ウクライナ戦争におけるトルコの位置

ここのところ話題になっているウクライナ戦争の話題としては、以下が一番大きいだろう。

nordot.app

もしも今回のロシアの軍事侵攻に中国が関与しているなら、アメリカは「等分」の

  • 制裁

を中国に対して行わなければ、国内世論に対する説明がつかないだろう。
ただ、開戦以降の中国に対するロシアへの援助に対する中国の「こしのひけた」態度を見ていると、中国はかなりアメリカの制裁をびびっているように思えなくもない。つまり、両国ともここまでの経済制裁が起きると思っていなかったのか、早く戦争が終わると思っていたのか、いずれにしろ、想定通りにはいっていないことで、態度が変わってきている、とは言えるのだろう。

www.sankei.com

ウクライナがロシアとの停戦の条件である「中立化」に対してつけてきた条件が

  • 保証国

の構想だと発表されたわけだが、まあ、なかなか考えられた内容だったのが興味深いわけだ。
この内容を見ると、もしかしたら、ロシアは飲めるのかもしれない。しかし、EUやアメリカは自分たちが言っていた「内容」と矛盾しているため、簡単には飲めないのかもしれない、という印象だろうか。
おもしろいのが、保証国にトルコが入っていることだ。実際、ウクライナと頻繁に交渉をしていた国に、トルコがあるわけで、そう考えると、この構想の実質的な提案者はトルコなのかもしれない。
そうやって、世界地図を見ると、黒海をはさんで、ウクライナとトルコは対面している。また、黒海周辺ということでは、イスラエルもあるわけで、そのイスラエルも保証国に入っている。
なぜ、トルコが入っていることがおもしろいのかというと、言うまでもなく、トルコはEUの加盟国なのだから不思議じゃないと思うかもしれないが、問題はそこではなくて、トルコは

だ、というところにある。そして、この点について、今週の videonews.com でイスラム学者の中田考さんが説明をしてくれている。

www.videonews.com

上記の動画の内容は必ずしも、今回の戦争をメインに語られたものではないわけだが、大事なポイントは、西欧文明の

  • 内面

を他者が決めつける「文化」が、いかに、ウエストファリア条約以降の世界の秩序を破壊してきたか、を問題しているところで、その様相はまさに今回も再現されたと言うしかないであろう。
欧米の倫理学者、日本の倫理学者は、そろいもそろって、

  • ロシアは悪魔
  • プーチナは悪魔

の大合唱を行った。そして、旧フェイスブックが一時期、「ロシア人への暴力的発言を容認」との時期を合わせるように、徹底したロシアへの侮蔑的発言を繰り返した。そして、興味深いことに、彼らは、今のウクライナ国内の市民が次々と死んでいる惨状を前に、

というレトリックを使って、「現状維持」への強制を人々に「踏み絵」させた。
人が死んでいるのを、なんとか止めさせたいと考えている人たちに、「それは間違っている」と、偉そうにも説教を始めたわけだw
彼らがそう言った理由は、

  • ロシアは悪魔だから
  • 中国は悪魔だから

であって、それ以上でもそれ以下でもない。彼らはそういう意味では、ロシアと中国という国家がこの世からなくなって、

になるまで、この「悪魔退治」のために、戦争を止めないんだそうだw
彼らは不思議なレトリックを使った。「今は」停戦を議論する時期じゃない。じゃあ、いつなんでしょうね? 彼らが「今はまだダメ」と言った理由は、ようするに、その時期は、「なんらかの不可思議な力によって」いつか、もたらされる、という神秘主義だった、と言うしかないだろう。
そういった「神のみ心のお告げ」が来るまで、「なにもしないことが正しい」という発想は、なんらかの現状に対する、その尊厳と尊さにおける「畏れ」から、軽々しく停戦なんて言っちゃいけない、という態度だったわけで、まるで、WW2での帝国日本軍の再現を見るようだった。
カトリックプロテスタントが主流の欧米のキリスト教においては、「告白」制度によって、個々人は教会で

  • 自らの内面の告白の強制

がなされる。正直に言わないと、罰せられる。つまり、「だから」プーチンは悪魔だ、と西欧の倫理学者は言っているのだ!
これは、恐しいことである。プーチンは悪魔だから、滅ぼすしかない。その実現を目指すためなら、ウクライナの無実の人が何人死んでも関係ない。悪魔を滅ぼすのは、キリスト教徒の使命だから、と。
こういった世界の趨勢に、いち早く「反旗」をひるがえし、行動を起こしたのがトルコだった。こんな、馬鹿馬鹿しい、「西欧文明」につきあわされたら、いくら命があっても足りない。トルコは、黒海をはさんで、次にロシアの脅威を受けることになるわけで、そんなことを言っている場合じゃないわけだ。
ロシアにとって、昔から、南方侵略は国家的な願望としてある。それは、不凍港がロシア国内にほとんどないことに関係している。そう考えれば、今後この黒海をより下がって、ロシアが軍事的侵攻に触手を伸ばす可能性は十分に考えられる。
今回のウクライナの、保証国構想は言ってみれば、この黒海を中心とした、

  • 地域安全保障

を構想したものだ、と考えられなくもないわけである。そして、これが革新的なのは、この地域安全の構想が、

  • EUとは関係なく

別の構想として出現してきた、というところに革新性がある。つまり、「EUとは別の」軍事同盟がEUと隣あって出現しようとしている、ということが興味深いわけだ。
そして、なぜそれがトルコにはできたのか、というところを考えたとき、西欧キリスト教文明の「内面主義」「普遍主義」に対する

の、より古典的な旧約聖書的な秩序意識が、つまり「反内面」「反普遍」の

が、より、端的に「実践的」な平和構想を、いち早く提案できた、というところに今後の世界の先見性が見られる、と言えるのかもしれない...。

追記:
今さら言うまでもないことだが、イスラム教徒は世界人口の三割を占める。おそらく、今後の世界秩序形成に大きな役割をしめることになるし、むしろ、イスラム的な倫理こそ、国際的なスタンダードであることが再認識されていくだろう...。