うーん。松本人志の裁判についての話題も、随分と下火になりましたね。つまり、少しずつではあるが、松本側が何を主張（＝要求）しているのかが分かってきたので、世間の側も冷静になってきた（早い話が、「どん引き」している）、ということになるだろう。
まず、松本はＡ子さんＢ子さんの「個人情報」をよこせ、と週刊文春側に要求しているｗ 個人の「同定」ができないと、正確な主張ができないから、と。よって、それを拒否している週刊文春側は「頭がおかしい」と。
しかし、ね。
この主張が私たちをいろめきたたせているのは、つい最近に、刑事訴訟法の方では、法改正が行われて、「性被害の場合は、訴える側の個人情報を秘匿したまま裁判を行える」ように変わっていることだ。
なぜこのような法改正が行われたのかについては、当り前だが、性被害者の側が裁判に訴えることを容易にするために行われている。被害を受けながら、自らの個人情報が世間に広がることで、二次被害が拡大することを恐れて、泣き寝入りする人を少なくしようという意図だ。
もちろん今回の裁判は刑事ではない。民事だ。よって、この法律は直接は関係ないかもしれない。しかし、だとするなら逆に、これは民事なのだから、この松本側の訴えをどう扱うかは、
- 裁判官
の匙加減で決まる、ということになる。だとすると、なおさら、松本側の訴えは、そもそもの裁判官の判断で「門前払い」されている可能性が高くなるだろう。そういった文春側の拒否の姿勢に「頭がおかしい」と罵倒している松本側の態度は、かなりエキセントリックな態度に見えてくる。
そもそも松本は自分は今まで一度も誰に対しても性加害を行っていないと主張している。だとするなら、なぜＡ子さん、Ｂ子さんの個人情報がわからないと困ると言っているのかは、矛盾しているように思われる。
ところでこの件は伊東選手の裁判との
比較が参考になる。伊東側は裁判所に訴える前に被告人の女性の個人情報を教えてくれと、相手の弁護士にお願いして、教えてもらった情報を元に訴状を書いている。ではなぜ松本は訴える前にそれをやらなかったのか。つまり今さら、こんなことで騒いでいるのは、他に意図でもあるのかと疑われてもしょうがないくらいに不可解な行動なのだ。
しかし、もっと「常識的」なレベルで、この話はおかしいのだ。
松本が記事に書かれた事件でのアテンド芸人は、スピードワゴンの小沢だ。しかし、松本側はその小沢と「連絡がとれない」と主張している。ところが、スピードワゴンの相方の井戸田は、小沢と頻繁に連絡をとりあっていると発言している。そもそも、小沢は大手事務所に所属している芸人なのであって、会社を通して連絡がとれないわけがない。
いや、もっとそれ以前の話として、松本はツイッターで「とうとううでたね」と発言している。この発言と、「相手が誰か分からない」は相当無理がある主張と思えるくらいに矛盾しているように思われる。
いや。さらに意味不明な状況なのは、ツイッターである暴露系の人が、すでに、Ａ子とＢ子の個人情報を書き込んでいる。つまり、すでに松本は「知っている」わけだｗ
そして、さらに「カオス」な事態が今、起きている。フライデーは文春とは別に、松本のアテンド飲み会を記事にしたのだが、そこでのアテンド芸人として記事に書かれた、渡辺センスという吉本の若手芸人が、フライデーを裁判で訴えたわけだが、その弁護士が完全に
- 松本の弁護士と一緒
だったわけだｗ この時点で、渡辺とかいう無名の芸人を、まともに扱う人はいないだろう。なぜなら、弁護士が同じということは、
- 弁護士が松本と渡辺の利益相反が起きたときは、松本を「優先」する
ということを意味しているからだｗ なぜなら、松本の今回の訴えは、５億６千万円で半端な６千万円が、請求金額に対する弁護士報酬の相場であり、対する渡辺の訴えは１千万円くらいと言われている。相場から考えても、弁護士が渡辺からもらう金額は、松本に比べて、雀の涙だろう。というか、普通に考えて、この状況で松本が渡辺の裁判費用を肩代わりしていないと考える人はいないだろう。
しかし、それ以上にもっと興味深い事態が判明してきている、ということが、今回のことから言えなくもないのだ。それは、
- 松本はとにかく「犯罪者」のレッテルをはられることだけを嫌がっている
