ドンバス

今回のウクライナ戦争については、最初に日本の知識人の頭に血が登って、ロシアの「悪魔化」に必死となるSNSでの投稿が目立ったわけだが、少しずつだが、この興奮も収まってきたようだ。
その一つとして、プーチンの言う、ウクライナの「非ナチ化」がある。これに、知識人は「デマ」だなんだと、さんざんな罵倒を浴びせてきたわけだが、そもそも彼ら知識人は、この分野の有識者ではなかったわけだ。彼らが「詳し」かったのは、

  • ドンバス地方で何が起きていたか?

ではなくて、

  • 一般的

な、国際政治学の「常識」だった。国連憲章で、侵略はしてはならないのにロシアが侵略を行った。だから、ロシアは「悪魔」だ。そういう意味で、彼ら知識人は典型的な「ルール」主義者であり、そのルールに従って、今まで、一流大学に入学して、今の地位を手に入れてきた「優等生」なわけだ。
今回の件について、プーチンが言っているのは、早い話が

  • 堪忍袋の尾が切れた

ということなわけであろう。つまり、そうなったのには「理由がある」と、プーチンは言いたいわけだ。もちろん、それを示すために彼が語った演説が、それを必要十分に示せているのかは疑わしい。しかし、いずれにしろ、紛争を解決するには、そういった知識を得なければ始まらないわけだ。
そこで、今、完全にネットの有識者からシカトされている、IWJの岩上安身さんが、アンヌ-ロール・ボネル監督のドキュメンタリー映画「ドンバス 忘れられた戦争(DONBASS - Anne Laure Bonnel(2016))」を紹介している。

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二つ目の動画であるが、こちらは、字幕がフランス語なのだろうか。その抄訳を、一つ目の動画で、岩上さんが紹介している。
このウクライナ戦争が始まる前までのウクライナの状況は、言わば、

  • 奇妙な均衡

が成立していた、と言っていいんじゃないだろうか。ウクライナ政府は、ドンバスやクリミアを

  • 内戦

扱いして、徹底して、「弾圧」していた。独立を主張するこの地域を「敵」扱いして、一切の物資などを送らず、差別扱いをしていた。
しかし、そう聞くと、日本の知識人は、怒髪天を突いて怒り始める。じゃあ、なんでこの地域の人たちが飢えて死んでないんだ。なんで、今まで、国連でこの地域の「地獄」が話し合われていないんだ、と。
しかし、ね。
もしもその地域が「地獄」になったら、「その時」には、多くの人が苦しんでいるわけだよねw つまり、国連という組織はそこが「地獄」にならないと動き出さない。しかし、もしも地獄になったら、もっとそれ以前から、もう終わっているのだw
そういう意味では、国連は役に立たないw 国連、国連と言っている連中がいかに「御坊ちゃん」であるかが分かるだろう。
なぜ、その地域が地獄になっていなかったのかは、言うまでもない。その地域に

  • ロシアから援助がされていた

からだ。食料からなにから、その地域に届けていたのは、ロシアだった。
つまり、ある意味で、奇妙な「均衡」ができていたわけだ。ウクライナは、自分たちに敵対するドンバスやクリミアを、許さなかったし、そのために、徹底的な「抑圧」を行っていた。これが、問題になっていなかったのは、

  • 勝手にロシアが援助をしていた

からに過ぎない。これが「主権国家」の実態である。主権国家側は、本気でこの地域のロシア系住民を「飢えて殺させよう」と振る舞っていたが、そうならなかったのは、「隣の国」のロシアが

  • 勝手に

この地域を助けていたからに過ぎない(ウクライナ政府が年金支給を拒否していたのを、ロシア政府が肩代わりしていた、という話もある)。
なんか変じゃない?
もしも主権国家の「権利」を主張するんだったら、ウクライナ政府が、ドンバスやクリミアに行っていた「蛮行゙」を無視しちゃダメなんじゃない? なぜなら、主権国家は本気で、「国内の一部地域の住民を抹殺しようとしていた」のと変わらない行動をしていたのだから。
そして、上記のドキュメンタリー映画でも描かれているように、たとえ「結果」として、そこまでの被害が今までのところ起きていなかったとしても、アゾフ大隊などが、ドンバスに隠れ潜んで、連日、悪虐の限りを行っていた状態は、地獄以外の何者でもないんじゃないか?
もちろん、三つの視点がある。ウクライナ内のロシア系住民にしても、ロシア側のメディアのプロパガンダによって、認識を歪まされている可能性はある。つまり、当事者住民にしても、そこまでフェアに情報を認識していない可能性はある。また、今回のロシアの侵攻にしても、ウクライナ側は住民の死者を強調するけど、ロシア側がやろうと思えば可能だ、という意味で、住民を絨毯爆撃で抹殺するということまで、やっていない。他方で、一般市民に「武器を取れ」と言って、国際法的な意味での「武装兵」に一般市民を変えて、「壁」にしようとしているのが、ウクライナ側なわけで、なぜそういったウクライナ側を「いかがなものか」と非難する国際世論がでてこないのかも分からない。また、ドンバスにせよクリミアにしても、ここまでウクライナ政府に弾圧されてきたんだから、もっと早く多くの人がロシアに避難していたんだろうね。
そうやってゼレンスキーの日本の国会での演説の内容を思い出してみても、そんなにゼレンスキーは、自分たちが

  • 清廉潔白の罪のない被害者

といった態度ではなかったわけね。それなりに、自分たちにも罪がある、ということを受け入れた上で、国際社会には「それでも、自分たちの味方になってほしい」という主張だったわけでしょ。こっちにも、いろいろと蛮行はあったけれど、

  • 国際社会には、そういったいろいろを引き受けた上で、それでも、自分たちの「味方」になってほしい

という、かなり「確信犯」的な、共犯関係になることを要求する、目の座り方があったわけだ。
ところが、日本の雰囲気には、そういった「覚悟」が感じられない。どこまでも、

  • どっちが正義か?

の、優等生ゲームが続けられているわけで、ゼレンスキーだって十分に手が汚れている、ということを「引き受け」てまで、彼の味方をしてやる、という覚悟が感じられない。まあ、どこまでも「平和ボケ」だ、というのが世界からの日本の評価なのだろう...。