ラブライブスーパースター

今期アニメで「ラブライブ」の新作が、あのNHKで放送されていることは知られている。ちょうど、オリンピックの期間と重なって、何日か休みをはさんでいるが。それが、「ラブライブスーパースター」で、第6話まで進んでいる。
私もあまり、そこまで入れこむこともなく、ぼーっと眺めてきたわけだが、今回の第6話に対する反応は、ネットを中心に大きいものになっている。
なぜ、今回の「スーパースター」が特別なのかというと、一つには

  • ファーストの制作メンバーが再集合した

というところが大きい。そういう意味では、サンシャインと虹ヶ咲は少しかわいそうなところがあった。なぜなら、

  • すでにファーストがある

わけだから、どうしてもそことの関係を見る側が求めてしまう、というプレッシャーがあったからだ(まあ、それについては、ガンダムにおける、ファーストとゼータ、ダブルゼータを思わせるものがある)。そして、特に、虹ヶ咲になると、すでに

わけであって、これ、「ラブライブ」じゃないよね、ってなってしまっているわけで、なかなかやりたいことをやるのにも苦労があったんじゃないのか、ということを思わせる。
対して、今回のスーパースターは、どこか、

  • ファーストの反省

をふまえたような内容になっているところがおもしろいわけで、制作サイドが何を言いたいのかがいろいろと考えさせられる。
主人公の澁谷かのん(しぶやかのん)は、まず、

  • 挫折

が描かれるところから始まる。高校受験で、音楽科を受験したんだけど、「失敗」して、同じ学校の普通科に入学する。しかし、なぜ音楽科を受験したのかというと、歌うのが好きだったからで、当然この関係から、ストーリーは彼女が歌うことを「続ける」のかが中心になっていくことが分かる。
確かに、「アイドル」が歌を歌う活動だとするなら、これを音楽の活動と整理することは自然なわけで、そう考えると、ファーストにおける、主人公の高坂穂乃果(こうさかほのか)に、少なくとも最初は、そういった方向へのモチベーションがなかったことは、興味深いと言えるかもしれない。つまり、なぜ彼女たちがアイドル活動を行うのか、といった動機の部分でファーストは苦労をしている、と言うことができる。
そんな、かのんがスクールアイドル活動を始めるきっかけとなるのは、唐可可(タン クゥクゥ)という上海出身の中国人。ここの部分は、ファーストにはない要素ではあるが、大事なポイントは、

  • 彼女たちのスクールアイドルに「反対」する勢力

が、ファーストにおける絢瀬絵里(あやせえり)と同様に、葉月恋(はづきれん) が現れることで、この「対立」が維持されたまま作品が続くところは、伝統を踏襲している。
ちなみに、この舞台となっている結ヶ丘女子高等学校は、新しく作られた学校で、今は一年生しかいない。以前に廃校になった学校の跡地を利用して建てられていて、葉月恋の母親はこの学校の創設者という関係にあり、理事長は葉月恋の母親をよく知っている関係であることが描かれている(ですので、当然、葉月恋のこともよく知っている)。
音楽科の併設している学校で、普通科の学生が音楽活動を部活動としてやろうとすることを禁止にはできなかった理事長は、二人のスクールアイドル活動の条件として、地元の大会で優勝すること、を提示する。結果として、二人は審査員特別賞をとることによって、学校からスクールアイドル活動という部活動を認められるわけで、そういう意味では、この時点でファーストの「難問」は解決してしまった、と言えなくもない。
ということは、あと残っているのは、「どうやって葉月恋がメンバーに加わるのか」に絞られているわけだが、どう考えてもフラグっぽいのが、

  • 廃校になった跡地

の学校がなぜ廃校になったのか、にあることが分かるだろう。そして、それが大きく、「なぜ葉月恋は、ここまでスクールアイドル活動に反対するのか」に関係している。葉月恋は、最初、「普通科の学生が音楽活動をすることは、この学校にふさわしくない」といったニュアンスで反対していた。つまり、そういった外向けの活動が、この学校を「代表」するものとなってイメージに悪影響を与えるから、と。ところが、彼女たちが地元の大会で特別賞をとった後は、「スクールアイドルだけは止めて」と、発言が変わってくる。
ようするに、葉月恋は、なんらかの理由で、どうしても「スクールアイドル」だけは止めてほしい

  • 理由

がある、ということが分かってくるわけだが、その謎を巡って、第6話以降が展開されることになる。
今回のスーパースターは、こうやって見てきたように、学校の廃校を阻止することを目的としたストーリーではない。ところが、

  • 廃校になった跡地

というものが登場することで、強く「廃校」を意識させる物語になっているところがおもしろい。やはり、「廃校」を巡ってストーリーは展開するんだな、ということを思わせるわけだ。
ここで、第6話の話にふれていきたい。この回は、いわゆる「おさななじみ回」となっていて、嵐千砂都(あらしちさと)を中心として話は進む。おさななじみというと、ファーストでは、南ことり(みなみことり)と、園田海未(そのだうみ)の二人がいたわけだけれど、今回の千砂都は、この二人を足したような人物となっている。
まず、幼少時代の千砂都は「いじめ」られていた、という描写から始まる。つまり、千砂都は「泣き虫」だった、弱い性格だった、というところが強調される。この点は、確かに、海未が穂乃果やことりと知りあうようになっていったいきさつと似ている。そして、千砂都はダンス大会で優勝できなければ、海外に修行に行くことを考えていたと言う場面は、明らかに、ことりが服飾の勉強の関係で、海外の学校に転校しようか悩んでいた場面とオーバーラップしている。
では、なぜ、今回の第6話がこんなにネット上で話題になっているかというと、ようするに、千砂都の

  • かのん愛

の強さが、表現されたから、なんですね。まず、千砂都は、音楽科を止めて普通科に転入する。なぜなら、

  • かのんのスクールアイドル活動を彼女と一緒に行うため

となっている。つまり、「覚悟」が違うわけである。千砂都にとって、かのんは「ヒーロー」であり、「イケメン」である。彼女を今まで、ずっと助けてくれた、命の恩人みたいなものである。その彼女の力になれるなら、

  • あとのことはどうでもいい

という「覚悟」が感じられるわけだ。
もともと、ラブライブには「三国志」に似たイメージを投影して見てきた人たちがいる。大義を成すために、仲間を集めていくこのスタイルは、確かに、三国志のおもしろさと、似ていないこともない...。