ロシアの悪魔化に忙しい日本の知識人たち

今回のウクライナ戦争は、言うまでもなく、ロシア軍が、ウクライナに武力侵攻したことだけれど、それ以外に、非常に重要な特徴がある。

普通に考えて、ほとんどの世界中の国々が、ウクライナを「応援」しているのだから、ウクライナが勝利する、と考えるだろう。しかし、そうなっていない。その理由は、実際は、まったくウクライナを「援助」していないから、と言うしかない。
具体的には、(a)自国の軍隊の派遣、(b)長距離ミサイル、(c)戦闘機。つまり、「攻撃的武器」の供与をやっていない。もちろん、まったくやっていないわけではないわけだが、早い話、「殺傷能力」が制限された武器だけを供与している。
ここから、ウクライナが言われているのは、「義勇兵を世界中から集めることはOK」、「ジャベリンやスティンガーといった携行式武器の供与はOK」、「ドローンはOK」といったように、なんらかの

  • 制限

がされた武器だけが与えられていた。確かに、こういったものが効果的な戦況というものはありうるだろう。しかし、相手も「対策」をねってくるわけで、いつまでも、それが続くとは限らない。
そもそも、なんらかの「制限」を行った上で戦わされているウクライナの軍隊は、まるで

  • 実験台

のような扱いなわけで、そんなことが許されるのか、という問題がある。
実際、ロシアは超高速ロケット砲として、キンジャールを使い始めた、という報道がある。
考えてみれば、WW2での日本列島への米軍の攻撃は、ほとんどが空爆だった。もしも、速度の遅い飛行機をウクライナ上空に飛ばすのが、ジャベリンやスティンガーなどで危険ということなら、これらで打ち落とせない速度が早いロケットを打ちこめばいいといいうことで、空爆の「マイナーチェンジ」なわけだ。
そして、当時のアメリカによる日本列島への空爆にしても、都会は相当にやられた。民間人は、田舎に逃げたし、そうできなかった人も、防空壕に隠れた。
ウクライナ側は民間人の被害を理由にして、国際世論に訴える。しかし、そういう意味では、ロシアはかなり慎重に武力の行使を行っていると言えなくもない。少なくとも、無差別に民間人を殺している、という感じではない。むしろ、ウクライナの方が、民間人を「壁」として利用している、と言われてもしょうがない行為が目立つ。こういったことは、多かれ少なかれ、市街戦では避けられない、とも言える。ウクライナが提案すべきは、だったらどうしたらいいのか、だろう。人道回廊で避難させるのか。地下シェルターを使うのか。いずれにしろ、たとえロシア側がなるべく民間人への被害を避けようとしているとしても、ウクライナ側が戦闘員にたいして、民間人を盾として使うなら、被害は避けられない。少なくとも言えることは、ウクライナ側が戦争を長びかせることを選択している限り、民間人への被害は避けられない、ということだ。中途半端な道はない。あるとすれば、アメリカに全面的な「参戦」をさせることだが、それがウクライナはできていないということは、民間人の被害がなくせない。この事態に、黙って「なにもしない」ことを選び続けていることは、犯罪的なまでの自国の民間人被害への「罪」と向き合わなければならないことを意味する...。)
ウクライナは、この戦争が始まってから、(1)成人男性の国外避難の禁止、(2)ほぼ強制の徴兵、といったように、国民の「逃げる権利」を奪ってきた。もちろん、この戦争に「勝目」があるなら、国民も理解しなくはないだろう。しかし、今までのところ、世界中からの援助も限定的なわけで、そうなると「実験台」として、ウクライナの人の命が「使われている」と言ってもいい状態が続いているわけで、あまりこういった状態を正当化するのは難しい印象を受ける。
アメリカがバイデン政権になって、アフガン撤退を行ったことは、アメリカ国内の「嫌戦の雰囲気」がずっと高いことを意味する。実際、アメリカ国内はここのところずっと、「インフレ」がひどく、バイデン政権の人気が低かった。そもそも、戦争なんかしている場合じゃない、という部分がある。
そもそも、「核兵器保有国」の戦争というのが起きていることが、本質的な問題だ、と言うこともできる。今、世界は、核拡散防止条約などによって、核保有国を減らす努力をしている。その例外が、ロシアであり、アメリカだ。よって、こういった国が戦争を始めたとき、どういった形で、そういった国々を止められるのかの答えがないわけである。)
ということは、ウクライナ政府にとって最も重要な検討項目は

  • 停戦

のはずなのだ。ウクライナは世界中の「おもちゃ」じゃない。自国民の命がかかっているのだから、まずは、自国民も命を優先して、停戦交渉をしていいはずだ。これに、誰も文句を言う資格はない。

トルコが進展があったとする4項目は、ウクライナの中立化と北大西洋条約機構NATO)に加盟しないとの声明▽非武装化と相互の安全の保証▽「非ナチス化」▽ロシア語の使用制限の解除-。
「非ナチス化」はゼレンスキー政権の退陣や反露の民族主義排除を意味するとみられ、ロシア語の制限解除はウクライナ語だけを公用語とする現状の変更を意味している可能性もある。
一方、残る2項目は露が2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島と、東部のルガンスク、ドネツク2州の地位をめぐる問題だ。ゼレンスキー氏は19日、「領土の一体性を回復すべきだ」と改めて強調していた。
www.sankei.com

こうやって見ると、今回の戦争が始まる前にもめていたのが

なのだから、だったら、戦争が始まる前から合意できたんじゃないか、と思わなくはない。
そう考えると、あれだけロシアを罵倒して、ロシアやプーチンを「悪魔化」していた、日本国内の大学教授や有識者って、なんだったのか、と思わなくはないわけである。この停戦で、お前らの「正義」が、なにか役に立ったのか? ずっと、停戦が成立するのを「邪魔」をしていただけじゃないのか。お前らが「ウクライナは徹底抗戦をすべきだ」と言ったおかげで、どれだけの、ウクライナの民間人が被害を出されたか。

そうなれば、「制裁」を受けるのは、結局欧州や日本だ。米国は、自国の需要の大半を賄える、欧州や日本とは違った「巨大な資源国」である。他国のことを考えないバイデン政権の身勝手な行動には憤りさえ感じる。
gendai.ismedia.jp

今回のアメリカによるロシアへの経済制裁は、そもそも、アメリカにとっては、それほど被害を被らないのかもしれない。しかし、資源を海外に依存している日本やドイツにとっては死活問題だ。本気で、アメリカのやりたい放題にOKと言っていればいいのかは疑わしいわけである。
早い話、今の日本の知識人は英語しか読めない。アメリカの新聞や雑誌しか読めない。だから、必然的にそれが「正解」だと、偉そうに振る舞ってしまう。どんなにロシアの報道にプロパガンダが多くても、自分はその成否を判断できないから

  • すべてデマ

だと言っていれば、自分が読めないことを免罪できる、と思っているわけだ...。