松本人志事件とスポンサー企業の「マインド」

週刊文春によって二回に渡って行われた、松本人志事件の報道で今、公式にアナウンスされているのは、松本の活動休止である。
これに対して、ネット上では多くの反応がうかがえる。一義的な反応は、松本が出演していた番組の視聴者がそれを

  • 残念

と思うことから、そこから敷衍した、この事件の「評論」だ。つまり、なんとか今まで通り、松本が番組の出演を続けてほしい、休止をしないでほしい。逆に言えば、もしも松本に休止の「圧力」をかけている勢力があるのだとしたら、その主張は「不当」なんじゃないか、といった非難だ。
いつも、そういった吉本芸人が出演するテレビ番組を娯楽として見ていた視聴者にとっては、ある時から、それが難しくなるかもしれないというふうな雰囲気となっていることは「不安」であり、今まで通りの

  • 日常

が続いてほしいと思うことには理由があるだろう。もっと言えば、子供の頃から、松本が出演する番組を欠かさず見てきた「ファン」の人にとっては、この事件がまるで、自分の今までの人生が否定されたように思って、苦しく思っている人もいるかもしれない。
しかし、むしろ、そういった人に対してこそ、ちょっと待ってほしいわけである。
今、起きていることがなんなのか? それは、「どっちが正しいことを言っているか」「証拠はあるのか」「裁判はどっちが勝つのか」といったことの前に、冷静に今の状況を理解する必要がある、ということです。
ここでは、まだ、子どもで大人の社会がどういうものかを知らない人にも向けて、一つ、書いてみようと思います。
今起きていることは、

  • テレビ番組のスポンサー企業が、スポンサーを外れようとしている(CM提供を止めようとしている)

ということです。このことによって、

  • 松本人志が、自分がレギュラーだった番組への出演ができなくなった

です。スポンサー企業は松本が番組に出演するなら、スポンサーを降りる、CM提供をやらない、と言って、実際に、松本が出演した番組はCMがなくなってしまいました。
松本側が困っているのは、ここなんです。
それを聞くと、変だと思う方がいるかもしれませんね。週刊文春は、何度も裁判で負けたこともある週刊誌で、今回の記事だって、どこまでが真実なのかは分からない。それなのに、って。これじゃあ、週刊誌の「書き得」で、気に入らない芸人の芸人人生を潰す「復讐」を目的に、罠にはめることが可能になってしまうじゃないか、と。芸人の芸人人生を守るためには、不当な告発から芸人を守る「ルール」が必要なんじゃないか、と(たとえば、週刊誌の記事の「事実性」の証明を週刊誌側に課すなど)。
しかし、これに対しては、憲法で認められた「言論の自由」がたちふさがります。
つまり、状況を丁寧に見る必要があります。まず、松本自身はこれからも、憲法に認められた「表現の自由」を行使して、例えば、ユーチューブ上で自分の「芸術作品」を公開していく活動を続けることはできます。
今問題になっているのは、あくまでも、「民放テレビの番組出演」を「スポンサー」が嫌がっている、というだけなのです。
では、民放テレビ局がスポンサーを「説得」する、という方向は考えられるでしょうか? もちろんやってみてもいいでしょううが、問題は

  • なぜスポンサー企業は「嫌がっている」のか?

の理由にあります。この理由が合理的である限り、民放テレビ側の説得は成功しません。
ここで、冷静に考えてみてほしいわけです。なぜスポンサー企業は「嫌がっている」のか?
つまり、みんな「誤解」しているんですよ。
これ。スポンサー企業側から見ると、この事件は、単純な

  • 企業不祥事

問題に見えているわけです。つまり、一種の「企業犯罪」です。じゃあ、企業犯罪を恒常的に行っている組織ってなんでしょう? そう。「反社会的組織」です。つまり、ヤクザ、暴力団です。つまり、そういった「反社会的組織」のスポンサーをやるということは、反社会的組織の反社会的行動に「加担」していると、世間から受け取られることを意味します。
いや。松本さんはまだ、有罪が確定していない。刑法の原則の「疑わしきは罰せず」じゃないのか、と思うかもしれません。違うんです。今怒られているのは、吉本興業なんです。今名前が挙がっているなかで、吉本の所属は、松本、たむらけんじ(今は吉本を退社)、パンクブーブーですよね。吉本は公式で、「事実無根」を発表しましたが、すでに三人の名前が挙がっているのに、それぞれから事情を聞いているかどうかを公表していませんよね。彼らは少なくとも、自社の社員です。よって、彼らが

