私立中学・私立高校は「ユートピア」か?

中学、高校の進学において、公立か私立か、といった選択がある。もちろん、大学にもそれはあるわけだが、おそらく問題は私立なのだ。
というのは、私立とはそもそもそこで何が起こなわれているのかを、なにが担保しているのかが分からないからだ。

「私立学校で問題が起きたらどこに相談すればいいのか」と戸惑っている人たちがいる。例えば、教員から "暴力を受けた" とする子どもの親は「教育委員会が相手にしてくれず、どこも助けてくれません」と途方に暮れていた。
いじめ、教師の暴力……私立学校、問題あっても「指導」に壁――教委は介入できず - Yahoo!ニュース

少なくとも公立は、さかのぼっていけば、教育委員会があって、国や都道府県がある。つまり、そこでの問題の「責任」が明確になっている。こいつらが信用できるかどうかはともかく、こいつらがちゃんとしなければならないことは、誰も疑っていない。
対して、私立にはそういった、さかのぼっていって、責任を追求できる空間になっていない。つまり、親は誰に問題を提起したらいいのかが分からないのだ。
このことは、本当に私立は

  • 教育の場所

なのか、が疑わしくなっていく例となっている。
私立では何が起こなわれているのか? このことが典型的に問題にされた例が、以下の「未履修カリキュラム問題」である。

文科省は、学習指導要領の示す授業時数(標準コマ数)を下回ったカリキュラムは適当ではない、としている。この中高一貫校の場合、中学2年時での「技術・家庭科」の標準コマ数は、1コマ50分で70コマ。加えて、この科目の履修は、中学校の各学年において必須とされている。「総合的な学習の時間」に関しては、中学2年時に、標準コマ数を1年間で70コマにするように要請されている。
未履修問題は、2006年10月に必修科目を履修していない学校があるとして、富山県のケースが報道され、全国に波及した。
当時、文科省は全国の高校を対象に実際調査を実施している。それによると、公立で371校(9.2%)、私立で292校(21.7%)が未履修を前提としたカリキュラムを組んでいた。私立は公立の2倍以上、必修科目を履修していない全国10万人超が一時、卒業を危ぶまれたりもした。
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私立はそもそも、進学校としての使命を担わされて、親から子どもをあずかる。であるなら、進学に関係のない授業をやらないで、進学に関係のある授業だけを行えば、当たり前だが、子どもたちは進学しやすくなるだろうw そして、そもそもそれを国家は

  • 規制

できるのだろうか? 上記にあるように、彼らの

  • 卒業を認めない

ということを、国家が「決定」すればそれは可能であろうが、この「悪」はそもそも、生徒が選択していない。学校側が行った「悪」である。その責任を、本当に生徒に負わせることができるのか、が問題となる。
しかし、このことは逆に考えれば、生徒たちは、それを逆手にとって、私立を選択している、と考えることもできるだろう。
しかし、当たり前だが、公立の子どもたちは国家が「命令」してくるルールの中で競争しているのに、私立はそのルールを無視しているのであれば、公立の子どもが進学に苦しんで、私立の子どもばかりが難関校に入るのは

  • 当たり前

なのではないか? つまり、世の中的に難関大学の卒業者の多くはこういった「ずる」をして、今の地位を勝ちとった「悪い人たち」のふきだまりなんじゃないのか、といった推測が成り立つわけであるw
さて。この私立中学、私立高校の特徴を最も代表するものに

  • 一貫校

があることは、論をまたないであろう。そして、今までは、それによる「アドバンデージ」が私立を親が選択「せざるをえない」理由にさえなっていた。
ところが、である。
よく考えてみると、これは変だ。なぜなら、なぜ公立が中高一貫校をやってはいけないのかの理由になっていないからだ。

自治体が陣頭指揮をとってダイナミックに改革を進める都道府県もある。大胆に公立中高一貫校を増やすのが茨城県だ。
県内に公立の中高一貫は並木、古河の中等教育学校と、併設型の日立第一の計3校があり、今後、さらに九つの県立高校を併設型に、1校を中等教育学校に改編する。20年度に太田第一、鉾田第一、鹿島、竜ケ崎第一、下館第一の5校を、また21年度に水戸第一土浦第一・勝田の3校、22年度に下妻第一、水海道第一を一貫化する。
結果、22年度には現在11校ある東京都をしのぐ計13校の公立中高一貫校が設置されることになる。県内には全日制の県立高校が88校あり1割以上が中高一貫校になる。
“公立”一貫校が高校募集停止ラッシュ 私立が危機感「学費の差は大きい」〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース

「もちろん影響はある。ただ、中高一貫教育は私立が先鞭をつけて進めてきた。その成果を見て公立もまねをしているが、私立のように建学の精神はなく大学実績を上げるために6年一貫化しているにすぎない。ただし学費の差は大きい。公立が中高一貫校を作るならば私学にも補助金を増やし、同じ土俵で勝負すべきではないか」
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私立の矛盾は、その授業料の高さだ。つまり、なぜ親や子どもに、そんなに高額のお金を要求するのかの合理的説明がないことなのだ。そう考えるなら、そもそもこれは

  • 私立学校ビジネス

の産物であって、公立が充実していれば、本当に一部の富裕層向けの私立を除いて、そこまで私立学校ラッシュが起こった理由にはならなかったんじゃないのか、といった推測も成り立つ。
ところが、バブル以降の新自由主義政策によって、国家が国民に福祉を行うことに反対する議論が始まる。そして、大阪を中心に、次々と公立の学校の廃止を目指した、私立学校による、政治家へのロビーイングが行われる。
つまり、私立学校は「儲かる金のなる木」として、親や子どもから、暴利をむさぼれるツールとして、この日本では確立されてきた。
しかし、である。
当たり前だが、そもそも、教育や学校は「福祉」である。憲法で約束された、国民の権利だ。これは、国家が責任をもって、子どもに与えなければならない。しかし、その結果として、私立の子どもばかりが難関大学に入っていたら、それは本当に教育なのか、が疑われるわけであろう。
私立は「お金持ち」の家の子どもだけが行ける場所である。ということは、この学歴格差は

  • 貧富の格差の固定

を意味することは分かりやすいだろう。
こんな状態を甘んじて、何年も放置しているなら、それは国家の政策の敗北である。せめて、私立と同じくらいには公立からも、難関大学に入れなければならない。そして、その最も

  • 分かりやすい

方法が、「公立の中高一貫校化」であるということなのだろう...。