蓮見重彦との対談。バブルの頃の、でしょうか。
たとえばスケープゴート理論とか第三項排除ということで共同体のメカニズムが説明されますね。この理論は、人間が共同体としてあるかぎり古来やってきたし、いまも見えないけれども同じことをやっているのだと指摘する理論ですね。しかし、それは、共同体がそのようにあることを支持していることになるんですよ。本来それを否定すべきものとして言っているにもかかわらず、この理論は、これは人間の本性として不可避的であると、故に正しいという理論になれるんですよ。
現代の社会科学の隘路ですね。今の、そういった、システム的な理論が、ことごとく、牽強付会の、テメーカッテなリクツになってしまう。
いまの左翼の運動は、モレキュラーな運動とかミニポリティクスとかいうことで、フェミニズムもやれ、エコロジーもやれ、ただ全体性は志向しないということになっています。ポスト・マルクス主義ですね。ポスト・モダン的なマルクス主義。でもその程度だったらば、国家のほうもわかるんじゃないですか。あっさり、それを受け入れるんじゃないですか、そういう種類の運動は。ほとんど予想できることだから。
社会主義の国家があったからこそ、資本主義勢力の国家は、いやでも、福祉政策をとらざるをえなかった。それを、資本主義の勝利だとか、歴史の終りだとか言っているやつは、バカだ。しかし、そうはいっても、国家(官僚)は、一筋縄でいける連中じゃあない。一見、国民のニーズに答えるような、素振りを示しながら、国民を生かさず殺さずの政策をしてくる。
やっぱり、フランス革命の徹底した分析なのか。
闘争のエチカ (河出文庫―BUNGEI Collection)
- 作者: 蓮實重彦,柄谷行人
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