった歴史的な事例は、他の国に急速に追いつこうとしていた国で起こったものだけだ。(中略)重要な点は、世界の技術的な最前線にいる国で、1 人当たり産出成長率が長期にわたり年率1.5% を上回った国の歴史的事例はひとつもない、ということだ。
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今の日本でさかんに行われている「成長神話」とは

  • あの高度経済成長の時代よ、もう一度

といったもので、もう一度、バブルの景気を呼び戻そう、というものだ。しかし、ピケティによれば、このような高度経済成長を経て、低成長の段階に移る動きは

  • ほぼ全ての先進国で見られる現象

だと言う。そしてそれは、ある意味での「必需品があまねく行き渡った」後においては、どこでも見られる、というわけである。
さて。
だとすると、何が問題なのあろうか?

1 人当たり生産性は伸びているのに賃金が伸びない。問題は、労働分配率の低下傾向、さらには、所得分配の格差のあり方にあることは言うまでもない。つまり、この国の経済が抱えているのは、「成長」問題よりも、「分配」問題なのである。
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しかし、ね。なんとかして「分配」の

  • 平等

を実現しなければならない、なんていう主張を、リフレ派から聞いたことがあるだろうか? 彼らが言うのは

だけであるw つまり、基本的に分配の問題は

としか言っていないw まあ、ここに彼らの「本質」が現れている、と言えるだろう。では、どうやって、企業に労働者への「分配」を優先させればいいのか? これを行えるのは

  • 法律

しかない。法律によって、企業の「インセンティヴ」をなるべく、労働者に賃金を払う方が「得になる」ように誘導していくしかない。しかし、リフレ派はそれを言えない。なぜならそれは、自民党の基本政策と違っているから、ということになるのだろう(自民党にとって、企業が労働者に払う額が少なくて困ることはない。逆に、その額が多いために、自民党への企業献金が減らされるのは、なんとしても避けなければならない...)。