のかもしれない、ということだ。なぜなら、渡辺の要求していることは、フライデーに書かれた自らの幾つかの所作や言動に対する「訂正」であるわけで、そのことは、
- 間接的
に、松本が行った「飲み会のセッティング」、その後の「ホテルでの行為」に対して、状況証拠的に、それらの事実を認めた上での主張になっているからだ。
つまり、松本は「あせっている」。彼は、さまざまな手段によって、とにかく、週刊文春の記事から、自分が「（時効によって免れただけの、事実的）犯罪者」であることさえ免れて、自分が刑法上の犯罪者として世間から扱われさえしなければ、なんにせよ、未来での自分の公的な活動への可能性が残るわけだから、どんな
- 飲み会での蛮行
- その後の性的「ハレンチ」行為
を間接的に認めることになったとしても、「世間的犯罪者認定」さえまぬがれれば、後はなんとでもなる、と考えている、ということだ...。
追記（2024/05/12）：
ところで、今回の松本情報の件で元テレ朝のアナウンサーで今は弁護士の西脇という人が分析している。
まず、今回のニュースはフジテレビが「独占」とめいうって、ニュースにしたわけだが、そこで、松本側の準備書面が画面に映っている。しかし、これは「公開」されているとしても、裁判所で閲覧する場合は、カメラで写したりコピーをとるという行為が禁止されていて、ただ、その場で見ることしかできない。
つまり、どうもフジテレビに松本サイドが「リーク」をして、自分たちに都合のいいように、ニュースを書かせた疑いがある、というのだ。そして、その経緯で、フジテレビは松本サイドから、これをもらったのだろう、と。
しかし、そうだとするとなかなか微妙な問題がでてくる。フジテレビは報道機関であって、一定の公平性が求められる。一方の要求に従って、プロパガンダをたれ流しているとすると、報道機関としての公平性が疑われる。というか、そもそもフジテレビは吉本の株を所持している、資本関係があるのだから、最初から公平性が疑わしいわけだ。
次に西脇さんはそこに書いてある内容のある点に注目する。
身元も明かせないような人物の供述のみに基づいて、松本さんを社会的に摩擦するような記事を掲載すること自体が許されない行為であったというほかない。
しかし、この主張は当然であるがジャーナリストとして日本で仕事をしてきた人たちは絶対に認められない。なぜなら、ジャーナリズムにおいて、匿名の通報や内部告発は絶対的に認められている。その上で、取材源の秘匿は報道機関の必須の要件となっている。
ようするに、松本はなにかと「戦って」いるわけだが、それは、ある意味で今の日本社会の根底において、基盤となっているような
- 社会常識
を「悪」だとして、徹底的に破壊を目指している、ということになるだろう。松本がやろうとしいていることは「社会運動」だ。この社会から「匿名」性を絶対的に許さない。あらゆる社会の隅々から、匿名性を排除する。そうすれば、自分のような「権力者」に逆らえる人はいなくなる。松本はこの手段によって
- 自分が生きやすい
社会に日本を変えたい、と考えている。しかし、である。これに日本社会は同意するだろうか？ 匿名性、プライバシーの保護は報道機関だけじゃない。あらゆる社会の隅々にまで、人権の保障と同様の権利として保障されている。これを「悪」だと名指して、その「悪」の撲滅を図る松本の「社会運動」は、日本国民の多くの賛同を得て、成功裏に終わるのだろうか？ 今、ネットで暗躍している、松本擁護派であっても、どこまでこの松本の主張に同意するかは興味深いだろう...。
追記（2024/05/13）∶
渡辺センスの方の裁判だが、こちらの問題は、なぜフライデーの方だけを訴えたのかだろう。もしも渡辺の主張が認められて、名誉毀損となったとしても、それはどこまでフライデーが原因だと言えるのかがよくわからないからだ。明らかに、今の渡辺の芸能活動を行う上での苦境は文春の報道から始まっている。であるなら、その原因をフライデーに全部押し付けるのは合理性がない。こういった矛盾は松本にも見られる不自然さであり、そもそも別の意図で行動しているんじゃないかといった疑いをもたせる...。
