日本の学校

ユーチューブでの日本語の動画では、「日本すごい」系の動画が一定の割合で存在している。
まあ、その内容は基本的に、みんな同じような内容になっている。

  • 治安がいい。... 財布を落とすと拾った人が走って返しに来る。はじめてのおつかい。小さい子どもが一人で通学している。
  • 優しい。親切。
  • 街がきれい。

まあ、こんな感じだろうか。普通に見ると、比較的に、生活水準が高いので、「貧すれば鈍する」になっていない、ってだけのようにも見えるわけだが。
ただ、最後の「街がきれい」というのは、少し思い当たることがないわけじゃない。それが、

  • 学校での掃除

だ。
そう言っても、なんのことを言っているんだと思うかもしれない。というのは、私たち日本人にとって、そもそも日本の学校しか知らないのだから、「自明」のことを、なにか驚くことであるかのように言われることの意味が分からないからだ。

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こちらの動画では、日本に来て生活をしているお嬢さんの、フランスに在住のご両親が日本の学校について紹介している動画を見てコメントをしている。そこで特に強調しているのが、

  • フランスでは、子どもは掃除をしない

ということだ。フランスでは、掃除は「業者」が行う。それだけじゃない。そもそもフランスでは、「自分のクラス」という概念がない。各カリキュラムに応じで、受けるクラスが変わるので、「毎日使う机と椅子」といったものがないのだ。
しかし、上記でも言っているように、そもそも、昔はそうじゃなかったのだ! フランスでも、昔は子どもは学校で掃除をしていた。少なくとも、幾つかの学校ではやっていた。それを、上記の動画のお母さんの方は、自らの体験として思い出して語っていられる。だとするなら、なぜその慣習はなくなってしまったのか、と問う必要がある。
どんな田舎に行っても驚くことに、どんな田舎の道を歩いても、「きれい」なのだ。つまり、掃除がされている。ということは、その道を、その道の前の家の人が掃除をしている、ということを意味する。そうでもしていなければ、そんなふうにはなっていない。しかしそれは自明なのだろうか?
近年の話として、思い出されるのはW杯で、日本チームが控室を掃除して帰ったという話や、日本の応援団が観客席を掃除して帰ったという話に対して、

  • そこを掃除する業者の人の仕事を奪っている

というような批判が出されたことがあった。しかし、これはそもそも日本ではありえない主張だと言える。

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こちらの動画では、アメリカの学校で、子どもたちの食事が、本当に栄養を考えられた、衛生的なものになっているのかを、当事者の学校関係者が、日本での給食がどのように作られているのかを知ることで反省する内容になっている。
言うまでもなく、アメリカの子どもたちは、ジャンクフードという言葉があるように、アメリカン・スタイルの軽食を食べている。それは、簡易的なもので、冷凍食品を温めて、そのまま食べるような、簡単なものだ。
それに対して、日本での給食の作成過程は非常に時間も労力もかけられた、大変な作業として行われている。なぜそうなのかというと、当り前だが、それが子どもたちの食事だからだ。子どもが成長するとき、その栄養内容、衛生的な扱いは重要だ。大きくなる段階でどういったものを接種するのかで、その後が決まってくる。
しかし、最初、アメリカの関係者たちはなぜここまでやるのかが理解できなかった。しかし、少しずつ、その意図を理解するに従って、自分たちは間違っていたんじゃないのかと思わされることになる。
結局、上記の二つとも同じなのだ。コミュニティが、そのコミュニティの中の子どもたちを育てる。コミュニティへのコミットメントが問われているのであって、一人一人のそのコミュニティへのコミットメントが、そのコミュニティを「いい」ものにしているのであって、つまりはそう振る舞うことが当り前となっていない社会は、なにかを決定的に失っているのかもしれないのだ...。

追記:
上記と関連する話として、日本のテレビ番組「はじめてのおつかい」がネトフリで編集されて、全世界で配信されたら、大きな反響を呼んでいるという。その反応は二つに分かれていて、

  • (こんな小さな子どもを買い物に行かせるなんて)やりすぎ

というものと、

  • それが可能なくらいに治安がいい

に分かれる。しかし、この二つはある意味で同じことを言っている。前者については、当然日本でも、いろいろな意見はある。そもそも、これはお笑い番組であって、ドキュメンタリーじゃない。日本の番組は、コメンテーターが好き勝手なことを言い合う形式になっている。しかし、少なくとも、親がどこかのタイミングで、「はじめてのおつかい」を子どもに行わせるという意味では、そこまで非現実的ではない。
だから、後者にしても、親が自分たちが生活しているコミュニティが、それくらいには治安がいいと思えなければ、そもそもこんな番組自体が成立しないわけだ(非現実的だと考えられて、誰も見ない)。
ここに、そのコミュニティにコミットメントしようという住民の態度が一般的に成立していなければ、こんな話自体が成り立たない。そしてそのことと、子どもが学校で、クラスの掃除を毎日やることは、どこか地続きの話なのだ...。