  • 業務内

で行った行動については、吉本という会社の責任が問われます。さらに問題は大きくて、すでに三人の社員が名指しされているということは、「同様」のことを行った社員が別にいる可能性も社会から疑われます。つまり、吉本が今すぐにやらなければいけないのは、

  • 三者委員会を組織して、全社員の調査を行う

ことです。これをやった上で始めて、「事実無根」かどうかを発言できます。なのにそれをやっていないのにこういった発表をしているのですから、スポンサーが降りるのは「当り前」です。
あのね。
企業って、おもしろいアイデアを発見して、お金儲けをして、社員にいっぱい給料を払うっていうことをしているだけじゃないんですよ。どこの企業の歴史を見てもらっても分かるように、

  • 企業不祥事

の歴史なんです。近年、一番目立つのが「個人情報の流出」ですけど、これって多くの場合は、システムのどこかに穴があったから起きているわけで、本当に責任を問えるような、「直接の責任者」なんていない場合が多いんですね。しかし、そうだとしても、それで迷惑をこうむるのはお客さんですよね。そして、お客さんはこの企業から商品を買うのを止めてしまいます。つまり、倒産です。
つまり、「言い訳」が通用しないんですよ。
じゃあ、そういった不祥事が過去に起きた企業はその後どうしたかって見ていくと、ものすごい努力をやって、何重にも、同様の問題が起きないように「ガード」を作って、しかもその努力をパブリックに公表して、活動しているわけ。それによって、現場は本当に、一日の半分は関係ないことをやることに奔走させられて、やっているなんていっくらでもあるわけです。
まず、おざわにしても、たむらにしても、パンクブーブーにしても、松本の仕事の「現場」の関係者ですよね。そして、被害を訴えている女性は、この芸能界の関係者だったと何人かは言っている。そうだとすると、松本が今の芸能界で、ほとんど「独占」といってもいいくらいの発言力があるわけだから、彼の「要求」を拒むことが、今後、芸能界で活動できなくなるかもしれない(仕事ができなくなるかもしれない)と考える可能性が大きくなることは、誰だって想像できるでしょう。
これは「セクハラ」であると同時に、深刻な

の可能性が疑われているわけです。
そして、同様のことは、どこの企業でも起きる可能性があります。
ある企業Aが、企業Bと取引をするとなったとします。企業Aは、企業Bから仕事がもらえることになりました。そこで、企業Bの偉い人が企業Aを訪れました。いろいろ会議を行った後で、企業Bの、その偉い人は

  • お宅の企業の受付で見た社員の女性は「かわいい」ですね。この後の銀座の飲み会で隣でお酒をついでもらえませんか?(その後、二人きりでホテルに行けるように、説得してもらえませんか?)

と言ったとしましょう。この企業Bからの「依頼」に、企業Aは応えられるでしょうか? 当り前ですが、できません。できませんが、やらなかったら、企業Bとの今回の取引は取り止めとなるかもしれません。
分かります?
あなたは今、「こういう場合はどうしたらいいんだろう?」と考えたと思います。しかし、あなたが今、考えたということは、

  • 日本中の企業は、「どこでも」、毎日、このことを考えている

わけですw こうやって比較すると、今回の「松本事件」とまったく同じでしょ? どこの企業だって毎日悩んでる、完璧な

  • テンプレ

の行為を週刊誌に書かれて、今だに一般の企業なら当然行う「コンプラ行動」を行えていない吉本に、どこのスポンサーが味方をするのか、というわけです。
つまり、話は「逆(ぎゃく)」なの。
つまり、こういった「パワハラ」「セクハラ」を疑われたくなかったら、各社員はどう行動したらいいのか、なんです。
まず、絶対に個人で、休日に行動をしなければいけません。複数で行動する場合も、社員や仕事現場の人と行動してはいけません。そうすると、自社の「組織」としての責任が問われる可能性が疑われます。次に相手にアプローチする場合も、自分が自社の社員として恥かしくない行動を心がけなければなりません。当然、最初は喫茶店でのデートに誘う、とか、そういったところから始めなければいけないでしょう。
つまり、相手の女性と恋愛ができない、というわけじゃないんです。そうだけど、それならばそれで、相当に「注意」をするんです。いろいろと、会社に迷惑をかけるかもしれない可能性があることは「避けて」やる、というのが

  • マナー

となるわけです。まあ、今回の件はそもそも、松本は結婚していますからね。そういう状況で、社会的に、どこまで擁護可能なのかは私は分かりませんけど...。