対ロシアの経済制裁はどこまで有効なのか?

誰もが見過ごしてしまったニュースで、アメリカが久しぶりに日本に言及したら、奇妙なことを言っていた、というものがある。

2月27日に、アメリカ・ホワイトハウスのサキ報道官が出した「声明」が、さまざまな方面に波紋を広げています。
声明の中で、岸田首相と日本政府を「プーチン氏のウクライナ攻撃を非難するリーダー」と表現していたからです。
原文では「Prime Minister Kishida and the Government of Japan have been leaders in condemning President Putin’s attack on Ukraine」となっています。
「have been」と、現在完了進行形が使われているので、「リーダーであり続けてきた」といったニュアンスが感じられます。
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ん? 何を言っているのだろう? なんで、こんな時期にアメリカに「おだて」られなければならないのだろうw アメリカの深謀遠慮が分からない。
どう考えても、今回のプーチン糾弾の急先鋒は、アメリカであり、EU諸国なんじゃないのか、と思うわけだが(だって、日本でロシアやウクライナのことについて今まで考えたことのある人の方が少ないわけだし、今だって、よく分かっていない)、うーん。よくよく、詳しく調べてみると、そんなに簡単ではないのかもしれない、とも思えてくるわけである。
その第一の問題が、SWIFTからのロシアの締め出し、だ。

1つ目の理由は、「ロシアの全銀行が対象ではない」という点です。
今回EUが発表したSWIFT遮断対象となるロシアの銀行は、わずか7行に過ぎません。しかも、その中には最大手のズベルバンクと、エネルギー部門に強いガスプロムバンクが入っていないのです。
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えっと。EUはロシアの石油や天然ガスが欲しいんだよね。だから、「穴」を作っている。これじゃあ、誰も本気だと思わないよね。

西側諸国と対立するロシアは、中国の国際決済システム「CIPS」を使うことも可能です。
そもそも、SWIFTとは「送金の仕組みそのもの」ではありません。あくまで、「資金移動の情報をやり取りする仕組み」です。
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こっちがもっと本質的で、そもそも、SWIFTからの締め出しは効果があるのか、が疑問なわけだ。上記は、中国による、SWIFTの代替システムを紹介しているけど、ロシアも独自のものを最近作った、という話がある。
こういった金融制裁は、そもそも、北朝鮮であり、イランであり、アメリカは今までも、世界中でずっとやってきたんだよね。だから、それに対する対抗策は、アメリカと対立している国であれば、どこの国も考えている。もっと言えば、これによって、ロシアがアメリカの経済圏から離れるとして、

  • 中国の経済圏

と親密にしていく、ということなら、アメリカ経済圏の対抗勢力側が

  • 今まで以上に拡大

していくという結果になるだけで、よりアメリカの世界へのプレゼンスの「弱体化」が進むってだけじゃないのか、という話にもなる。

2018年に、イランに対して「SWIFT遮断」が実施され、イラン産原油の輸出に大きな影響がありました。しかし、そのイラン産原油を、マレーシア経由で中国が買っていたと言われています。
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そもそもロシアは、日本のような、一切の資源や食料を海外に依存している国じゃないからね。食料も自給自足できるし、石油も天然ガスも国内で採掘できる。
そう考えると、経済制裁といっても、今話題にのぼっている

  • マイクロソフトの製品を使えなくする
  • 一部の会社のクレジットカードを使えなくする

といったような、「地味」な対策の方が、よく効く、ということなのかもしれない。しかし、それならそれで、マイクロソフトを使わないで、リナックスなどのフリーなものに乗り換えていくだろうし、短期、中期的には、ロシアの人はその不便さに

  • いらいら

はするだろうけど、漸進的には、その対抗策が普及していくだけ、のように思われる。
どうしてそうなのかと考えると、上記の

  • マイクロソフトの製品を使えなくする
  • 一部の会社のクレジットカードを使えなくする

のようなのは、経済制裁というより、「メーカー側が自社のブランドイメージを守る」ために行っている行為だと考えるのが普通なわけで、つまり、「目的」が違うから、と考えるのが普通に思われる。
そもそも経済制裁とは、それによって何がしたいのかは分かりにくいところがあるわけだ。なにが目的なのか? それは、北朝鮮に対してでも、イランに対してでも同様だし、近年、対立を深めている、アメリカにとっての中国との対立にしても同様だ。
もしもアメリカが相手との商売を拒否するなら、相手は

  • 他の国

との商売を深めようとするだろう。そして、そこには、

  • アメリカが「排除」された、巨大な経済圏

が作られることになる。つまり、世界は第二極、第三極の経済圏に分割される、ということになるわけで、そもそもそれは、アメリカが望んでいた世界像なのかが疑わしくなる。
なぜこういうことになるのかといえば、国家と国民は違うからだ。いくら、プーチンが気に入らないからといって、ロシア国民を非人権的に扱うことはできない。それは、国際法的な意味で、捕虜の扱いであっても人権を守らなければならない、という意味だけでなく、そもそも、どこまで国民にまで罪を認めていいのかが疑わしいからだ...。