この本は、めずらしく、かなり常識的なことについて、言及している。
フロイトが子育てに関してただ一つ積極的に言ったのは、宗教的教育への反対ということです。子供の時からの宗教的教育はやめるべきである、と。先ず宗教を教えて、それから科学的知識を教えるというのではなくて、はじめから物事を科学的に教えろ、と彼はいう。宗教的教育は人間の知的なものへの方向を閉ざしてしまうというのです。
この本こそ、あまり柄谷さんに興味のない人でも、読まれている割合が多いんじゃないかな。あと、文庫版のあとがきで、以下のようなことを言っている。
フロイトは、人が幼児的神経症の段階としての宗教をいつか克服できるだろうかという問題について、次のようにいったのです。
知性が欲動生活に比べて無力だということをいくら強調しようと、またそれがいかに正しいことであろうと----この知性の声は、聞き入れられるまではつぶやきを止めないのであり、しかも、何度か黙殺されたあと、結局は聞き入れられるのである。これは、われわれが人類の将来について楽観的でありうる数少ない理由の一つであるが、このこと自体も少なからぬ意味をもっている。なぜなら、これを手がかりに、われわれはそのほかにもいろいろの希望を持ちうるのだから。なるほど、知性の優位は遠い未来にしか実現しないであろうが、しかしそれも、無限の未来のことというわけではないらしい。(フロイト『ある幻想の未来』1927年)
- 作者: 柄谷行人
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 単行本
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