新型コロナの謎

あのさ。そもそも、なぜこの新型コロナが問題だったのかって、ようするに、これが

  • 何者なのか?

が分からなかったから、なんだよね。つまり、私たちは「恐怖」したわけ。もっと言えば、

が死んだから、だよ。子どもの頃に、八時だよ全員集合を見てきて、まあ、ほとんどの世代が、「志村けん」世代なんだわ。子どもの頃に、彼を見て笑った。それが亡くなって、子どもの頃のそういった原体験が想起されて、自らの実存が揺さぶられて、ショックだったわけ。
そして、3月末の東京の指数関数的増大の徴候を受けて、4月初めに、政府の緊急事態宣言が出て、自粛となったわけだけど、6月最初には、この宣言は解除されている。
解除ということは、さまざまな商業施設などへの「法的強制」は、 もう、なくなっているんだよね。
当たり前だけど、経済封鎖は長くは続かない。長く続ければ、必ず、さまざまな「ひずみ」がでてくる。よく話題になる分かりやすい指標は自殺者数だけど、それだけじゃない。失業者から、倒産件数から、なにから。
しかも、もともと日本の緊急事態宣言は「医療崩壊」に関係して行われていた。だとするなら、なんらかの形での、経済封鎖の解除、つまり、出口は模索されなければならない。
もちろん、完全に元に戻るなんていうのは「幻想」なのだろう。いろいろ警戒しながらになるだろうし、特に、夜の街などの危険スポットは、世間から警戒の目で見られることになる。
また、今回を契機にして、東京の一極集中など、日本の「東京中心主義」や「東京優越主義」が見直されていくのかもしれない。当たり前だが、江戸時代から、ウイルスに弱いのは、

  • 大都市

なのであって、その「脆弱性」を無視しての、東京礼賛主義イデオロギーは、必然的に駆逐されていくだろう。
しかし、そうだとしても、私たちが立ちどまっているのは、そこに

  • 謎(なぞ)

があるからなんだよね。つまり、新型コロナのさまざまな「謎」が解決されていないから、「なんだか分からないけれど、今まで通りの日常に戻る」といった選択は行えない、っていう直観が立ちどまらせているのでしょう。
「謎」が「謎」のまま残っているから、「今まで通りの日常」に戻るにしても、どういった「対策」をした上で、元に戻ったらいいのかが分からない。
しかし、ね。
前から何度か紹介しているけど、東大の児玉龍彦先生は、かなり、具体的にこの「新型コロナの謎」についての、かなり具体的な解明が進んでいることを話されているんだよね。

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まあ、いろいろ論点があるんだけど、簡単にまとめてみると:

  • なぜ東アジア(やサンディエゴやハワイのような太平洋側のアメリカ)で死者数が少ないのか? ... 東アジアの、コロナ・ファミリーに対する免疫が新型コロナに対しても、軽い免疫が効いている(BCGによって、結核で重症にならないのに似た現象)。つまり、IgG抗体がIgM抗体より早く現れる人が多く、そういった人では重症化しない(この解釈は仮説だが、上記の抗体の動きは論文で発表されているものなので、まあ自然な解釈ではある、ということ)。
  • 軽い免疫があると、今度は「ウイルスの大量の暴露」での重症化が問題になる ... 量が多くて、重症化すると、どんどん、ウイルスを生成している細胞が大量にできる。そういう細胞があまりに密集すると、肺が一挙にやられて亡くなる(集団免疫論者が間違っているのは、この大量暴露による重症化のパターンを無視しているから)。
  • 大量の暴露のメカニズム ... 重症化した人の方が、たくさんウイルスを出す。また、消化管からも多くでる。嘔吐物、排便。物からの感染(つまり、自分の手からの感染)を注意する必要がある。
  • PCR検査と抗体検査の関係 ... 今症状のある人に対してはPCR検査が中心。ただし、症状の段階によって、PCR検査の検出率も違うし、感度がいいときでも最大で八割。抗体検査と合わせると、全体で九割くらいまで上げられる。抗体検査は、血液でできるので、健康診断などで採取したものが利用できるのが特徴。ただ、抗体検査といっても、東大、慶応大、などで導入され始めている、精密検査を行えるものでないと、(疫学調査で、政策の意思決定を行うような)精密な数値をだすのに使うのには必須。簡易抗体検査キットの役割は、PCR検査を行う対象の一次切り分けに使うような場合。
  • ワクチンの開発の可能性 ... 恒久的なものではなく、症状を抑える程度のものであれば、開発可能性はある。ただ、RNAウイルスは突然変異が多いため、ワクチンは難しい。抗ウイルス剤(の複数の組み合わせ)が治療の主体。
  • アビガンが承認されていないことの考え方 ... 動物実験での胎児の危険があるので、対象は、高齢の方や喫煙習慣や心臓が悪い人。よくダブルブラインドの知見が言われているが、それが必要なのは指標を見るときに医師の主観が入ってしまうとき。例えば、ウイルスが消える日数が短いということが、客観的に分かっていたら、早期に使うことは鉄則。
  • 上記のコロナ・ファミリーと新型コロナの抗体検査の関係 ... 抗体検査で使う遺伝子の個所が違う。新型コロナとコロナ・ファミリーでは、五割くらいが遺伝子が同一だが、新型コロナの抗体検査では違う部分の、新型コロナ独自の遺伝子の部分を使う。新型コロナが細胞に入ってくるときに使われるのは、スパイク状のS抗原。もう一つ、早くからIgGがでてくるのが、N抗原の方で、RNAをウイルスがとりこむときに働く抗原。こちらは、中途半端なウイルスを増殖するところまでは起きてしまうので、増えると、免疫を刺激するし、肺が一気にやられることが疑われている(SARSの動物実験で知られているので、同じことがありうるだろうと)。
  • マスクの役割 ... 唾の中にウイルスがいることが分かっているので、それが飛ばないようにするのには、マスクは有効(食事に唾が入ることは注意が必要)。ただ、簡単に空気で感染が増えているかは、そんなに多くない。空気感染が問題にされたのは、病院のICUの人工呼吸器とか、北海道の寒冷地の部屋の空気の循環とか。

まあ、あんまりうまくまとめられなかったけれど、ようするに今後の

  • 新型コロナ対策の「新しい行動様式」

を、どういった形で、今後に変容させていくのか、といった「政策」を、「経済」を維持しながら、どうやって成立させていくのか、っていう「政策」を考える上で、こういった、さまざまな

  • 新しく分かってきた「知見」

についての深い理解が、非常に重要なんですね。当たり前だけど、無駄な対策をやればやるほど、経済を小さくしてしまって、日本を弱らせてしまう。だからといって、やるべき対策を行わなければ、感染を拡大して、重症者を増やしてしまうので、もしもやらなければならない

  • 行動変容

があるのであれば、中長期的な政策を含めて、「日本の変革」が必要になる。
つまり、この「どこに、この連立方程式の解があるのか?」を見出してくれる、日本の政策決定の

  • 日本の知性

が求められているんだけれど、なかなか、そういったブレーンが現れていない、というのが日本の今の問題なんじゃないですかね...。