ゼーガペインSTA

公開初日に、このゼーガペインの最新作であり、テレビ版、その後の映画版の続編となる、かなり年数を開けての、今回の劇場版となったわけだが、内容については、とても納得感のある、いい作品だった。まさに、こういう作品が見たかった、と言ってもいい。
ただ、今日は台風だった。それもあって、そこまで観客が多くなかった。いや、そもそもテレビ版のゼーガペインをリアルタイムで見ていた人は限られるだろう。かくいう私も、後からネット配信で見ている。その感想については、以前にここで書いているはずだ。
テレビアニメを見たが、ゼーガペインのストーリーを忘れたという人も、映画の最初はダイジェストのように思い出させてくれるくだりがあるので、そこまでは心配はいらない。
そもそも私はこのゼーガペインというアニメを、どのように総括したのだっただろう? この、人類が滅亡した世界で、AIたちが無限ループの世界を生きているこの物語に対して私が思っていたのは

  • ミサキ・シズノ

についてだったはずなのだ。私はこのアニメをラブストーリーだと思っていた。しかし、もしもそうだとすると、このアニメは「ダブル・ヒロイン」ということになる。主人公のソゴル・キョウには、カミナギ・リョーコという幼なじみがいる。そう考えるなら、そこにシズノが入っていける場所はない。しかも、ストーリーの後半では、シズノはたしか「不完全な存在」ということで、最後に人間になるキョウが、人間になった後に取り組む、他の人たちを人間に変えるライフワークに、シズノは加えられない、ということが示唆される。そのことが、彼女の、長く生きようとすることをあきらめた、刹那的な態度に関係して描かれるわけだ。
そう。この作品をラブストーリーだと考えるなら、シズノは捨てられて、忘れられた存在として描かれているように解釈される。
こんなんでいいのか?
そう思ったのが、当時の私の印象だったんじゃないか。
昔のアニメに、夢戦士ウイングマンというのがある。ギャグ漫画ではある。たしか週刊少年ジャンプで連載された漫画が原作だったと思うが、第一話で、中学生の主人公の広野健太の前に、ビキニ姿の美少女が空から落ちてくる。その異次元世界からやってきたアオイと二人三脚で、異世界からの怪物に、ウイングマンに変身して闘うというストーリーだが、そのアオイの特徴は、中学生にとっては刺激が強すぎるような、抜群のプロポーションで、大人の女性として描かれながら、髪はボーイッシュなショートカットで、かつ、水色だったこともあり(青は負けヒロインの色なわけで)、彼女をヒロインと呼ぶのには違和感があるような、微妙な描かれ方だったわけだ。そもそも健太には、幼なじみの美紅ちゃんがいる。この奇妙なダブルヒロインは最後に、アオイが異次元世界に戻るときに、健太の記憶から自分のすべての記憶を消し去って、去っていく。そしてその時、自分も健太のことが好きだった、という言葉を残して。この衝撃的なラストは、よく分からないけど、アニメオリジナルだったのだろう。
この最終回が衝撃的なのは、そもそも記憶を消す、ということそのものにあった。つまり、視聴者はどこかで、健太とアオイは結ばれるのだろう、と思っていたところもあった。いや、たとえそうじゃなかったとしても、ずっと相手のことを思って生きていくものなんじゃないか、と考えたわけだ。なぜなら、それが人間なんじゃないか。どんな記憶でも、忘れた方が幸せなんていうものはないんじゃないか。いや、それだけ健太にとってアオイは重要な存在だったんじゃないか。
こうやって考えてみると、ゼーガペインはどこか、ウイングマンに似ているのかもしれない。
こうやって、何十年ぶりかに作成された続編は、ある意味でこのパラドックスを解消するものであった。テレビ版でも描かれたキョウは、そもそもカミナギの前での高校生の彼に対して、シズノの前のキョウは、精神年齢の違う「大人」として描かれていた。つまり、人間になったキョウがカミナギ側だとするなら、量子空間に残滓として残っていたキョウは、シズノ側ということになる。
ゼーガペインというロボットは、二人が搭乗して操るわけだが、二体のゼーガペイン

  • 一体目 ... 前方:人間のキョウ、後方:カミナギ
  • 二体目 ... 前方:残滓として残っていたキョウ、後方:シズノ

の二体で、協力して敵と闘う展開は、劇場版らしく、もりあがった。そしてラストで、冬のループ側で、残滓のキョウとシズノが二人でそこで一緒に暮らしていくのだろう姿を描けたことは、十年来のシズノファンの、シズノに幸せになってほしいという気持ちに、制作陣がやっと答えてくれたんだな、と喜んだわけだ。
そしてそれと同時に、ウイングマンも、こういった形で、アオイと健太が結ばれるような、そういったラブストーリーとなる可能性はなかったのか、なんて考えてしまうわけだ...。