インボイス「恫喝」で納税事業者になってしまったフリーランスへ

さて。10月より、インボイス制度が開始されるわけだが、これに対して、多くのフリーランスは取引先の企業(納税事業者)からの

  • 圧力

によって、納税事業者に変更通知をやってしまった人がいるかもしれない。しかし、一つだけ分かっていることは、そもそも、取引先がそこまで複雑でなく、自分の市場価値、つまり、「自分が売れる労働力だ」というのが、(それなりの今までの実績から)あると思っている人は、どう考えても今は、免税事業者のままでいた方が「得だ」ということなのだ。
なぜか?
今回のインボイス制度は、そもそも納税業者、つまり、一千万円以上の収入がある企業にとっては他の選択肢がないのだから、粛々とインボイス対応を行うしかない。問題は、一千万円以下の免税事業者だが、変わったのは

  • 免税事業者との取引がある納税事業者の増税

だ、ということだ。この会社は免税事業者からはインボイスがもらえないから、その分の仕入税額控除ができない。普通の納税事業者と取引するより、免税事業者と取引すると、同じ値段でも「損だ」ということになる。
ただし、激変緩和措置ということで、まず、10月から3年は移行期間として、上記の免税事業者と取引分の仕入税額控除ができない金額の8割は特別に「控除」される、とした。
これは、ちょうど対応していて、免税事業者が納税事業者に変わった場合の新たに収めなければならなくなった消費税分についても8割は特別に「控除」されるとなっているので、金額はまったく同じだ。
金額が同じなら変わったっていいと思うかもしれない。しかし、

  • そもそもこの分のお金は、納税事業者への「増税」なのだから、なぜ免税事業者が負担しなければならないのかは自明ではない。そもそも、今回の変更で公正取引委員会は、仕入税額控除分を免税事業者に請求したら「独占禁止法違反の可能性がある」と名言している。つまり、たとえ請求ができたとしても、3年間は2割だと言っているわけである。もちろん、交渉次第では値段は下げられるだろう。長年、そこと取引してきて、自分のその取引先にとっての重要さがあれば、「今まで通り」で相手先がその分の損失をまるまるかぶるというケースも多いだろう。しかし、納税事業者になったら、そもそもその可能性すらなくなるわけだ。

結局、今回の変更は「政府が免税事業者を納税事業者に変えたい」という、「政府が国民にマイナンバーカードの申請をさせたい」というのとまったく同じ構造になっている。どちらも、任意の選択となっていながら、さまざまな「不利益」を餌にして、そちらへの移行をなんとかしてさせようとしている。しかし、「直接的な不利益」を制度化すると、それを理由に政府が損害賠償を訴えられると嫌だから、制度上は、いったん「公平」にしなければならなかった。つまり、政府による国民コントロール

  • テクニック

なわけである。
結局今、免税事業者から納税事業者に変更してしまった人というのは、(業界によって明らかにそっちじゃないと仕事が回らなくなるといったような、複雑な取引先をもっている人の場合を除けば)そういった政府の圧力に負けてしまった人なんだと思う。つまり、消費税は

  • 預り金

なんだ

  • 間接税

なんだ、という政府広報(そもそも、小学生の教科書にすら書いてある「デマ」)によって、自分が払っていないことに負い目を感じてしまったのだろう。しかし、それは「嘘」なわけである。消費税は預り金ではない。法人税などと同じ直接税。だとすると、直接税の場合には、さまざまな税で、

  • 少額の事業者の場合は無税

となっていることは周知の事実なわけ。それは、赤字の企業などはそもそも払う税金がないのだから、払えないから払わなくていいとするのは、温情のある政治運営としては当然なのだ(そうじゃなきゃ、なんとかして製品開発をして、これからビジネスを始めたいと思っている、始めたばかりの暗中模索の人たちは一生、その一歩もふみだせない、ということになってしまう)。つまり、あなたは「道徳的にやましいことをやっていない」わけ。つまり、それを理由に免税事業者が「ずるをしている」とネットで、人格攻撃をしている、デービッド・アトキンソン名誉毀損で訴えれば、賠償金をせしめられる、ってわけw
ながながと書いてきたが、ここで注意が必要なのが、間違って納税事業者になってしまったフリーランスでも、今月の9月までは「取り下げ」ができるってこと。速達で送れば、それだけでいい。しかし、10月以降は「取り消し」の申請が必要となり、すこし難しくなる。時間もかかる。まあ、とりあえず、そういう人は「取り下げ」をやっておいた方がいいよ、って話...。